2018年01月17日
落語絵本『じゅげむ』
今回紹介する絵本は川端誠さんの落語絵本『じゅげむ』です。以前紹介した、『めぐろのさんま』と同じシリーズの絵本です。
『じゅげむ』は落語の中でも特に有名な演目だそうで、一般教養として知っておくべきお話だそうです。
(とかいいつつ、私はこの絵本を読むまで詳しい話は知りませんでした…)
ある夫婦に男の子の赤ちゃんが産まれました。せっかくなら、おめでたい名前をつけてもらおう、と物知りの和尚さんのところへどんな名前がいいか相談に行くことにしました。
「鶴は千年生きるというから、鶴太郎、鶴之助というのはどうじゃ」
「たった千年じゃ可哀想だ、もっと長いのはありませんか」
「では万年生きるという亀は?」
「万年でもかわいそうだ、もっと長いのは?」
「では寿限無はどうじゃ?『寿(ことぶき)、限り、無し』と書いて、限りなくめでたい名前だよ」
「おお、それはいいですね。他には?」
「『五劫(ごこう)のすりきれ』といって、3000年に一度、天女が空から降りてきて羽衣で岩をこする。この岩がすりきれてなくなるのが一劫。これが五つもあるのだから、限りないのと同じじゃよ。」
子供の父親は次々に和尚さんにめでたい名前の候補を聞き出していきます。
「海砂利水魚(海の砂、水に住む魚は限りがないほどたくさんある)」、「水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)(水、雲、風のゆくすえはは限りがない)」などなど…
中には「食う寝るところに、住むところ」なんてものも。何でも人にはなくてはならない大切なものだから、ですって(笑)
他にも「パイポという国の、シューリンガンという王様とグーリンダイというお妃様にはポンポコピーとポンポコナーという二人のお姫様がいて、大層長生きだった」という話まで名前の候補に。
たくさん候補を出してもらい、覚えきれなかったので、和尚さんに紙に書いてもらい、家に帰ってゆっくり決めることにしました。
しかし、結局ひとつに選びきれず、全部を子供の名前にすることにしたのでした。
村では子供が産まれたお祝いに行こうにも、子供の名前を言えなければしかたがありません。村人みんなで集まって練習会が開かれました。
「せえの
じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょ、すいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ、くうねるところにすむところ、やあぶらこうじのやぶこうじ、パイポパイポパイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーの、ポンポコナーの、ちょうきゅうめいの、ちょうすけ。
ふ〜〜〜。」
大人たちは覚えるのに一苦労です。
こういうものは、大人よりも子供のほうが早く覚えてしまうもので、覚えた子供たちはさっそく赤ちゃんを見に行きました。
するとちょうど赤ちゃんは機嫌が悪く、ぐずっています。
そこで子供たちは赤ちゃんをあやそうとして、
「ほらほら〜、
じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょ、すいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ…(中略)… ちょうすけちゃーん、
いないいないばぁ!」
…と、長い長い名前を呼んでいる間に、赤ちゃんはすっかり眠ってしまっていました
さて、それから数年がたち、赤ちゃんはわんぱく盛りの男の子に成長していました。
その日も友達の金坊とチャンバラごっこをして遊んでいたのですが、ケンカになってしまい、金坊に殴られて大きなタンコブができてしまいました。
それを見た近所のおかみさん、あわてて家にかけこみ、お母さんに報告します。
「ちょっと、大変よ!おたくのところのじゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょ、すいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ…(中略)… ちょうすけちゃんが、
金坊とケンカになって、
金坊が、じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょ、すいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ…(中略)… ちょうすけちゃんを殴って
じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょ、すいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ…(中略)… ちょうすけちゃんの頭に大きなタンコブができちゃったわよ!」
…とにかく、名前が長いもんだから、説明するのもずいぶん時間がかかってしまいます
「えっ、うちのじゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょ、すいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ…(中略)… ちょうすけが!?
