2016年01月21日
φ('-'*)メモメモ 新薬 副作用の記事
蔓延する「ウソ」 新薬が危ない!深刻な副作用、既存薬をただ合体
Business Journal / 2016年1月16日 6時0分
薬・薬品 医療・医薬品業界
本連載前回記事『薬の原価率はわずか1%で暴利?安価で危険な中国・韓国製が大量流通…』において、薬の特許が切れてから発売されるジェネリック医薬品について述べました。今回はジェネリックにシェアを奪われないように奮闘する先発メーカー側についてみていきたいと思います。
2009年から10年にかけて、日本では新しい降圧剤が次々に誕生しました。一見すると日本の製薬会社の開発能力は優れているようですが、実態は逆です。これは、なかなか開発することができないゆえに生じた現象なのです。
製薬会社にとって理想的な展開は、次々と独創性のある強力な新薬を開発して、常に新陳代謝が繰り返されることです。そうであれば、たとえ売れ筋の薬が特許切れになって、ジェネリック医薬品がゾロゾロ出てきても、メーカーはびくともしません。
しかし、日本の製薬会社は、開発力で欧米のビッグファーマ(巨大製薬会社)に大きく後れを取っているのが現状で、新薬の開発は苦戦を強いられています。新しいヒット商品を生み出せない会社にとって、主力商品の特許切れは非常に恐ろしいことなのです。
通常、新薬は開発してから20〜25年間の特許期間が認められ、その間は独占的に生産販売ができます。しかし、特許期限を迎えた途端、ジェネリックがゾロゾロ出てきてシェアを食い荒らすので、利益を得ることができなくなります。
製薬会社としては、そのような事態はできるだけ先送りしたいのが本音ですから、ジェネリックを封じる手段を講じます。
もっとも使われる方法は、「配合剤」の新薬づくりです。具体的には、特許期限切れが近くなった薬を、ほかの薬と合体させて「新薬」として申請するのです。承認されれば、新たに特許期限が設定されるので、ジェネリックのメーカーはその期限が切れるまで新薬のほうには手が出せず、1世代遅れた「旧薬」のジェネリックを売り出すことになります。
売れ筋の薬を合体させてつくった配合剤は、患者さんにとっても都合のよいことが多く、メーカーにとっては一石二鳥なのです。
09〜10年に降圧剤の分野で配合剤の新薬が次々に誕生したのは、ブロプレス(武田薬品工業)、ディオバン(ノバルティスファーマ)など、降圧剤のブロックバスター薬(薬効で莫大な利益を生み出してきた薬)に期限切れが近づいたものが多かったからです。
新薬と聞くと、多くの方は地道な探薬作業の末にできるものと思われるでしょうが、最近はさまざまな薬が出尽くした感があり、独創的な新薬はなかなか生まれなくなったため、こうした配合剤の新薬のほうが多くなっています。
同じ新薬でも、配合剤の開発は費用も時間もかからないので、新薬の衣をまとったゾロ薬という意味で“ゾロ新”と揶揄されますが、製薬会社は主力商品の特許期限を引き延ばさないと生存競争に勝ち残れなくなるのです。
●ジェネリック封じのためにつくり出された配合剤「ゾロ新」の例
・ユニシア(武田薬品工業):降圧剤Ca(ブロプレス)+降圧剤ARB(アムロジン)
・エックスフォージ(ノバルティスファーマ):降圧剤Ca(ディオバン)+降圧剤ARB(アムロジン)
・ミカムロ(日本べーリンガーインゲルハイム、アステラス製薬):降圧剤a(ミカルディス)+降圧剤Ca(アムロジン)
・レザルタス(第一三共ヘルスケア、塩野義製薬):降圧剤Ca(オルメテック)+降圧剤ARB(カルブロック)
・アイミクス(大日本住友製薬):降圧剤Ca(アバプロ)+降圧剤ARB(アムロジン)
・ザクラス(武田薬品工業):降圧剤Ca(ブロプレス)+降圧剤ARB(ヒドロクロロチアジド)
・アテディオ(味の素製薬、持田製薬):降圧剤Ca(ディオバン)+降圧剤ARB(アテレック)
