2021年02月22日
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ご飯にみそ汁「ねこまんま」は行儀が悪い? 当の“猫”にとってはいい食事?
オトナンサー - 02月22日 22時16分
「ねこまんま」は行儀が悪い?
きょう2月22日は「2(ニャン)月、2(ニャン)2(ニャン)日」の語呂合わせで「猫の日」です。猫が名前に付いた食べ物として、ご飯にみそ汁をかけたり、かつお節をかけたりした「ねこまんま」がありますが、「ねこまんまを食べるのは行儀が悪い」とよく言われます。それはなぜでしょうか。
そもそも、「ねこまんま」がどのようなものなのか地域によって違いがあるようで、また、「ねこまんま」が当の猫にとってよい食べ物なのかも疑問です。ねこまんまに関するさまざまな疑問について、専門家に聞きました。
関東と関西で食べ方に違い
まず、和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに聞きました。
Q.そもそも、「ねこまんま」とはどのような食べ物のこととされているのでしょうか。
齊木さん「『ねこまんま』とは、ご飯にかつお節としょうゆをかけたもの、または、みそ汁などをかけたご飯のことをいいます。『まんま』は『ご飯、めし』の幼児語であり、『ねこまんま』は『ねこめし(猫飯)』『にゃんこめし』とも呼ばれます。『猫』と名前がついてはいますが、現在は人が食べる簡単な食事の一種を指します」
Q.なぜ、「ねこまんま」、もしくは「ねこめし」と名付けられたのでしょうか。
齊木さん「飼い猫の餌は昔、人間のご飯の残飯であることが多かったようです。例えば、ご飯にかつお節、だしを取った後の煮干し、焼き魚の骨をのせたものなどです。まさに猫のご飯、『ねこまんま』でした。それが転じて、かつお節をかけたご飯や、みそ汁をかけた簡単なご飯のことを、人間が食べるものではありますが『ねこまんま』、もしくは『ねこめし』と呼ぶようになったと考えられます。
猫に人の食べ物の残りを与えていた時代の名残で、『残飯に由来するご飯』『見た目にこだわらないズボラな料理』として、名前が定着したのではないでしょうか」
Q.「ねこまんま」が地域によって違うというのは本当でしょうか。
齊木さん「関東と関西、地域によって食べ方も異なるといわれています。関東や東北地方では主に、ご飯にかつお節をかけ、しょうゆを足したものをいいます。かつおのうま味が引き出され、さっぱりといただけます。一方、関西ではご飯にみそ汁をかけたものを『ねこまんま』と呼び、かつお節だけのものより味が濃く、汁気がある、いわゆる『汁かけご飯』です。また、北海道では、かつお節をかけた後、しょうゆと特産品のバターを加えることもあるそうです。
ただし、今挙げた分類にははっきりと境界線があるわけではなく、家庭によって、関東でも汁かけ飯を『ねこまんま』と言ったり、関西でも『かつお節にしょうゆ』という家庭もあったりするようです」
Q.なぜ、「ねこまんまは行儀が悪い」と言われるのでしょうか。
齊木さん「これは主に汁かけタイプの方になりますが、日本伝統の食事の作法に反するためです。古くから日本の食事様式では、汁物に箸を付けた後はご飯と菜(おかず)は交互に食べるのが順序で、汁→ご飯→おかず→ご飯といったように食べることが礼法で定められていました。
この作法はタンパク質や脂肪などの過剰摂取を調節し、食べ過ぎを防ぎ、病気を予防する先人の知恵でもありました。しかし、『汁かけ飯』は食べる際に器を手で持って口をつけ、箸でズルズルとすすりこむ食べ方です。これは礼法に反する行為であることから、現代でも『行儀が悪い』といわれるのです。
また、先述した『残飯に由来するご飯』『見た目にこだわらないズボラな料理』といった、見た目の影響もあると考えられます。特に、汁かけ御飯は残った冷たいご飯にみそ汁をかけて食べるため、『残り物を食べる』という印象が大きいです。食事の作法で大切なことの一つは、共に食事をする人に不快な思いをさせないことで、その観点からすると『行儀が悪い』ということになるのです。
しかし、作法も時代と共に変化していくべきものと考えます。周りの環境に配慮しながら、好きな物を好きな方法で食べることも食生活を豊かにするのではないでしょうか」
