エレベーターで二人組の男性と同乗した。行先が同じ階だった。
二人ともスーツ姿で、一人は若く見え、一人は歳を召しているようだった。
上司と部下だろうか。
この組み合わせに遭遇する場合、年上の人のご高説に年下の人が興味深そうに相槌を打つのが多い。
今回は違っていて、若い人が楽しそうに話すのを、年上の人が新鮮そうに相槌を打ったり訊き返したりしていた。
仕事スケジュールの話かと思っていたが、若い彼の口から「桜レイア」の単語が聞こえて流れが変わった。狩猟ゲームの話だった。
学生時代桜レイア装備使っていた自分、もう少し聞いていたかったが、残念ながら目的の階に着いた。
ボタンの前に立ってしまっていたので、開ボタンを押して先に二人に降りてもらった。
二人は扉前にいたので本当は必要ないのだが、自分がボタンを押していたせいでお礼の言葉をかけてもらった。
「ありがとうございます」
「恐れ入ります」
軽い会釈を互いに交わし、自分も少し遅れてエレベーターから降りた。
彼らと別方面に歩みを進めながら、先ほどの言葉に思いを馳せた。
恐れ入りますってお礼で言われたの初めてだ。
なんかいいなあ。