とあるツイッターユーザーのつぶやきから
そんな「知って欲しい」の願いが込められたツイッターユーザー・ポインセチアさん(@poinsettia_noel)のあるツイートが大きな共感を呼んでいます。
「みんなちがってみんないい」世間にはそんな言葉があります。多種多様、理想的だし言うのはたやすい。でも現状は……。
知らないなら是非知ってほしい、そんな思いを乗せた言葉、つぶやき、文章が日々誰かから発せられています。少しでも多くの人に「知って欲しい」を届けたいと強く思うツイートはたくさんの人の共感を呼びます。
「息子は聴覚過敏で音の大小関係なく生理的に無理な音があるからイヤマフ常備してるんだけど『小さい子にヘッドフォンで音楽聴かせて!会話しなさい』と勘違いされた。騒音や嫌な音を和らげるだけで音を完璧に遮断してるわけではなく近くにいれば会話も出来るし音楽聴いてるわけじゃないよ」という言葉には、息子さん愛用のイヤーマフの写真が添えられています。
続くツイートで、「聴覚過敏だと、人によってはお手洗いの水洗音でも黒板を爪でひっ掻く音並みに不快だったりするし、大きい音はわりと平気でもモスキート音耐えられないって人もいる。息子は踏切や電車の音は平気でも、公共トイレにある濡れた手を風で乾かす機械の音とか無理なんだ」と特定の音に対する過敏性がある事を追記されています。
この出来事は、発達障害のうちのASD(自閉症スペクトラム障害)を持っている息子さんと一緒に電車に乗っていたときの話だそうです。
その後のツイートで、勘違いをした人に丁寧に説明して誤解を解くことができ、誤解していた人もそれ以上何か言うこともなくやや感情的になっていた事も落ち着かれた事、聴覚過敏を含め感覚過敏に対する当事者は結構いるだろうと思われるのに周囲の理解が進んでいないが為に同じ様な誤解をする人に遭遇する人が減って欲しいと思っている事、当事者の人たちからの共感や知ることが出来て良かったと言う反応に対する感謝やアドバイスに対するご自身の試行錯誤の結果、イヤーマフの使用に落ち着いたという事、「一見その場に似つかわしくない道具を持っている方がいてもそれはその人にとっては必要なものかもしれない事」に対する認知の広がりを願う内容の文章が画像で補足されています。
■感覚過敏と発達障害
「自閉症」と称されていた症状は今は「発達障害」という大きな概念の括りに置き換わっています。その発達障害は様々な精神感覚機能の突出や鈍磨、社会性獲得の困難、当事者本人の強いこだわりからくる適応困難感、集中力や感情など情動性に対する自己コントロールの困難感など全部挙げていくと膨大な情報量となってしまうので割愛しますが、モデルの栗原類さんがADD(注意欠陥障害)という発達障害の一つを抱えている事を公表したのは記憶にも新しいところです。
発達障害として先述のADDや「アスペルガー症候群」、学習障害などがよく知られています。こういった脳機能の特性があると特定の感覚が突き抜けて過敏になったり特性故に周囲に理解されにくい言動をしてしまったりします。
感覚過敏には特定の音に対する感受性が高すぎて周りが平気でいても当事者本人は耐え切れないという「聴覚過敏」や、色彩の過敏で映像に対して脳の処理が追いつかずに頭痛をおこしたり気分が悪くなってしまう「視覚過敏」、炭酸水の弾ける感じや特定の味、食感に対する不快感を強く感じてしまう「味覚過敏」、肌着の縫い目や服のタグが不快に感じたり繊維の感触が不快でタートルネックが着る事ができないなどがある「触覚過敏」、特定のにおいや鼻に入ってくる全てのにおいに対して敏感に反応しすぎて気分不快を引き起こす「嗅覚過敏」といった様に人間の五感全てにおいての何らかが突出して敏感になりすぎて社会生活に困難を抱える人が少なからずいるのが現状です。
しかし、こういった過敏症はアレルギー反応のように目に見えにくいものであり極めて個人的な感覚であるため過敏になっていない人は理解が追いつかず、感覚過敏がある人がつい我慢をして周りに合わせようとしたりという事が非常に多く、結果的に偏見を助長してしまう一因となってしまいます。
感覚過敏は感覚を通して入ってくる情報に対し脳がその情報の取捨選択が適切に行う事ができず、入ってくる情報をそのまま認知してしまう、つまり外からくる刺激に対して不要な部分をブロックし必要な部分をピックアップできない事に起因していると考えられています。
脳が処理を適切に行えないため、適切に処理しやすくするための補助が必要になってきます。その為に聴覚過敏のある人はイヤーマフを使ったりイヤホン型のノイズキャンセラーを使ったりして外部からの不要な刺激を遮断するようにしています。
これは筆者の長女の話ですが、音楽は大好きでよく動画サイトの音楽動画を見て曲に合わせて歌を口ずさむ事はできるものの、実際にライブ会場へ足を運ぶとその音の大きさにすぐに適応する事ができず、音に慣れるまで大好きなはずの音楽をヘッドホン越しに楽しむという事をしていました。母親としては周囲に誤解は確実にされると思ったので「この子は音に対して過敏な所があるのでヘッドホンを付けてます」とあらかじめ彼女の周囲にいる人に説明しました。幸い、「ライブ会場で他の音楽でも聞いてるのか」という様な言葉を浴びせられずに済む事ができました。授業中でも外の工事の音や黒板のチョークが当たる音、椅子を引く時の音などがかなり気になってて辛かったようです。
■感覚過敏への対処と周囲の理解を進めるための働きかけ
このように感覚というものは極めて個人的なものである為、周囲に理解を求めるのはなかなか難しいのが実情です。しかし、周知用のグッズやヘルプマークの応用、障害についてのリーフレットなどの広報材料を上手に用いる事で誤解を未然に防ぐことは出来るのではないかと思います。
例えば、イヤーマフに聴覚障害用のシンボルマークと共に「聴覚過敏で装着しています」の文字を入れるなどの「一目で大体把握できる」ものを目に留まりやすい位置(イヤーマフを例にとると耳が当たる場所などの広さがある部分)などに付けておくだけでも周囲が把握しやすくなるかも知れません。
当事者からの声は健常者といわれている人たちには知りえない世界をもたらしてくれます。周りへの理解を進めるためにも先述のツイートのような声をもっと拾い上げ、声が届かない層(ネットの情報を手に入れにくい高齢者や障害者、知識を持ち得ない人たち)に届けていくこともこの記事を読んでいる皆さんの役目の一つと考えています。
2017/10/2 おたくま経済新聞
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