初夢はまだ見ていない。
なので昔見た夢の話をする。ネタが足りてないので。
小学一年生の時に見た夢がある。
昔の変な夢を、時期も合わせて覚えているのは自分にとっては珍しい。
海に面した桟橋の上にいた。陸地側はコンクリート製の堤防になっていた。
桟橋は3mくらいの横幅で、堤防までは25mくらいあった。
プールで見慣れた距離感だったので25mと判断した。
人間は幼い自分の他に妹だけがいた。二人で桟橋の端っこに立って波を見ていた。三歩ほど妹の方が陸地に近い位置に立っていた。
不意に水面が大きく揺らいだ。嫌な予感がして妹に陸めがけて走らせた。
振り返りながら自分も駆けだすと、大きなサメがざばんと現れた。
真っすぐこちらに向かって泳いできたサメは、大きく口を開けてバクリと桟橋の端に噛みついた。
メキメキと嫌な音がして桟橋の端が砕ける。サメが口を開けると木片が海水に散っていった。
再び桟橋を噛み砕いて、口を開けて、また噛みついてきて。
サメが桟橋を齧っていって自分たちを食べようとしていると考え怖くなった。冗談じゃない、陸に逃げねばと前を向いた。
前にいる妹も同じ考えに至ったようで泣きじゃくりながら懸命に足を動かしている。
けれどこのままでは陸に着く前に追いつかれてしまうと思った。
覚悟を決めて自分は桟橋から飛び降りた。
カナヅチなりに必死に泳いだ。桟橋から離れるよう陸地と平行に移動した。
木を砕く音が止み、サメがほとんど溺れている自分に向かっているのを察した。
桟橋に目をやると、駆け付けた大人が妹を堤防に引き上げているところだった。
妹は大丈夫だ、良かった。と安心する頭上からギザギザしたものが迫ってきた。
暗転。
自宅を屋根の上から眺めていた。
視点の高さが不思議だったが、魂だけになって上空をふよふよ漂っているのだと自覚したら納得した。
黒い服装の人が出入りするのを見て、あの中で自分の葬式をしているのだと思った。
(当時はまだ葬式会場の存在を知らなかった)
家の中から母が出てきた。空模様を確認するよう見上げる顔を見て、泣いていないんだなと思った。
そうやって観察していると母と目が合っているように感じた。地上に降りて確認しようと思ったら、下へ降りられた。
ゆっくり近づいてくる自分から視線を外さない母を見て、自分の姿が見えているのだと喜んだ。
地面に足が着く感触がなくて、自分の死を改めて思い知った。
そんな夢。
当時の感想も覚えている。
嫌な夢を見たとは思わなかった。長いし一回場面変わるしで疲れを感じた。
もっと色々あるだろ。
自分は夢の中でケガをすると1/10くらいで痛みを感じる人間なのだが、この時は珍しく無痛だった。食べられるシーンがなかったからか。
これからサメに食べられる恐怖で気絶していたのかもしれない。
妹愛に溢れた行動をとっているけど、実際は無理だな。
友人の為なら死ねるかもしれないが身内の為に死のうとは思わない。薄情。
当時は死んだら魂だけになって、ふわふわふよふよするものだと思っていた。
誰からも見えなくなっても母なら気付いてくれている一方で、母が泣いていない。
幼少自分はどういう深層心理だったんだ。毒親とかではないんだけど
ジョーズは既に存在したはずだが、当時は今ほどサメ映画話題ではなかったはず。
サメ映画未視聴なのだが、どこから浸食してきたんだろう。