2019年10月30日
映画『バイス』とは副大統領を意味し、アメリカ・ブッシュ政権の実話スキャンダル
アメリカ政治史と言っても、1970〜2000年代はついこの間。
チェイニー、ラムズフェルド、ジョージ・W・ブッシュと聞くと記憶に新しい人も多いのではないでしょうか。
『バイス』は原題『Vice』(副の意味)で、第46代副大統領ディック・チェイニーを扱った映画です。
本人はもとより、妻リン・チェイニー、また当時彼を取り巻いたそうそうたる政治家の面々は今も健在。
にもかかわらず、数々のプライベート場面はじめ、史実も時に皮肉っぽく映画にしてしまうあたり、さすがアメリカといわざるを得ません。
逆にいえば、それだけ愉快で面白いおススメ映画だということです。
副大統領は大統領が死ぬのを待つだけ?
映画の中でも、本人の口から「副大統領?大統領が死ぬのをひたすら待つ立場だろ?」と揶揄するセリフが出てくるぐらいで、ほとんど注目されることのなかった副大統領。
しかし、チェイニー副大統領は違っていました。
最盛期には「史上最強の副大統領」、末期には「史上最悪の副大統領」などと、とにかくこんなに話題になった副大統領はいません。
それだからこそ、こんなユニークな映画が出来上がったのではないでしょうか。
ストーリーは彼が酒浸りの大学生だった頃から始まります。
後に妻になる恋人リン(エイミー・アダムス)からこっぴどく叱られるという、情けないディック・チェイニー(クリスチャン・ベール)がいました。
参考:エイミー・アダムス<ピンタレスト画像>
参考:クリスチャン・ベール<ピンタレスト画像>
アメリカの政治史がわかる映画『バイス』
(引用:https://www.facebook.com/ViceMovie/)
◇チェイニーを政界に押し上げた妻リン
妻リンはいわゆるしっかり者で、チェイニーを政界に押し上げるのに、彼女の力が大変大きかったのがよくわかります。
チェイニーがワイオミングから下院議員に立候補した時、もともと口の重いチェイニーに代わって選挙演説をこなしたのは彼女。
チェイニーが政治家として成長していくプロセスは、リンを通して描かれるところはひとつの見どころです。
ちなみに、主演のクリスチャン・ベールと、妻役のエイミー・アダムスは、映画『アメリカン・ハッスル』で共演した仲。
役柄や年齢は全然違いますが、コンビネーションの良さはこの映画を彷彿させるものがあります。興味のある方は、ぜひご覧ください。
◇後の国防長官ラムズフェルドとの出会い
一方、チェイニーが政治の裏表を学んだのは、下院議員時代のラムズフェルド。
彼のアシスタントをしながら、「口は堅く」「指示を守れ」「忠実であれ」という3ヶ条を叩き込まれます。
二人の関係は、2001年のブッシュ政権誕生時に、チェイニーが副大統領になったのと同時にラムズフェルドを国防長官に起用するきっかけになったとされています。
そして、この年の9月11日に同時多発テロが勃発。
映画の冒頭は、緊迫と動揺のホワイトハウス内をクローズアップ。
不在のブッシュ大統領を差し置き、陣頭指揮を執るチェイニー副大統領がラムズフェルドとやりとりする内容は、彼のリーダーシップが描かれなかなかの見どころです。
◇ブッシュ大統領に飲ませた条件
ところで、大統領選を目指したブッシュはどのようにして嫌がるチェイニーに、副大統領指名を納得させたのでしょうか?
リアルで本物そっくりなジョージ・W・ブッシュ(サム・ロックウェル)が登場、注目です。
なんとも軽いノリのブッシュは、チェイニーが副大統領を引き受けるために示した条件をいとも簡単に承諾するのです。
その条件とは、政権運営にあたりチェイニーに一定の権限を持たせることでした。
よくよく時代背景を見ると、この時代のアメリカはイラクの大量破壊兵器の存在をテコに、フセイン政権を潰しにかかった頃だったのです。
まさに、「最強の副大統領」が誕生したのです
仕上がりは皮肉たっぷりのシリアス映画
一見シリアスな社会派映画に見えるこの作品、実はとんでもない皮肉があちこちに込められているのがだんだんわかってきます。
チェイニー副大統領の時代にニュース報道で見聞きし、当時のアメリカの国防や外交政策の表舞台に出てきたご存知の政治家たち。
ラムズフェルド、ジョージ・W・ブッシュ、コリン・パウエル、コンドリーザ・ライス…。
これら政治家がもちろん実名で登場。なんと、顔と雰囲気がそっくり!
当時の政治や政策はあれで良かったの?というシリアスな疑問をうまく演出した、見応えのある映画となっています!
クリスチャン・ベールに拍手!
(このInstagram画像は、偶然にも主役のクリスチャン・ベールと、チェイニー副大統領の誕生日(1月30日)が冗談抜きで同じであることを伝えています。)
主役のクリスチャン・ベールはもともと端正でキレがあり、大好きな俳優です。
しかし、この映画では体重を20キロ増やして登場。
チェイニーが巨体を揺らせながら持病の心臓病で苦しんだり、レズビアンの娘に示す愛情など実に人間臭さを感じさせる場面もとても印象的です。
ぜひ、映画でご覧になって下さい。
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