EVE2です。
ジャクソンホール会議がありました。つい最近、経済学の重鎮ジョセフ・ステグリッツ氏が来日し、現在のインフレへの対応を批判していたことから、政策に変更がないか注目をしましたが、前回の講演と変更はなかったようです。
それでは、FRBのホームページから「ジャクソンホールのパウエル講演」が提供されていましたので、気になったところだけ抜粋しましたのでその内容を確認していきましょう。
[2023年8月25日 ジャクソンホールのパウエル講演和訳抜粋]
〜前文省略〜
❶さらなる進歩を促進する可能性が高い要因を理解するには、コア PCE インフレの 3 つの広範な構成要素、つまり商品のインフレ、住宅サービスのインフレ、および非住宅サービスと呼ばれることもあるその他すべてのサービスのインフレを個別に検討することが有益です (図 2 )。
〜中略〜
❷最後のカテゴリーである非住宅サービスは、コア PCE 指数の半分以上を占め、ヘルスケア、食品サービス、交通、宿泊施設などの幅広いサービスが含まれます。このセクターの 12 か月のインフレ率は上昇以来横ばいに推移しています。しかし、過去 3 か月と 6 か月にわたって測定されたインフレ率は低下しているが、これは心強いことである。非住宅サービスのインフレがこれまでのところ小幅に低下している理由の1つは、これらのサービスの多くが世界的なサプライチェーンのボトルネックの影響をあまり受けておらず、一般に住宅や耐久財などの他のセクターに比べて金利の影響を受けにくいと考えられていることにある。これらのサービスの生産も比較的労働集約的であり、労働市場は依然として逼迫しています。このセクターの規模を考慮すると、価格の安定を回復するには、ここでのさらなる進展が不可欠となるでしょう。
〜中略〜
❸見通しに目を向けると、パンデミック関連の歪みがさらに緩和されることで引き続きインフレにある程度の下押し圧力がかかるはずだが、制限的な金融政策がますます重要な役割を果たす可能性が高い。インフレ率を持続的に2%に戻すには、一定期間の経済成長がトレンドを下回る期間が必要となるほか、労働市場の状況がある程度軟化することが予想される。
〜中略〜
❹このリバランスにより賃金圧力は緩和された。賃金の伸びは、さまざまな指標において、徐々にではあるものの鈍化し続けています。名目賃金の伸びは最終的には2%のインフレと一致する速度まで減速する必要があるが、家計にとって重要なのは実質賃金の伸びである。名目賃金の伸びが鈍化しているにもかかわらず、インフレ率の低下に伴い実質賃金の伸びは増加している。
〜中略〜
❺こうした従来の政策不確実性の原因に加えて、このサイクルに特有の需要と供給の混乱は、インフレや労働市場の動態への影響を通じてさらに複雑さを引き起こしています。例えば、これまでのところ、失業率は増加することなく、求人数は大幅に減少しています。これは非常に歓迎すべきことですが、歴史的には異例の結果であり、労働力に対する大規模な過剰需要を反映していると思われます。さらに、インフレがここ数十年に比べて労働市場の逼迫に敏感になっているという証拠もある。このような変化する力学は持続する場合と持続しない場合があり、この不確実性は機敏な政策立案の必要性を強調しています。
〜以下省略〜
■Inflation: Progress and the Path Ahead(FRB) 訳Google
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20230825a.htm
出典元:
❶商品のインフレ、住宅サービスのインフレ、および非住宅サービスと呼ばれることもあるその他すべてのサービスのインフレを個別に検討することが有益だとし、商品インフレでは、自動車を例に出し、物価は安定してきたことを強調しています。
❷非住宅とは、多分住宅以外の全てだと思うのですが、それについては、ここ数カ月下方に向けて横ばいで落ち着いてきていると見ていると思われます。しかも、今回の金利上昇の影響をほとんど受けることがないと考えているようです。そのため、経済学の重鎮ジョセフ・ステグリッツ氏のいうように、金利を下げるまでは考えていないと言っているように感じました。但し、状況は良くなってきていますが、非住宅がコアPCE指数の半分以上を占めているため、引き続き下げることを期待しています。
❸❹❺労働市場は現在も逼迫しており、その逼迫は、インフレに寄与しているととらえることができます。その主因として、労働市場は落ち着いてきてはいるものの、その落ち着きは、物価の下落に追いついてはおらず、実質賃金の上昇を招いています。その実質賃金の上昇は、消費へと向かい、インフレを下落から上昇に向かわせる可能性があることを指摘しています。