たいへん、お父ちゃんに知らせなくちゃ!」
お母さんもようやく理解して、あわててお父さんに報告に行きました。
「お父ちゃん、大変だよ!
うちのじゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょ、すいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ…(中略)… ちょうすけが、金坊と遊んでいて、…(以下同様)」
長い長〜い説明の後、お父さんもやっと理解しました(笑)
「なに〜!?金坊のやつ、とっちめてやる!」
そういって、皆で駆けつけてみると、二人はとっくに仲直り。タンコブも引っ込んでしまっていましたとさ。
この念仏のような長い名前、文字にするとすごいボリュームですね
絵本では、著者の配慮で名前が全て書かれているのは3箇所にとどめられています。(※上記あらすじでは、情景が分かりやすいよう名前を何度も出しています)
村人みんなで名前を覚える練習をしているところ、子供たちがぐずる赤ちゃんをあやすところ、お父さんが子供の名前を呼ぶところ。
巻末の著者のコメントにもありますが、それぞれ名前を呼ぶ状況が異なるので、読み聞かせをする場合はその状況に合わせて読むと、より一層聞き手にとっては面白いお話となります。
呼び慣れているお父さんはスラスラ流暢に、覚えたばかりの子供たちはゆっくり、たどたどしく…などなど、考えながら読めば、読み手ひとりひとりで違った雰囲気を味わえそうですね
話の内容が分かりやすく、年少さんくらいから理解できるのではないかと思います。途中で万葉集の俳句が出てきて勉強になる部分もあるので、小学校中学年くらいまで充分楽しめる内容です。
我が家では、子供と競争でどちらが先に覚えられるか挑戦しました。時々思い出しては暗唱して喜んでいます
オススメ度:4点(落語の導入として最適)
子供が喜ぶ度:3点(名前の暗唱競争で盛り上がります)
絵柄:2点(味のある絵だが、見開きの左右で場面が異なる書き方をしている箇所があり、混乱する)
総合得点:3点
対象年齢:年少〜小学校中学年くらい
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『じゅげむ』は落語の中でも特に有名な演目だそうで、一般教養として知っておくべきお話だそうです。
(とかいいつつ、私はこの絵本を読むまで詳しい話は知りませんでした…)
あらすじ
ある夫婦に男の子の赤ちゃんが産まれました。せっかくなら、おめでたい名前をつけてもらおう、と物知りの和尚さんのところへどんな名前がいいか相談に行くことにしました。
「鶴は千年生きるというから、鶴太郎、鶴之助というのはどうじゃ」
「たった千年じゃ可哀想だ、もっと長いのはありませんか」
「では万年生きるという亀は?」
「万年でもかわいそうだ、もっと長いのは?」
「では寿限無はどうじゃ?『寿(ことぶき)、限り、無し』と書いて、限りなくめでたい名前だよ」
「おお、それはいいですね。他には?」
「『五劫(ごこう)のすりきれ』といって、3000年に一度、天女が空から降りてきて羽衣で岩をこする。この岩がすりきれてなくなるのが一劫。これが五つもあるのだから、限りないのと同じじゃよ。」
子供の父親は次々に和尚さんにめでたい名前の候補を聞き出していきます。
「海砂利水魚(海の砂、水に住む魚は限りがないほどたくさんある)」、「水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)(水、雲、風のゆくすえはは限りがない)」などなど…
中には「食う寝るところに、住むところ」なんてものも。何でも人にはなくてはならない大切なものだから、ですって(笑)
他にも「パイポという国の、シューリンガンという王様とグーリンダイというお妃様にはポンポコピーとポンポコナーという二人のお姫様がいて、大層長生きだった」という話まで名前の候補に。
たくさん候補を出してもらい、覚えきれなかったので、和尚さんに紙に書いてもらい、家に帰ってゆっくり決めることにしました。
しかし、結局ひとつに選びきれず、全部を子供の名前にすることにしたのでした。
村では子供が産まれたお祝いに行こうにも、子供の名前を言えなければしかたがありません。村人みんなで集まって練習会が開かれました。
「せえの
じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょ、すいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ、くうねるところにすむところ、やあぶらこうじのやぶこうじ、パイポパイポパイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーの、ポンポコナーの、ちょうきゅうめいの、ちょうすけ。
