・船頭さんの外国語の舟歌が評判となっている
・日台観光サミットで台湾からの訪日客への拡大を図る
山形県の最上川クルーズが、外国人旅行者の人気コースになっている。
船頭が舟歌を唄うのも、アトラクションの1つ。日本語だけではなく、中国語、英語、フランス語バージョンがあり、外国人にも好評だ。フランス語は平成27年に新しく加わった。
最初は、台湾人向けに中国語でやったのが始まりだ。
最上川クルーズを楽しむ外国人は、台湾からの団体旅行者が圧倒的に多い。それは、山形県全体に言えることだ。
なぜ、台湾人が多く訪れるようになったのか。
県の観光交流課の担当者に取材した結果、思い当たる理由がいくつか見つかった。
山形県の観光資源は豊富にあるものの、点在しているため「個人旅行者」だと2次交通の問題で訪問しづらい。一方、バスで巡る「団体旅行者」には向いている。しかし、中国からなど初めて訪日観光する方々には、やはり東京〜大阪間のゴールデンルートが一般的だ。いきなり東北の山形県ではハードルが高い。つまりリピート率が高く、なおかつ団体旅行のシェアが見込まれる地域。そうなれば断然、台湾となる。
台湾からのチャーター便も多く、山形県への入込客数を押し上げている。さらにNHKで放映された「おしん」の故郷として、台湾では広く知られている。
山形県が発表した外国人旅行者受入実績調査によると、平成26年の外国人旅行者の入込客数は、68,217人で対前年度比137.1だ。その内訳は、1位が台湾で、33,584人と半数近く。2位の中国が5,087人、3位の韓国が4,603人で、いかに台湾が多いかがわかる。
これは、昨年に限ったことではなく、平成19年は、全体が64,570人のうち、台湾が41,229人と圧倒的なシェアを持っていた。
また、台湾のうち、団体は約8割を占めるのだ。
「2015日台観光サミットin山形」が5月29日に山形市のホテルメトロポリタン山形で開催された。吉村知事によるトップセールスなど長い交流実績が実ったといえる。東北開催は初めてだ。
日台観光の現況報告、交流拡大への意見交換を行い、日本と台湾の相互交流人口を500万人に伸ばすため、双方が観光客の地方分散に取り組むことなどで合意した。
会議後、参加者は銀山温泉(尾花沢市)、加茂水族館(鶴岡市)などを視察し、さくらんぼ狩りや最上川舟下りなどを体験した。
やはり山形観光には、最上川クルーズがはずせないキラーコンテンツだ。
ところで、なぜ最上川クルーズが人気なのか。
山形県の観光交流課の担当者によると、山寺や銀山温泉のある内陸部の観光地から、日本海側の酒田や鶴岡のある庄内地方に向かう際に通るのが最上川だ。移動日にあたるところを、舟下りで盛り上げる仕掛けになっている。
海外の旅行会社やメディアを招いたファムツアーを実施すると、最上川クルーズを入れる。その際に船頭さんたちが多言語対応に取り組んでいるため、より理解が深まるという。
パンフレットは、中国語(繁体、簡体)、韓国語、英語、フランス語を揃え、乗船の際に国名を書いてもらい、それに応じてパンフレットを配布。景観の解説、舟歌の解説、芭蕉についての解説がある。
最近のフランス語の導入事例だとこうだ。
まずは、日本語の舟歌を地元の大学の先生に翻訳してもらう。
それを地元の民謡会に持っていき、歌の節回しにおさまりよくそろえる。
それで、フランス語の歌詞が完成するのだ
船頭さんは、20代から70代と幅広く、全部で40名在籍している。
歌の研修会を開き、外国語での舟歌を練習する。川下りで目にする自然の魅力に負けないように、舟歌の練習に余念がない。
朝礼では、外国語版を含め必ず舟歌を練習する。
船頭になるには、民謡会でしっかり稽古をつけてきて、合格をもらえないと働くことができない。
最上川では、春の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色と四季を通じて舟下りができるのが強みだ。冬は船にコタツが装備され防寒対策をしている。
台湾からの訪日客は、以前は団体旅行が多かったが、数年前から個人旅行が逆転していて、今も伸びている。
最上川クルーズは、台湾の団体旅行客に依存せず、諸外国からの集客を目指して、まずは多言語対応を始めたのだ。
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