・エカード(武田薬品工業):降圧剤ARB(ブロプレス)+利尿剤(ヒドロクロロチアジド)
・プレミネント(MSD):降圧剤ARB(ニューロタン)+利尿剤(ヒドロクロロチアジド)
・イルトラ(塩野義製薬):降圧剤ARB(アバプロ)+利尿剤(ヒドロクロロチアジド)
・コディオ(ノバルティスファーマ):降圧剤ARB(ディオバン)+利尿剤(ヒドロクロロチアジド)
・ミコンビ(日本べーリンガーインゲルハイム、アステラス製薬):降圧剤ARB(ミカルディス)+利尿剤(ヒドロクロロチアジド)
・カデュエット(ファイザー):コレステロール低下剤(リピトール)+降圧剤ARB(アムロジン)
※降圧剤Ca =カルシウム拮抗薬タイプの降圧剤
降圧剤ARB=アンジオテンシン2受容体拮抗薬タイプの降圧剤
●配合剤を重宝がるのは危険
配合剤には、こうしたゾロ新など多くのタイプがありますが、単剤で使う場合と比較してどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
【メリット】
(1)2剤以上の薬がひとつになっているため、飲みやすい。飲み間違いや飲み忘れのリスクも減る。
――日本では、10剤処方が当たり前になっているので、このメリットは大きいといえます。
(2)処方薬の合剤は、薬価が割安に設定されているため経済的なメリットがある。
――例として、カデュエット配合剤4(ファイザー)のケースをみてみると、コレステロール低下剤のリピトール10mgと降圧剤のアムロジン5mgを合わせたもので、薬価は141.7円。リピトール10mg(107.9円)とアムロジン5mg(53.3円)を単剤で購入すると合計161.2円になるので、配合剤を使用することで12%の節約となります。
【デメリット】
(1)あらかじめ成分の割合が決まっているので、きめ細かい投薬ができない。
――たとえば、降圧剤とコレステロール低下剤を併用している人で、血圧が下がり気味なのにコレステロール値がやや高いという場合、単剤であれば微妙なさじ加減で対応することができますが、配合剤を使っているとそれができなくなってしまいます。
(2)副作用が出ても、どの成分が原因なのか特定しにくい。
――これはゾロ新だけでなく、むしろ総合感冒薬、総合胃腸薬のように多種類の成分がひとつになっている配合剤の場合に多く起こります。
●イレッサ、グリベック――高価な薬のパテントクリフ到来
ブロックバスター薬の特許切れは、先発薬メーカーにとっては最悪の瞬間です。薬品業界の関係者は、それを「パテントクリフ(特許の崖っぷち)」と呼び、少しでも先に伸びることを願っています。
逆に、高価な薬を使わざるを得ない患者さんにとっては、大きな福音になります。ジェネリックに切り換えると、月に数千円から数万円の出費が減ることになるからです。
今後、特許切れを迎えるブロックバスター薬は以下の通りですが、薬価が高いがんの治療薬も含まれています。
【16年】
・プラビックス(サノフィ):脳血管障害
・グリベック(ノバルティスファーマ):分子標的薬、慢性骨髄性白血病
・ジェイゾロフト(ファイザー):抗うつ剤
【17年】
・オルメテック(第一三共ヘルスケア):降圧剤
ここに記した年は、あくまでも目安です。先発薬メーカーがあの手この手で期限の引き伸ばしにかかることもあるからです。特許権をたくさん設定しておいて、法廷闘争でジェネリックメーカーの動きを封じるのは常套手段です。ただ、それにも限界があるので、期限が大幅にずれることはないでしょう。
ゾロ新の配合製剤は、患者の飲み忘れを防いだり費用負担を軽減するためだけにつくられているのではなく、このような製薬会社の思惑が背後にあることも頭の片隅に入れて薬とお付き合いください。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)
