冬になると母親が甘酒を飲んでいた。
幼少期から見ていて冬にだけ現れる独特の匂いに憧れた。
分けてもらった時、苦手な味だと分からせられた。
……られたのだが、不思議なことにいつまで経っても甘酒に惹かれる自分がいる。
字面が美味しそうなせいだろうか。
覚えていないがアニメか小説に印象的な場面があったのだろうか。
わからない。
成人して一人旅をするようになった。
寒い時期にお寺の近くで甘酒が売られていた。鍋で煮ているが店先から見えた。
甘酒が有名な地域ではなかったが、魅力的なビジュアルと寒さに負けて一杯購入した。
残念ながら味は覚えていない。
熱すぎてわからなかったのかな。そんなことある?
ともかくこの一件で苦手意識が和らいだので、この前スーパーで甘酒用の酒粕を買ってきた。
鍋に指定量ぶちこんで水と一緒に煮込んで。カップに移して入れ忘れた砂糖を後から足して出来上がり。
飲んでみた。
トロみがついていて、甘さの奥の方に酸味がいる独特の味が広がった。
うん、あんまり美味しくない。
作り方が悪かったのかなあ。
自分でも驚いたが未だ甘酒に焦がれる気持ちが消えていない。
あとは他の人が美味しく作った甘酒に賭けるか。
どこが有名かしら。