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夏に読みたい「冷たい方程式」

 SFというものは長ったらしいものが多い。どうも他ジャンルに比べてそういった傾向があることは否めない。しかし、そういうものの中にこそ傑作があるのもまた同ジャンルの特徴である。
 だが、長いという一点だけでも読者からは敬遠されがちになってしまうものだ。面白いのにと思っても、他人には勧めづらい。多くのSF者の抱える密かな苦悩である。
 しかし、短いSFが詰まらないかというと決してそうではない。特にトム・ゴドウィンの「冷たい方程式」という短編は、以前に古今のSFの中から最高傑作を決めようというある読者投票のベスト100ラインキングにおいて、他の99の長編作品の中に混じって唯一短編作品でランクインしたことがあるほどの傑作である。
 その内容の衝撃は以後の作家に多大な影響をもたらし、この作品にヒントを得たいわゆる「方程式もの」と呼ばれる多数の作品がSFの中においてサブジャンルとして確立されてしまうほどであった(ジェイムズ・パトリック・ケリー「恐竜たちの方程式」、梶尾真治「フランケンシュタインの方程式」、栗本薫「なまこの方程式」、草上仁「ダイエットの方程式」、最近ではミステリの分野の石持浅海「黒い方程式」など他多数)。
 ざっくり説明すれば、閉鎖的環境の中にイレギュラーが出現し、それの排除とそれが困難な(主に)人道的な理由との間で立ち往生してしまい、その解決までが描かれるといった流れが方程式ものの基本である。
 しかも興味深いことに、方程式ものの始祖であるトム・ゴドウィンは「冷たい方程式」以外にはこれといった傑作を残していない。一発屋とも言えそうな存在であるが、この一発が果てしなく大きな破壊力を持っているのである。作品の誕生から70年も経った今では内容の粗も目にはつくが、その面白さ他ではなかなか味わえない類のものだ。
 同作品が収められたハヤカワ文庫の「冷たい方程式」にはロバート・シェクリィ「徘徊許可証」、アイザック・アシモフ「信念」など全9作品の傑作が収録されており、一冊で大きな満足を得られることだろう。提携書店での受け取り無料というサービスがあるHonya Club.comを利用すれば、入手も容易である(なにしろ、ハヤカワ文庫は書店ではあまり多くの取り扱いがなされていないことが多い)。
 普段SFに触れる機会がない人にこそ、その入り口として是非「冷たい方程式」を読んでみて欲しい。

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