猫の栄養バランス上は不適
次に、獣医師の増田国充さんに「ねこまんま」と猫の関係について聞きました。
Q.「ねこまんま」という名前は、昔は猫に与えていたからとの説があるようですが、実際、猫に与えていたのでしょうか。
増田さん「その昔、猫に『ねこまんま』と称するものを与えていることが非常に多くありました。猫は元々、自然の中では自ら獲物を狩り、その肉を食料としていました。一方で古来、人間の生活の中に溶け込む存在としても親しまれてきました。ただ、猫に食べ物を与えることは昔から行っていたものの、猫にとって最適な栄養を人間が供していたかというと、必ずしもそうではなかったと思われます。
猫専用のフード(キャットフード)ができたのも20世紀半ば以降であり、徐々に猫に適したものに改良を重ねていきました。それまではどちらかというと『人間の食べた残り物』を与えるという感覚が広く浸透していたため、米飯にみそ汁をかけたものや、『魚が好きだから』ということで、かつお節などをトッピングしたものを与えていたと考えられます」
Q.ご飯にみそ汁をかけたもの、もしくは、ご飯にかつお節をかけた「ねこまんま」は猫にとって、よい食べ物なのでしょうか。
増田さん「猫にとってよい食事かといわれれば、『NO』です。ヒトと猫とでは必要とする栄養組成が異なります。まず、ヒトは雑食(植物も肉類もどちらも食べる)ですが、猫はほぼ肉食といっても過言ではありません。つまり、ヒトに比べて炭水化物の要求量が少ないのです。ねこまんまのほとんどは米ですので、圧倒的に炭水化物(糖質)過多になります。
さらに、みそ汁は塩分が猫の必要とする量を大幅に超える可能性が考えられます。かつお節については、猫が必要とするミネラルバランスに変化を与える恐れがあるなど、総じて、猫の栄養バランスに適したものではありません」
Q.人間が日常的に食べているものの中で、猫に与えても問題ない食べ物の例を教えてください。
増田さん「猫は肉食の動物ということが大前提です。そのため、野菜や穀物の消化はヒトほど効率がよいわけではありません。われわれが食べているものを猫にあげたいという気持ちは十分に理解できますが、注意が必要です。先述の通り、肉が主食の動物ですので、鶏肉は与えても大きな支障はないものと考えられます。ただ、生で与えることは安全上問題があり得ます。ゆでてから与えるのが望ましいでしょう。部位は、ささ身やもも肉、胸肉も加えてよいかもしれません。
魚も同じく、タンパク源として猫に与えてよいものですが、煮干しのような乾燥した魚は適しません。また、魚の骨が消化器に刺さるトラブルが時折見られますので、骨の処理を行いましょう。人間が食べてよい生食用の魚であれば、生でも大体問題はありません。ただし、イワシやアジなど『青魚』と呼ばれるものは食べ過ぎると『黄色脂肪症』という病気になる可能性があり、与え過ぎは避けましょう」
Q.猫にふさわしい本当の「ねこまんま」とは、どのような栄養を備えた、どのような食べものでしょうか。
増田さん「猫にとって必要な栄養をバランスよく含んでいる食べ物となると、やはり、キャットフードが適していることになります。中でも『総合栄養食』と記載されているものを使用することが重要です。
もし、手作り食で猫の健康を維持しようと思ったら、猫の栄養学をきちんと理解することが大切です。特に6大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル、水)の配合についての考慮が大切です。タンパク質がヒトより多めに必要で、炭水化物は消化に負担がかかるという、猫の栄養上の特性を念頭に置きましょう。
猫の栄養学の理解はハードルが高いので、専門家の著した手作りご飯のレシピ(獣医師が監修していると、より安心です)を参考に、例えば、1週間の中で1日とか、肩肘張らないところから実践するのも良案と思います。ただし、基礎疾患があり、獣医師から食事療法が指示されている猫の場合は、そちらを優先すべきです。医食同源はヒトも猫も同じですので、健康で長生きするために、食べ物には十分気を付けてあげたいものです」
オトナンサー編集部
ご飯にみそ汁「ねこまんま」は行儀が悪い? 当の“猫”にとってはいい食事?