ジャクソンホール講演の内容をChatGPTにまとめてもらいましたので、紹介します。
❶インフレの現状と目標
FRBの仕事は2%のインフレ目標を達成すること。過去1年で政策を強化し、インフレは低下傾向だがまだ高い。
❷インフレの進展と要因
パンデミックと需要・供給の歪みによる高インフレ。供給・需要の調整により抑制。価格の低下が進行中。
❸コア PCE インフレ
食料・エネルギーを除くインフレも高水準。持続的進展を確認するには時間が必要。
❹住宅セクター
金利に影響される。金融政策の効果で住宅価格低下。家賃も低下。
❺非住宅サービス
インフレ率の低下傾向。サプライチェーン影響少なく、金利の影響も限定的。
❻経済成長
金融政策の引き締めにより成長が鈍化。しかし、予想よりも経済は強調。
❼労働市場
労働力供給改善。求人数は減少傾向。賃金圧力緩和。実質賃金は増加。
❽今後の方針
2%インフレ目標維持。金融政策の影響評価複雑。政策の不確実性とリスク管理が重要。
❾結論
データと見通しに基づいて進捗状況評価。物価安定が重要。労働市場状況の持続的改善のためには物価安定が不可欠。
[2023年8月25日 ジャクソンホールのパウエル講演和訳の考察]
AD-AS曲線で考えた場合、引き続き、AS曲線が右にシフトする可能性があるため、監視が必要で、必要に応じて再度の利上げを考えているということらしいです。
AD曲線は、金利に影響されることなく、安定しているが、いっそうの左へのシフトが望ましいと思っているらしい?
[過去のジャクソンホール会議の講演からの考察]
去年の、2022年8月27日の講演の時と比べるとかなり、中身が薄いという印象を持ちました。
去年のジャクソンホール会議では、意訳すると以下のようなことを言っています。
労働者の需要が供給を大幅に上回っており、それにより生じる高インフレの重荷は、それを負担する能力が最も低い人々に最も重くのしかかる。そのため、FRBは、グリーンスパン元FRB議長の言葉を借りれば、物価水準の予想される変化が十分に小さく緩やかで、企業や家計の財務上の意思決定に重大な影響を与えないぐらい物価を安定させる。そのために、FRBは、「やり遂げるまでやり続けなければならない」といった発言がありました。
興味深いのは、この講演で引用された1979年の大インフレの最中のポール・ボルカー元議長の発言です。
「インフレはそれ自体を餌にしている。だから、より安定した、より生産的な経済への回帰の仕事の一部は、インフレ期待の支配を解くことでなければならない」。
ようは、インフレを望んでいる人たちもおり、それを早期に収束しないと持続的に高インフレの状態が続くということらしいです。実は、高インフレの時代があったらしいですね・・・。私は知りませんが・・・?
以上の原文も、ChatGPTに意訳をお願いしました。
ジャクソンホール会議では、経済変化や不確実性について幅広いテーマ議論。FOMCは2%目標のインフレ率引き下げ重要。価格安定は経済基盤、特に労働市場に影響。高インフレは弱者への負担大。回復には時間かかるが需要と供給バランス改善へ努力。金利上昇、成長鈍化、労働市場緩和はインフレ低下と痛みを招く。米国経済は高成長から減速。労働市場は好調だが需要過多でバランス崩れ。インフレ率高いが7月の低下は短期的。インフレ2%に戻すため引き締め続く。金融政策は慎重で将来の見通し次第で変更。インフレ回復には制限的政策必要。過去からの学びで中央銀行の役割重要。将来のインフレ期待も影響大。高いインフレ期待は安定困難。インフレコントロールは持続的な努力。引き続きインフレ対策進行中。
まっ、ChatGPTの方が全文を網羅しているようです。時間がない人は以上を参考とし、時間がある方は、下記に原文のURLを記載しておきますので、ご参照ください。
[あとがき]
印象としては、かなり安定してきており、念のために金利引き上げという手段をFRBは保持しており、状況に応じて迷うことなく実行すると言っているようです。
この講演の内容を受けて、今週月曜日からは、アメリカ、日本の市場とも株価は上昇しています。なんとなく、納得しますね?
では、また!
■Inflation: Progress and the Path Ahead
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20230825a.htm
■ジャクソンホールのパウエル講演和訳全文(マネリテ)
https://manelite.jp/jh/