今回は、筋肉低下が老化に与える影響と、老化防止のために筋肉のケアをする方法をお伝えします。
筋肉量の低下は老化一直線!美容にも心の健康にも悪影響
老化防止は筋肉のケアから!筋力低下で起こることは?
健康目的でも美容目的でも、老化を防止したい方は、まずは筋肉の質を向上させることをおすすめします。顔の皮膚や内臓を支えているのは筋組織です。筋肉量が減ることで認知症や心肺機能の低下を招くことにもつながります。具体的に筋肉が衰えると、どのようなことが起こるのかお伝えします。
脳および精神への影響
・うつ病
・認知症
・閉じこもり
・睡眠障害
美容への影響
・インナーマッスルのゆるみによる下腹部の出っ張り、お尻のたるみ
・体幹が緩くなるので姿勢が前傾する
・頬や首のたるみ
・代謝の低下による肥満
骨格、筋肉への影響
・腰痛
・膝の痛み
・肩こり
・末梢の冷え
排泄関係の影響
・便秘など
この他にも、筋力が低下すると多くの弊害が起こってきます。
老化に関して知っておきたいサルコぺニア、フレイルとは?
老化が気になる場合、知っておきたいのが、「サルコぺニア」と「フレイル」の二つです。高齢者の筋力や、運動機能低下を示す言葉で、栄養不良や活動量の少なさ、疾患などが要因だとされます。サルコぺニアの予防には、たんぱく質の摂取や活動量の維持が必要不可欠です。サルコペニアやフレイルがあると、転倒による大きな事故につながることもあります。また、食事の準備や入浴など、日常生活に支障が出ます。
◆サルコぺニア
加齢によって筋肉量の低下、筋力低下、
身体機能の低下が認められる状態。
◆フレイル
加齢によって心身が弱った状態。
体重減少、疲れやすい、歩行速度の低下、
握力の低下、活動量の低下などが基準になる。
サルコペニアには複数種類があります。
・一次性サルコペニア:加齢性サルコペニア 加齢によって起きる
・二次性サルコペニア:寝たきり、あまり運動しないなど、活発でない生活スタイルが原因
・栄養不良性サルコペニア:病気や薬などで体に必要な栄養を吸収できない状態
筋肉を損傷し、老化をすすめる糖化とは何か?
加齢によって筋萎縮が起こることで生じるサルコペニアですが、その要因の一つに糖化があります。糖化の結果出来上がるAGEという物質が、骨格筋の筋力に悪影響を与えることが分かってきています。食後高血糖の人は血中の糖が余り、AGEの生成が盛んになるので、運動機能を保つためにも血糖コントロールが必要となります。食べすぎると、どんなに運動しても筋肉の質が下がって運動効果が上がらないのです。近年、加齢とともに増加する終末糖化産物(AGEs)の蓄積が、骨格筋のタンパク質の機能を変化させることが報告されている3)。AGEsはタンパク質、脂質および核酸が非酵素的に糖化されて形成される高分子であり、他のタンパク質に架橋を形成する特徴がある4)。骨格筋内に架橋が形成されると、骨格筋は硬化して筋力の低下を生じることが報告されている3)。さらに、AGEs は骨格筋量の減少を加速させることが、動物研究で明らかとされている5)
「皮膚組織における終末糖化産物の蓄積と 骨格筋量との関係」
糖化という現象は、肌のシミ、しわ、血管性疾患などにつながることが有名です。糖化は体の焦げ付きという呼ばれ方をします。糖化を引き起こすたんぱく質と糖の結びつきをメイラード反応といいます。メイラード反応は、食品中で起きる場合は食味の向上等良い方向に動きますが、人間の体内では負の減少のみ引き起こします。
糖化以外にもある老化のリスク。高齢者虚弱と咀嚼力の関係性
加齢による筋肉の萎縮、筋力低下の他に、歩けなくなる理由があります。体のバランスを取る能力の低下です。咀嚼する力と、歩行の時に体を支えるバランス感覚には大きな関わりがあるという研究があります。私たちのバランスを保つ感覚、平衡感覚は脳の前庭系という部分が司っています。あごの筋肉が動くことで、ここに良い影響があると言われています。また、頭を安定させる機能もあご周辺の筋肉が担っています。安全な場所で何も噛まずに目をつぶって片足立ちをしてみて下さい。続いて口の中に清潔な布などを入れて、奥歯で強く噛んだ状態で片足立ちをします。個人差はありますが、多くの場合後者の方が頭がぐらぐら動かずにバランスがとりやすくなります。頭を支える首や肩の筋肉とあごはつながっているのです。
アンチエイジングの常識は間違いだらけ!
