歩行中は気がつかないようなわずかな道の傾きも、車椅子では障害になり得る。電動アシスト車椅子を手掛けるヤマハ発動機は21日、左右の傾斜がある道でも真っすぐ進める車椅子を東京大学と共同で開発したと発表した。電動モーターが進行方向のズレを修正、身体機能の衰えた高齢者や障害者でも外出しやすくする。電動車椅子の普及率が低い日本で手軽な電動アシスト付き車椅子を積極的に提案する。
「傾きのある道路では、谷側の方を強くこぎながら反対側を軽くブレーキをかけないと真っすぐ進まない」と話すのは、都内でヤマハ発の電動アシスト車椅子を使っているという梅津絵里さん。新開発の車椅子には「力も微調整もいらず大変助かる」と笑みがこぼれた。
ヤマハ発は手動の車椅子に後付けするユニット「JWX―2」と電動アシスト車椅子「JWスウィング」を9月29日から販売する。車椅子は人力と電動の2種類に分けられるが、同社は電動アシスト自転車「PAS」の技術をもとに、1996年から手でこいだ力をモーターが助ける電動アシスト車椅子を国内で唯一手掛けている。
ヤマハ発のアシスト機能はホイール内部にセンサーや速度計を搭載しており、進行方向を割り出す。手やモーターが車輪に伝えた力と異なる方向に進んでいる場合、モーターが自動で補助して直進を維持する仕組みだ。東大が進行方向の検出方法などを開発。ヤマハ発がユニットの機能に盛り込んだ。
他にもアシストの距離を従来比0.1〜2倍まで幅広く設定した。販売店などにある制御ソフトでアシストの能力は自由に設定できる。身体障害や高齢者の身体機能の衰えには軽重がある。このため、個人に合わせて調整可能なアシスト機能のある車椅子へのニーズは大きいという。
ヤマハ発と電動車いす安全普及協会によれば2016年の車椅子の国内市場は42万台だが、うち電動車は2万台程度。一方、世界市場(主要6カ国)では270万台のうち約2割が電動車だ。ヤマハ発は高齢化の進展などを背景に、手軽に使えるアシスト車の普及余地は広いとみている。JW(電動車椅子)ビジネス部の米光正典部長は「高齢化などを踏まえるとアシスト車を必要とするユーザーは増えていく。海外ではフル電動の車椅子も合わせ、普及に力を入れる」と話した。
後付けのJWX―2は35万3160円から。完成車JWスウィングは非課税で36万3000円。障害者が利用する場合、国の補装具給付を受けられる。高齢者の場合、レンタルで介護保険を利用できる。
2017/9/21 日経電子版
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