傷んだり腐ったりした食べ物は酸味が加わる。
酸味に気付いたのは園児の頃だった。食べてはいけないと学んだのは中学生の頃だった。
いやだって、ずっとアウトな菓子パンが食卓に出ていて食べてきたんだもの。
5個入りの菓子パンがあったとしよう。
朝食にパンを食べるのが自分しかいない。まだ胃が小さいので1個で十分。
するとどうなるか。未開封で消費期限3日後の菓子パンが、開封済みの状態で5日後に回ってくることになる。
初日・二日目は正常だが、日に日に甘味の奥に妙な酸味が増していく。
……たまに腹を壊していたのは十中八九この菓子パンのせいだと今ならわかる。
何故か当時の自分は味の変化を親に伝えなかった。冷凍食品の苦味はすぐ伝えていたのにどうして。
なので親もヤバい菓子パンが消費され続けていることに気付かなかった。
小学生で家庭科の授業が始まり、賞味期限と消費期限を知った。
腐敗で臭いが強まることは言っていた。味は言ってなかったよう思う。
あの先生いい加減だったからな。自分が聞いていなかっただけかもしれないが。
知ったけれど、まさかそんな、朝食のパンが消費期限無視して出てきているとは思わないので袋を見ようとしなかった。
母は多分きっと賞味期限と見間違えていたんだろう。頼むそうであってくれ。
中学生の頃、成長に伴い食べる量が増えてパンの消費が早まったので、酸味のあるパンを食べることはなくなっていた。
そんなある日、数日前のカボチャの煮物が夕食に並んだ。傷んでいたようで酸味があった。
だが酸味があっても食べられると誤った学習をしてしまっているので普通に食べ進めた。
他のオカズを食べ終えた父が煮物を一つ口に運び、怪訝な顔をする。
その間も自分は箸を進めるものだから、余計父の表情が険しくなる。
「え? カボチャ酸っぱいよね?」
「うん。酸っぱいよ」
「ならなんで食べてんだ!」
父がティッシュを手渡し、母がカボチャを処分する中、自分は衝撃を受けていた。
酸味が加わった食べ物って食べちゃ駄目なんだ、と。
じゃあ今まで自分が食べてきた朝食はなんだったのか、と。
ちな後に牛乳や豆乳で苦味が発生する場合もあるのだと学んだ。舌で。