科学的に老化防止の手法を検証する
運動は活性酸素が出るから、かえって老化するというのは本当か。サルコぺニアや腰痛の予防のためには、適度な運動が大切です。よく激しい運動は活性酸素が出て老化につながるという議論が出ます。いわゆる運動トレーニング、水泳などでは、かえって細胞を活性酸素から守る抗酸化力が高まることが分かっています。中等度の運動をしている人ならば、運動による活性酸素を気にする必要はそうないのです。適度な運動をしないのは、老化防止という観点からは損です。
活性酸素には、
・スーパーオキシド(O2・−)
・過酸化水素(H2O2)
・ヒドロキシラジカル(HO・)
・一重項酸素(1O2)
という種類があります。
活性酸素は、そのままですと、細胞や細胞内のエネルギー生成機関であるミトコンドリアに損傷を与え、酸化ストレスが生じます。ただ、私たちの体には、活性酸素を分解して細胞やそのほかの組織を傷つけない物質に変える力があります。明治大学の研究では、女性の方が運動をして生じた活性酸素の影響を受けにくいことが分かりました。運動の末に獲得できる抗酸化力は男性の方が高いという結果が出ています。どうしても活性酸素が気になるという方は、ビタミンEの欠乏が活性酸素耐性に影響すると言われていますので、ビタミンEを摂取しても良いでしょう。ただし、抗酸化目的のサプリメントは、激しい運動をする人が短期的に使うことが推奨されています。
アンチエイジングの味方、プロテインが体に悪いというのは本当か嘘か
ダイエットや筋力トレーニングの際、たんぱく質の摂取に使われるプロテインについて、体に悪いという噂があります。過剰摂取した場合、体に残ったたんぱく質が腎臓や肝臓に悪影響を与えるというのです。厚生労働省によると、たんぱく質の上限摂取量は定められていません。たんぱく質の上限摂取量が設けられていない理由は、国内の様々な論文を検討した結果、過剰摂取による重大な健康被害がなかったというものです。また、高齢で摂食量が少ない人ほど、必須アミノ酸、たんぱく質の摂取を心がけないといけないという報告もあります。 活発に活動し、摂食量が多い人では容易にたんぱく質必要量を満たすことができ、また、たんぱく質の質の重要性も低い。しかし、不活発な人、高齢者などでは、食事に注意しないとたんぱく質、その他の栄養素不足を招きやすい。たんぱく質必要量と身体活動の関係について、運動不足は体たんぱく質異化状態を招き、適度の運動は食事性たんぱく質の利用を高め、一方、激しい運動はたんぱく質分解を亢進させることから、運動強度に応じてたんぱく質必要量は U字型を描く 5)。また、小児や成人を対象とした研究において、適度の運動が成長を促進し、食事性たんぱく質の利用を高めることも報告されている 6,7)。一般に、運動時には発汗による経皮窒素損失量が増大し、アミノ酸の異化亢進、体たんぱく質の合成低下と分解上昇がみられる。しかし、運動終了時以降に、体たんぱく質の合成が分解を上回るようになり、損失を取り戻すことが多い。なお、軽度ないし中等度の運動(200〜400 kcal/日)を行った場合には、たんぱく質必要量は増加しないことが報告されている 8,9)。
「たんぱく質」
たんぱく質は過剰摂取による健康被害の報告があまりないとはいえ、闇雲にプロテインを飲んでも、筋肉量は上がりません。過剰摂取はサプリメントの無駄遣いになるのでやめましょう。
『酒は百薬の長』は老化・糖化の観点からいうと健康に悪い?