オトナンサー - 02月22日 22時16分
「ねこまんま」は行儀が悪い?
きょう2月22日は「2(ニャン)月、2(ニャン)2(ニャン)日」の語呂合わせで「猫の日」です。猫が名前に付いた食べ物として、ご飯にみそ汁をかけたり、かつお節をかけたりした「ねこまんま」がありますが、「ねこまんまを食べるのは行儀が悪い」とよく言われます。それはなぜでしょうか。
そもそも、「ねこまんま」がどのようなものなのか地域によって違いがあるようで、また、「ねこまんま」が当の猫にとってよい食べ物なのかも疑問です。ねこまんまに関するさまざまな疑問について、専門家に聞きました。
関東と関西で食べ方に違い
まず、和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに聞きました。
Q.そもそも、「ねこまんま」とはどのような食べ物のこととされているのでしょうか。
齊木さん「『ねこまんま』とは、ご飯にかつお節としょうゆをかけたもの、または、みそ汁などをかけたご飯のことをいいます。『まんま』は『ご飯、めし』の幼児語であり、『ねこまんま』は『ねこめし(猫飯)』『にゃんこめし』とも呼ばれます。『猫』と名前がついてはいますが、現在は人が食べる簡単な食事の一種を指します」
Q.なぜ、「ねこまんま」、もしくは「ねこめし」と名付けられたのでしょうか。
齊木さん「飼い猫の餌は昔、人間のご飯の残飯であることが多かったようです。例えば、ご飯にかつお節、だしを取った後の煮干し、焼き魚の骨をのせたものなどです。まさに猫のご飯、『ねこまんま』でした。それが転じて、かつお節をかけたご飯や、みそ汁をかけた簡単なご飯のことを、人間が食べるものではありますが『ねこまんま』、もしくは『ねこめし』と呼ぶようになったと考えられます。
猫に人の食べ物の残りを与えていた時代の名残で、『残飯に由来するご飯』『見た目にこだわらないズボラな料理』として、名前が定着したのではないでしょうか」
Q.「ねこまんま」が地域によって違うというのは本当でしょうか。
齊木さん「関東と関西、地域によって食べ方も異なるといわれています。関東や東北地方では主に、ご飯にかつお節をかけ、しょうゆを足したものをいいます。かつおのうま味が引き出され、さっぱりといただけます。一方、関西ではご飯にみそ汁をかけたものを『ねこまんま』と呼び、かつお節だけのものより味が濃く、汁気がある、いわゆる『汁かけご飯』です。また、北海道では、かつお節をかけた後、しょうゆと特産品のバターを加えることもあるそうです。
ただし、今挙げた分類にははっきりと境界線があるわけではなく、家庭によって、関東でも汁かけ飯を『ねこまんま』と言ったり、関西でも『かつお節にしょうゆ』という家庭もあったりするようです」
Q.なぜ、「ねこまんまは行儀が悪い」と言われるのでしょうか。
齊木さん「これは主に汁かけタイプの方になりますが、日本伝統の食事の作法に反するためです。古くから日本の食事様式では、汁物に箸を付けた後はご飯と菜(おかず)は交互に食べるのが順序で、汁→ご飯→おかず→ご飯といったように食べることが礼法で定められていました。
この作法はタンパク質や脂肪などの過剰摂取を調節し、食べ過ぎを防ぎ、病気を予防する先人の知恵でもありました。しかし、『汁かけ飯』は食べる際に器を手で持って口をつけ、箸でズルズルとすすりこむ食べ方です。これは礼法に反する行為であることから、現代でも『行儀が悪い』といわれるのです。
また、先述した『残飯に由来するご飯』『見た目にこだわらないズボラな料理』といった、見た目の影響もあると考えられます。特に、汁かけ御飯は残った冷たいご飯にみそ汁をかけて食べるため、『残り物を食べる』という印象が大きいです。食事の作法で大切なことの一つは、共に食事をする人に不快な思いをさせないことで、その観点からすると『行儀が悪い』ということになるのです。
しかし、作法も時代と共に変化していくべきものと考えます。周りの環境に配慮しながら、好きな物を好きな方法で食べることも食生活を豊かにするのではないでしょうか」
猫の栄養バランス上は不適
次に、獣医師の増田国充さんに「ねこまんま」と猫の関係について聞きました。