(๑◔‿ ◔๑)
Business Journal / 2016年1月16日 6時0分
薬・薬品 医療・医薬品業界
本連載前回記事『薬の原価率はわずか1%で暴利?安価で危険な中国・韓国製が大量流通…』において、薬の特許が切れてから発売されるジェネリック医薬品について述べました。今回はジェネリックにシェアを奪われないように奮闘する先発メーカー側についてみていきたいと思います。
2009年から10年にかけて、日本では新しい降圧剤が次々に誕生しました。一見すると日本の製薬会社の開発能力は優れているようですが、実態は逆です。これは、なかなか開発することができないゆえに生じた現象なのです。
製薬会社にとって理想的な展開は、次々と独創性のある強力な新薬を開発して、常に新陳代謝が繰り返されることです。そうであれば、たとえ売れ筋の薬が特許切れになって、ジェネリック医薬品がゾロゾロ出てきても、メーカーはびくともしません。
しかし、日本の製薬会社は、開発力で欧米のビッグファーマ(巨大製薬会社)に大きく後れを取っているのが現状で、新薬の開発は苦戦を強いられています。新しいヒット商品を生み出せない会社にとって、主力商品の特許切れは非常に恐ろしいことなのです。
通常、新薬は開発してから20〜25年間の特許期間が認められ、その間は独占的に生産販売ができます。しかし、特許期限を迎えた途端、ジェネリックがゾロゾロ出てきてシェアを食い荒らすので、利益を得ることができなくなります。
製薬会社としては、そのような事態はできるだけ先送りしたいのが本音ですから、ジェネリックを封じる手段を講じます。
もっとも使われる方法は、「配合剤」の新薬づくりです。具体的には、特許期限切れが近くなった薬を、ほかの薬と合体させて「新薬」として申請するのです。承認されれば、新たに特許期限が設定されるので、ジェネリックのメーカーはその期限が切れるまで新薬のほうには手が出せず、1世代遅れた「旧薬」のジェネリックを売り出すことになります。
売れ筋の薬を合体させてつくった配合剤は、患者さんにとっても都合のよいことが多く、メーカーにとっては一石二鳥なのです。
09〜10年に降圧剤の分野で配合剤の新薬が次々に誕生したのは、ブロプレス(武田薬品工業)、ディオバン(ノバルティスファーマ)など、降圧剤のブロックバスター薬(薬効で莫大な利益を生み出してきた薬)に期限切れが近づいたものが多かったからです。
新薬と聞くと、多くの方は地道な探薬作業の末にできるものと思われるでしょうが、最近はさまざまな薬が出尽くした感があり、独創的な新薬はなかなか生まれなくなったため、こうした配合剤の新薬のほうが多くなっています。
同じ新薬でも、配合剤の開発は費用も時間もかからないので、新薬の衣をまとったゾロ薬という意味で“ゾロ新”と揶揄されますが、製薬会社は主力商品の特許期限を引き延ばさないと生存競争に勝ち残れなくなるのです。
●ジェネリック封じのためにつくり出された配合剤「ゾロ新」の例
・ユニシア(武田薬品工業):降圧剤Ca(ブロプレス)+降圧剤ARB(アムロジン)
・エックスフォージ(ノバルティスファーマ):降圧剤Ca(ディオバン)+降圧剤ARB(アムロジン)
・ミカムロ(日本べーリンガーインゲルハイム、アステラス製薬):降圧剤a(ミカルディス)+降圧剤Ca(アムロジン)
・レザルタス(第一三共ヘルスケア、塩野義製薬):降圧剤Ca(オルメテック)+降圧剤ARB(カルブロック)
・アイミクス(大日本住友製薬):降圧剤Ca(アバプロ)+降圧剤ARB(アムロジン)
・ザクラス(武田薬品工業):降圧剤Ca(ブロプレス)+降圧剤ARB(ヒドロクロロチアジド)
・アテディオ(味の素製薬、持田製薬):降圧剤Ca(ディオバン)+降圧剤ARB(アテレック)
・エカード(武田薬品工業):降圧剤ARB(ブロプレス)+利尿剤(ヒドロクロロチアジド)