「酒は百薬の長」といって、健康のために飲酒を勧める人がいます。しかし、過度の飲酒は、全身特に内臓を支える筋肉にも悪影響を及ぼします。従って高血糖の持続は糖化ストレスを亢進させる。また,アルコールの過剰摂取,極端なダイエットなどによって体内にアルデヒドやケトンが高濃度に生成している状態も糖化ストレスが強い
「糖化ストレスと抗糖化作用の評価」
アルコールは分解されるとアセトアルデヒドという物質を作ります。アセトアルデヒドが糖化をすすめる要因になります。多量の飲酒に伴って、筋肉にけいれんや筋力低下が起きる場合は、アルコール性の脳の疾患や、ミオパチー、アルコール性筋症等が疑われています。
老化を防ぐためには糖質制限が有効という話は本当か
生活習慣病や、肥満の防止にために糖質制限をする人が増えています。過度な糖質制限は老化の防止になるどころか、寿命を縮める結果になりかねないと言われています。極端な糖質制限ダイエットは、糖化、体の焦げ付きを早めるケトン体を作り出す要因になるので、アンチエイジングにはマイナスです。糖質制限を長期的にした場合、冠動脈疾患などによる死亡リスクも高まります。私たちは糖を代謝して、体や心のエネルギーを作り出しています。しかし、糖が無くなると今度は脂肪を代謝してエネルギーを生み出そうとします。脂肪を分解する段階でケトン体を作ってしまい、体の糖化が進むと考えられています。糖尿病や糖質の過剰摂取の傾向がある人が、短期間栄養士や医師に指導を受けながら糖質制限をすることは有効です。治療や健康促進の目的で糖質を制限するときにも、最低限の糖を摂取する必要があります。総摂取エネルギーのうち、50パーセントは糖質、すなわち炭水化物からとることを心がけましょう。
老化防止のための筋力アップの心得とは
運動はケーゲル運動など軽い動きから始めてアンチエイジングをする
急な運動は、筋線維の損傷や血圧・血糖の急降下等を招くので危険です。アンチエイジングのための運動はゆっくり動かすことが基本です。女性のアンチエイジングとしておすすめなのが、骨盤低筋群の増強です。将来的な尿もれ、排便の障害、腰痛、ひざの痛み等の軽減のために、中高年にはケーゲル運動がすすめられます。骨盤底筋群は膣や膀胱を支えている「体の底」に当たる筋肉の集まりです。
ケーゲル運動の手順を以下に示します。
1 足を肩幅に開き、視線を前方に定める
2 背中、肩、腹部の力を抜く
3 肛門、膣をきゅっとしめるつもりで力を入れて数秒保持し、力を抜く
いまあげた手順を気が向いた時に繰り返すだけなので、体力がない方でもできますよ。骨盤低筋群は、排泄のコントロールから姿勢の維持等も担う筋肉ですから意識して使いましょう。
食事では必須アミノ酸を重点的に摂取することが重要
主食はできれば玄米など精白していないものにしましょう。玄米は、必須アミノ酸のうちリジン以外をすべて含んだ栄養価の高い食品です。リジンを多く含む大豆と組み合わせると理想的な食卓になります。必須アミノ酸、たんぱく質の仲間は筋肉を作るほか、脳の働きを支える役割を持ちます。神経伝達物質の一つであるセロトニンの原料であるトリプトファンなどが好例です。
お酒に関しては、自制が出来ない場合は飲まないのが老化防止の基本
老化を防ぐということならば、お酒は最初から飲まないという決断をすることが望ましいです。酒は血糖値を一時的に下げる等の効果も認められています。しかし、食欲の増進による糖、塩分の過剰摂取、依存症などのリスクがあります。飲酒量をコントロールする自信がない人は、すっぱりと断酒してしまう方が、脳や筋肉、血管への影響を抑えられます。
老化防止で注目されている咀嚼力。歯科治療やデンタルケアの習慣を幼少期からつける
将来的に、介護を予防したいのなら、噛み応えのあるものを食べ咀嚼力をつけることが大切です。また、お子さんの爪噛み指しゃぶり、頬杖は歯並びが悪くなる原因になります。歯並びが悪くなるときちんと噛んだり飲みこんだりすることが出来ません。早期に専門医に相談しましょう。
他に出来る工夫としては、
・歯を失う要因になる歯周病は早期に治す
・横になってスマホやタブレットなどを見ない
といったことがあります。
また、嘔吐や胃酸が上がってくる呑酸がある方は口腔内の細菌バランスが崩れやすくなるので治療をきちんとしましょう。
老化防止をしたいのならば、体の内側、筋肉を重視しよう
普段から適度に体を動かしたんぱく質を多く摂取することで、筋肉量の減少による老化は防げます。排泄や歩行に支障が出ると、生活の質が一気に低下しますので、若年のうちから、正しい生活習慣を心がけましょう。今回お話ししたサルコペニアやフレイルは、体ばかりか、外に出ない・人と関わらない等の心の老化に繋がります。現代の「健康」のとらえ方は、病気がないという意味ではありません。「健康」の意味は病気があっても社会的なかかわりを持ち、自分の居場所や役割があるという状態を示す方向にシフトしています。
https://macrobiotic-daisuki.jp/roukaboushi-muscle1130-224866.html?fbclid=IwAR3eVi1LM7d2o-q85qXD3dbvWD-Aueyw8scDcQaKL1L7VL7o27xbwEaOlpw
<コメント>
やはり筋トレは最高です!