2015年03月10日
パラオ慰霊の旅と零戦
その零戦には、こんな思い出がありました。
「鳥のように飛びたい」と、空ばかり眺めている頃、
第二次世界大戦について書かれた本に出会い、命の尊さを初めて知りました。
そして偶然、父が昔、持っていたレコードに入っていた1曲に巡り会ったのです。
武田鉄也さんが作詞した「パラオ ゼロファイター」という曲です。
幼いわたしの想像していた零戦が、そのまま歌になったようでした。
パラオの零戦が、その曲のモデルとなった零戦です。
それから十数年後、珊瑚に眠る、その零戦に語りかけることができました。
「君に会いにきた…」
零戦が眠るその場所には、急激な浅瀬という目印のために(零戦があるという目印でもあります)ポールが立てられ、ウキが浮かんでいました。
搭乗員は無事だったのでしょうか?
その人との思い出と一緒に、零戦は珊瑚礁に横たわり、錆び、朽ち、その翼も尾翼もありませんでしたが、何故かとても穏やかな印象を受けました。
その穏やかさが、優しくもあり、強くもあり、やがて海へ還っていく姿に涙が溢れてきました…
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つかの間の出会い、舟は容赦なく零戦とわたしとの距離を開けていきました。
船尾から、去りゆく零戦を、水平線になるまで眺めていた時です。
突然、つがいの鳥が飛んできました。
忘れられない光景です。
つがいの鳥は、飛んだり、とまったり、繰り返していました。
望遠レンズでも、点のように写っている鳥たちをさらに拡大してみました。
鳥たちにとっては、零戦は、もう自然の一部なのでしょう。
写真では、一羽がポールにとまっていますが、潮が引き、零戦が姿を現わすと、鳥たちは零戦の傍らで翼を休め、愛を語りあうことでしょう。
その零戦は、「全てを与え尽くす尊い木」と化していました。
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「零戦の幸せ」って、いったい何でしょう?
それぞれの考え方があると思います。
「戦ってこそ」という方もいれば、「人の心に残ること」、「空を自由に飛ぶ」という方もいるでしょう。
確かに、飛ぶことは素晴しいと思います。
けれど、わたしはこのとき、「幸せそうな零戦」を見たような気がしました。
間違っているかもしれません。
それに、いつかこの考えが変わる日が来るかもしれません。
けれど、その零戦は、そっと微笑みながら、こう語りかけているようでした。
「ほら、友達もいる。独りじゃないよ」と。
Not alone
わたしが描いたパラオの零戦のイメージです。