ふ〜〜〜。」
大人たちは覚えるのに一苦労です。
こういうものは、大人よりも子供のほうが早く覚えてしまうもので、覚えた子供たちはさっそく赤ちゃんを見に行きました。
するとちょうど赤ちゃんは機嫌が悪く、ぐずっています。
そこで子供たちは赤ちゃんをあやそうとして、
「ほらほら〜、
じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょ、すいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ…(中略)… ちょうすけちゃーん、
いないいないばぁ!」
…と、長い長い名前を呼んでいる間に、赤ちゃんはすっかり眠ってしまっていました
さて、それから数年がたち、赤ちゃんはわんぱく盛りの男の子に成長していました。
その日も友達の金坊とチャンバラごっこをして遊んでいたのですが、ケンカになってしまい、金坊に殴られて大きなタンコブができてしまいました。
それを見た近所のおかみさん、あわてて家にかけこみ、お母さんに報告します。
「ちょっと、大変よ!おたくのところのじゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょ、すいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ…(中略)… ちょうすけちゃんが、
金坊とケンカになって、
金坊が、じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょ、すいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ…(中略)… ちょうすけちゃんを殴って
じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょ、すいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ…(中略)… ちょうすけちゃんの頭に大きなタンコブができちゃったわよ!」
…とにかく、名前が長いもんだから、説明するのもずいぶん時間がかかってしまいます
「えっ、うちのじゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょ、すいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ…(中略)… ちょうすけが!?
たいへん、お父ちゃんに知らせなくちゃ!」
お母さんもようやく理解して、あわててお父さんに報告に行きました。
「お父ちゃん、大変だよ!
うちのじゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょ、すいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ…(中略)… ちょうすけが、金坊と遊んでいて、…(以下同様)」
長い長〜い説明の後、お父さんもやっと理解しました(笑)
「なに〜!?金坊のやつ、とっちめてやる!」
そういって、皆で駆けつけてみると、二人はとっくに仲直り。タンコブも引っ込んでしまっていましたとさ。
この絵本の説明・感想
この念仏のような長い名前、文字にするとすごいボリュームですね
絵本では、著者の配慮で名前が全て書かれているのは3箇所にとどめられています。(※上記あらすじでは、情景が分かりやすいよう名前を何度も出しています)
村人みんなで名前を覚える練習をしているところ、子供たちがぐずる赤ちゃんをあやすところ、お父さんが子供の名前を呼ぶところ。
巻末の著者のコメントにもありますが、それぞれ名前を呼ぶ状況が異なるので、読み聞かせをする場合はその状況に合わせて読むと、より一層聞き手にとっては面白いお話となります。
呼び慣れているお父さんはスラスラ流暢に、覚えたばかりの子供たちはゆっくり、たどたどしく…などなど、考えながら読めば、読み手ひとりひとりで違った雰囲気を味わえそうですね
話の内容が分かりやすく、年少さんくらいから理解できるのではないかと思います。途中で万葉集の俳句が出てきて勉強になる部分もあるので、小学校中学年くらいまで充分楽しめる内容です。
我が家では、子供と競争でどちらが先に覚えられるか挑戦しました。時々思い出しては暗唱して喜んでいます
総評(5点満点)
オススメ度:4点(落語の導入として最適)
子供が喜ぶ度:3点(名前の暗唱競争で盛り上がります)
絵柄:2点(味のある絵だが、見開きの左右で場面が異なる書き方をしている箇所があり、混乱する)
総合得点:3点
対象年齢:年少〜小学校中学年くらい
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