Q.「ねこまんま」という名前は、昔は猫に与えていたからとの説があるようですが、実際、猫に与えていたのでしょうか。
増田さん「その昔、猫に『ねこまんま』と称するものを与えていることが非常に多くありました。猫は元々、自然の中では自ら獲物を狩り、その肉を食料としていました。一方で古来、人間の生活の中に溶け込む存在としても親しまれてきました。ただ、猫に食べ物を与えることは昔から行っていたものの、猫にとって最適な栄養を人間が供していたかというと、必ずしもそうではなかったと思われます。
猫専用のフード(キャットフード)ができたのも20世紀半ば以降であり、徐々に猫に適したものに改良を重ねていきました。それまではどちらかというと『人間の食べた残り物』を与えるという感覚が広く浸透していたため、米飯にみそ汁をかけたものや、『魚が好きだから』ということで、かつお節などをトッピングしたものを与えていたと考えられます」
Q.ご飯にみそ汁をかけたもの、もしくは、ご飯にかつお節をかけた「ねこまんま」は猫にとって、よい食べ物なのでしょうか。
増田さん「猫にとってよい食事かといわれれば、『NO』です。ヒトと猫とでは必要とする栄養組成が異なります。まず、ヒトは雑食(植物も肉類もどちらも食べる)ですが、猫はほぼ肉食といっても過言ではありません。つまり、ヒトに比べて炭水化物の要求量が少ないのです。ねこまんまのほとんどは米ですので、圧倒的に炭水化物(糖質)過多になります。
さらに、みそ汁は塩分が猫の必要とする量を大幅に超える可能性が考えられます。かつお節については、猫が必要とするミネラルバランスに変化を与える恐れがあるなど、総じて、猫の栄養バランスに適したものではありません」
Q.人間が日常的に食べているものの中で、猫に与えても問題ない食べ物の例を教えてください。
増田さん「猫は肉食の動物ということが大前提です。そのため、野菜や穀物の消化はヒトほど効率がよいわけではありません。われわれが食べているものを猫にあげたいという気持ちは十分に理解できますが、注意が必要です。先述の通り、肉が主食の動物ですので、鶏肉は与えても大きな支障はないものと考えられます。ただ、生で与えることは安全上問題があり得ます。ゆでてから与えるのが望ましいでしょう。部位は、ささ身やもも肉、胸肉も加えてよいかもしれません。
魚も同じく、タンパク源として猫に与えてよいものですが、煮干しのような乾燥した魚は適しません。また、魚の骨が消化器に刺さるトラブルが時折見られますので、骨の処理を行いましょう。人間が食べてよい生食用の魚であれば、生でも大体問題はありません。ただし、イワシやアジなど『青魚』と呼ばれるものは食べ過ぎると『黄色脂肪症』という病気になる可能性があり、与え過ぎは避けましょう」
Q.猫にふさわしい本当の「ねこまんま」とは、どのような栄養を備えた、どのような食べものでしょうか。
増田さん「猫にとって必要な栄養をバランスよく含んでいる食べ物となると、やはり、キャットフードが適していることになります。中でも『総合栄養食』と記載されているものを使用することが重要です。
もし、手作り食で猫の健康を維持しようと思ったら、猫の栄養学をきちんと理解することが大切です。特に6大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル、水)の配合についての考慮が大切です。タンパク質がヒトより多めに必要で、炭水化物は消化に負担がかかるという、猫の栄養上の特性を念頭に置きましょう。
猫の栄養学の理解はハードルが高いので、専門家の著した手作りご飯のレシピ(獣医師が監修していると、より安心です)を参考に、例えば、1週間の中で1日とか、肩肘張らないところから実践するのも良案と思います。ただし、基礎疾患があり、獣医師から食事療法が指示されている猫の場合は、そちらを優先すべきです。医食同源はヒトも猫も同じですので、健康で長生きするために、食べ物には十分気を付けてあげたいものです」
オトナンサー編集部
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