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2019年01月19日

プロボクサーを目指していた頃の話(後編)

前編はこちら。

仕事が終わると畑中ジムで汗を流す。仲間もでき絶好調だったあの頃、会社から出向命令が出た。当然断る意思を示したのだが、上司から「断るのなら会社を辞めてもらうしかない」という意味の言葉を浴びせられた。高卒で入った初めての会社だ、当時は辞める勇気がなく渋々出向先の滋賀県に向かう。

出向先はこれまでの単純労働とは違い工場で使用する自動機を組み立てる作業だった。覚えることが多いことやここの人達にもあまり馴染めず嫌々仕事に行く毎日が続いた。ネット検索など存在しない時代、残念ながらこの地にボクシングジムが存在するのかどうかも分からなかった。体力だけでも維持しようと近くの空手道場に通い、出勤前には走り込みを行っていた。

そんな日々が2ヶ月ほど続いたある日、ボクシングマガジンを見ていると京都にボクシングジムが存在することを知った。このジムは昔やっていた「マネーの虎」というテレビ番組に出演したボクサー「薩摩氏」が所属していた塚原京都ボクシングジムである。



仕事後、1時間以上掛けてこのジムに通うようになった。このジムの特徴はジャブとワンツーができるようになるとすぐにフック、アッパーを教わる。準備体操、外で縄跳び、シャドウ、サンドバック、リング内でシャドウ、隣の建物の器具で筋トレをして帰宅する毎日。

◆スパーリングの思い出
2ヶ月が経つとトレーナーからミット打ちをしてもらえるようになり、スパーリングをやってみないか?と声を掛けられる。最初の相手はレベルが同じような人と「ジャブ」のみという条件で行うマスボクシングの延長みたいなものだった。相手はプロでもないのでパンチがよく見えたもののけっこうパンチを食ってしまい帰宅後に軽い頭痛が起きた初スパーリングだった。

2回目は4回戦ボクサーが相手だった。ただし、レベルが違い過ぎるため彼はジャブのみという条件で行った。プロボクサーのパンチはどんなものか受けてみたいと思っていたので1ラウンド目は相手の距離に入りジャブを食らい続ける。初回の相手とはスピードがまるで違いパンチが見えたと思ったら自分の顎にヒットしている状態、トレーナーが「相手の距離に入るな!ガードを上げろ!」との声が飛ぶ。

予期せずにパンチを食らうと自然に「ウッ!」と声が出た。それでも相手の距離でパンチを受け続けると段々心地よいというかフワフワした感じになってきた。自分はジャブ、ワンツーしか出せず当然プロには当たるはずもなくラウンドが終わった。たったの3分なのに激しく息切れするくらい疲れ果てる。。。これがボクシングなのかと実感した。

次のラウンドはしっかりガード上げてまともにパンチを貰わないよう気を付ける。相変わらずジャブ、ワンツーで攻撃していたがそろそろ他のパンチを出さなくては思い、ワンツーからの左フックを打つと相手の顎に当たり一瞬後退した。まさかのパンチが当たった事実にビックリして追撃が出来なかった。

トレーナーから「攻めろ!」と言われ相手のジャブが出ない接近戦で攻め続けたが有効打はなくスパーリングが終了した。相手の人はヘッドギアを付けていなかった(付ける必要のないほどのレベル差)ので口から出血しており洗面所でうがいを続けていた。相手が気を抜き過ぎてラッキーパンチが当たっただけのことだがこのスパーリングで自信を付けた。

3回目のスパーリングはプロかどうか分からないがサウスポーが相手。やたら距離を詰めてきて防戦一方となるがガードをしっかりしていたためそれほど効くようなパンチは貰わなかったが、初のサウスポーに戸惑ってしまいあまり手を出せずに終わる。

4回目がボクシング人生最後のスパーリングとなり相手は何回戦かは知らんがプロで、2回目の相手とは違い制限なし、アウトボクサータイプのようでスピードがあった。顎だけは打たれなようしっかりガードしていたがジャブで空いている目の上を狙われる。ストレートやボディもけっこう食らったが2回目の相手より明らかにパンチ力がなく打たれても利かなかった。

攻撃面では全く歯が立たずジャブさえも当てることができずに終了、目の上をカットし出血していた。何もできなかった自分が情けなくなり帰宅後、寮部屋の壁に物を投げつける。このスパーリングの後日、交通事故に遭いジムに顔を出したのは約1ヶ月後。

トレーナーがさっそくスパーリングやるか?と声を掛けてくるも断り続ける日々。。。ブランクの間に打たれるのが怖くなってしまったのだ。それ以降、徐々にジムに行く回数が減って行きボクシングへの情熱が無くなってしまった。その頃、会社の方も責任のある仕事を任されてしまい重圧に負けて退職した。

プロになることができず中途半端だったボクシングだが、一生忘れられない経験として自分の中に刻まれている。
posted by ゲーリー at 13:54 | 日記
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