2012年09月10日
25年間の凍結から復活した南極線虫
南極にすむ線虫は凍結・乾燥に耐えて、25年以上も生き延びる。
温度を上げたり、水を加えるだけで元通りに生き返るが、
その際に、ゆっくり凍らせたり、ゆっくり乾燥させた方が生存率が高まることが、
情報・システム研究機構(ROIS)新領域融合研究センターの鹿児島浩特任研究員や
国立遺伝学研究所・生物遺伝資源情報研究室の小原雄治教授、
国立極地研究所の神田啓史特任教授などの研究チームが明らかにした。
線虫は土壌にいる体長1ミリメートルほどの細長い糸状の生物。
研究チームは、1983年10月に南極の昭和基地周辺で採取され、そのまま25年6カ月間、
零下20℃の温度で凍結保存されていたコケ類のサンプル中から見つけ、よみがえらせることに成功した。
生き返った線虫(Plectus murrayi)は、水と寒天だけの極めて貧栄養の培地に生きる
南極由来の細菌をエサに増やすことができ、逆に、栄養の多い培地では死んでしまったという。
こうして数を増やした線虫を使い実験した結果、零下5℃で凍結・保存し、再び温度を上げて
回復させた場合の生存率は約85%、零下20℃では約25%、零下80℃では20%強だった。
零下5℃で凍結後、零下20℃で保存した場合は生存率約55%、零下5℃で凍結後、
零下80℃で保存した場合の生存率は20%弱と、ゆっくり凍結の方が生存率は高かった。
また、相対湿度98%でゆっくり乾燥させてから、加水し回復させた場合の生存率は75%近くだったが、
相対湿度76.6%でやや早く乾燥させた場合の生存率は50%ほどに低下した。
除湿剤のシリカゲルで相対湿度0%の条件をつくり、急速に乾燥させた場合の生存率は0%に近かった。
研究チームはさらに、線虫の持つ凍結耐性、乾燥耐性の遺伝子解析などにも取り組んでいる。
研究成果は「CryoLetters」(Volume 33, No 4 July/August 2012)に発表した。
サイエンスポータル(2012年9月10日)
http://scienceportal.jp/news/daily/1209/1209101.html 参考リンク:ROISのプレスリリース
http://www.nig.ac.jp/Research-Highlights/992/1101.html
参考リンク:CryoLettersに掲載された論文要旨
MULTI-DECADAL SURVIVAL OF AN ANTARCTIC NEMATODE, Plectus murrayi, IN A -20ーC STORED MOSS SAMPLE(英文)
http://www.cryoletters.org/Abstracts/vol_33_4_2012.htm#280