・プレミネント(MSD):降圧剤ARB(ニューロタン)+利尿剤(ヒドロクロロチアジド)
・イルトラ(塩野義製薬):降圧剤ARB(アバプロ)+利尿剤(ヒドロクロロチアジド)
・コディオ(ノバルティスファーマ):降圧剤ARB(ディオバン)+利尿剤(ヒドロクロロチアジド)
・ミコンビ(日本べーリンガーインゲルハイム、アステラス製薬):降圧剤ARB(ミカルディス)+利尿剤(ヒドロクロロチアジド)
・カデュエット(ファイザー):コレステロール低下剤(リピトール)+降圧剤ARB(アムロジン)
※降圧剤Ca =カルシウム拮抗薬タイプの降圧剤
降圧剤ARB=アンジオテンシン2受容体拮抗薬タイプの降圧剤
●配合剤を重宝がるのは危険
配合剤には、こうしたゾロ新など多くのタイプがありますが、単剤で使う場合と比較してどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
【メリット】
(1)2剤以上の薬がひとつになっているため、飲みやすい。飲み間違いや飲み忘れのリスクも減る。
――日本では、10剤処方が当たり前になっているので、このメリットは大きいといえます。
(2)処方薬の合剤は、薬価が割安に設定されているため経済的なメリットがある。
――例として、カデュエット配合剤4(ファイザー)のケースをみてみると、コレステロール低下剤のリピトール10mgと降圧剤のアムロジン5mgを合わせたもので、薬価は141.7円。リピトール10mg(107.9円)とアムロジン5mg(53.3円)を単剤で購入すると合計161.2円になるので、配合剤を使用することで12%の節約となります。
【デメリット】
(1)あらかじめ成分の割合が決まっているので、きめ細かい投薬ができない。
――たとえば、降圧剤とコレステロール低下剤を併用している人で、血圧が下がり気味なのにコレステロール値がやや高いという場合、単剤であれば微妙なさじ加減で対応することができますが、配合剤を使っているとそれができなくなってしまいます。
(2)副作用が出ても、どの成分が原因なのか特定しにくい。
――これはゾロ新だけでなく、むしろ総合感冒薬、総合胃腸薬のように多種類の成分がひとつになっている配合剤の場合に多く起こります。
●イレッサ、グリベック――高価な薬のパテントクリフ到来
ブロックバスター薬の特許切れは、先発薬メーカーにとっては最悪の瞬間です。薬品業界の関係者は、それを「パテントクリフ(特許の崖っぷち)」と呼び、少しでも先に伸びることを願っています。
逆に、高価な薬を使わざるを得ない患者さんにとっては、大きな福音になります。ジェネリックに切り換えると、月に数千円から数万円の出費が減ることになるからです。
今後、特許切れを迎えるブロックバスター薬は以下の通りですが、薬価が高いがんの治療薬も含まれています。
【16年】
・プラビックス(サノフィ):脳血管障害
・グリベック(ノバルティスファーマ):分子標的薬、慢性骨髄性白血病
・ジェイゾロフト(ファイザー):抗うつ剤
【17年】
・オルメテック(第一三共ヘルスケア):降圧剤
ここに記した年は、あくまでも目安です。先発薬メーカーがあの手この手で期限の引き伸ばしにかかることもあるからです。特許権をたくさん設定しておいて、法廷闘争でジェネリックメーカーの動きを封じるのは常套手段です。ただ、それにも限界があるので、期限が大幅にずれることはないでしょう。
ゾロ新の配合製剤は、患者の飲み忘れを防いだり費用負担を軽減するためだけにつくられているのではなく、このような製薬会社の思惑が背後にあることも頭の片隅に入れて薬とお付き合いください。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)
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