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2017年12月31日

大前研一 フランスとドイツから学ぶ真に安定した政治

東洋経済ONLINE より

大前研一 フランスとドイツから学ぶ真に安定した政治

大前研一が論じるポピュリズムの揺り戻し

マッキンゼー伝説のコンサルタントとして世界的にも有名な大前研一氏。日立製作所の原子力技術者からマッキンゼーに転職後、弱冠32歳にして『企業参謀』(プレジデント社)を上梓し、日本においてコンサルティングという仕事を根付かせた第一人者でもある。 御年73歳にしてますます血気盛んの大前氏の頭脳は、年齢と関係ない。「世界の独裁政権に共通するリーダーの挙動」(12月22日配信)に続き、今年で累計30万部を突破、シリーズ5冊目を数える著書『大前研一 日本の論点 2018〜19』から内容の一部をお届けする。

右傾化、独裁化にも、そろそろ揺り戻しがくる

近年、 大衆の不安や不満を利用するポピュリズムが台頭し、 世界は右傾化、 独裁化の傾向を強めてきたが、 そろそろ揺り戻しが出てくるのではないかと私は見ている 先駆的な動きが見えるのはヨーロッパだ。 たとえばイギリス。 2016年6月の国民投票でブレグジット (EU離脱) を選択したイギリスでは、 国民投票を実施したキャメロン前首相が 戦後処理をせずに 辞任してテリーザ・メイ首相が後を受けた。 「離脱を成功させる」 と決意表明したメイ首相は EU離脱の手順を規定した リスボン条約50条の規定に則って、 2017年3月にEUに対して正式な離脱通告を行った。 これで2年後には自動的にイギリスは EUから切り離されることがほとんど確定した。 国民投票前は 「移民を制限できる」とか 「ブリュッセル(EU本部)の言いなりにならないで済む」と 離脱のメリットばかりが持ち上げられたが、 ブレグジットが決まってからは あまりに大きすぎるデメリットが 徐々に明らかになってきた。 「出ていくのは勝手だが、払うものは払っていけ」 とばかりに滞納していた EU分担金7兆円の支払いを求められ、 「イギリスにいいとこ取りはさせない」 というEU27カ国の強固な結束ぶりを目の当たりにして、 イギリス人の心境は大きく変わってきたのだ。 再度、国民投票を行えば、 私の見立てでは6割以上がEU残留を選択すると思う。 メイ首相が賢明なリーダーなら 「国民投票をもう一度やらせてほしい」 と議会に諮った上で、 本当にブレグジットしてよいのかどうか、 もう一度、国民投票を実施して国民に問うたほうがいい。 EU残留という結果が出たら、 「申し訳ないが事情が変わった。離脱は撤回させてほしい」 と頭を下げればいい。 イギリスが離脱を取りやめたら、 EUからは非常に歓迎される。 なぜならイギリスが離脱に成功したら、 後に続こうとする加盟国が出てくるからだ。 北アイルランドやジブラルタルが EUでなくなれば国境問題が再び火を吹く。 イギリスがEUにとどまれば、 イギリスに進出している企業も安心する。 現状、 メイ首相は誰も望んでいないブレグジットの道を 交渉の技術で乗り越えようとしているが、 「離脱得は許さない」 というEU側の結束が緩まぬ限りは茨の道だ。 その過程で代償の大きさを イギリス国民が痛感して、 離脱を思いとどまる選択肢が 改めて出てくるかもしれない。 逆にイギリスがのたうち回って ブレグジットを果たしたとしても、 「結局、いいとこ取りはできない」 ということで離脱願望のある加盟国には いい見せしめになるだろう。 一方、 ブレグジットで揺らいだEUの結束を 強化する求心力になっているのが、 ドイツのアンゲラ・メルケル首相と フランスのエマニュエル・マクロン大統領である。 ドイツでは今年9月に総選挙(連邦議会選挙)を行って、 メルケル首相率いる「キリスト教民主同盟(CDU)」が 辛勝して、メルケル首相は4選されたが、 連立内閣の組成に苦労している。 一時期、 ギリシャ救済や寛大な難民受け入れ政策が 批判されて地方選などで苦戦したが、 難民問題が収束するとともに支持率も回復、 ドイツ経済も堅調で 安定感のあるメルケル首相への信頼感は とりあえず維持されている。

史上最年少で大統領に就任したマクロン氏

ドイツにとって アメリカは重要な同盟国だが、 国防費や貿易問題でドイツを挑発的に非難したり、 地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定から 一方的に離脱を表明したりした トランプ大統領を評価するドイツ人はきわめて少ない。 今年5月にイタリアで行われたG7サミットの後、 メルケル首相は 「他国に完全に頼ることができる時代は終わった。われわれ欧州人は自らの運命を自分たちの手で握らなければならない」 と演説したが、 「これからはアメリカに頼らないでヨーロッパの仲間とやっていく」 という決然とした態度もEU内では好感されている。 そのメルケル首相にとって 最良のパートナーになりつつあるのが フランスのマクロン大統領である。 フランスも極右政党の「国民戦線」率いる マリーヌ・ルペン氏が 支持を集めるなど右傾化していたが、 今年5月の大統領選挙では 中道無所属のマクロン氏がルペン氏との 決選投票を大差で勝利した。 39歳というフランス史上最年少で 大統領に就任したマクロン氏は パリ政治学院、国立行政学院という 官吏コースを卒業したエリート。 財務省や投資銀行勤務を経て、 オランド政権で大統領府の副事務総長、 経済産業デジタル大臣を務めている。 今年6月の総選挙では マクロン氏が前年に立ち上げた 新党「共和国前進」が圧勝して、 協力政党の「民主運動」と合わせると 6割以上の議席を獲得した。 日本で言えば 都議選を圧勝して都議会第1党になった 「都民ファーストの会」のようなもの。 「共和国前進」も「都民ファーストの会」も 立候補者は多士済々ながらほとんどが政治の素人だ。 マクロン大統領自身の 政治的な資質も未知数だが、 就任後は規制緩和やコスト削減などの 選挙公約を次々と俎上に載せて実行に移しているから 今のところ筋は通っていると思う。 オランド前大統領やサルコジ元大統領といった 前任者よりも フランス国民から尊敬と好感を持って 受け止められているのは彼が相当なインテリだということ、 それから25歳も年上の妻を いつまでも大事にしているという プライベートな一面も大きい。 これは フランス人からすれば相当な信頼感につながる。 しかし政治においては(歳費削減などの) 正しいことをすれば人気が落ちる。 しばらくは国民との心理戦になるだろう。

「メルクロン」といわれるほど良好な独仏関係

マクロン氏は フランス人を奮い立たせるような 演出にも長けている。 マクロン大統領が就任後初めて NATO(北大西洋条約機構)の首脳会議に出席した際、 最新に選ばれた国家元首として 先輩の各国首脳から迎えられるシーンがあった。 粋な計らいで フランス国歌の「ラ・マルセイエーズ」が流れる中、 マクロン大統領が NATOのリーダーたちのグループに近づいていく。 先頭にいたトランプ大統領の 正面方向にマクロン大統領が歩み寄ってきたので、 自分が最初に握手するつもりで トランプ大統領が両手を広げて出迎えると、 マクロン大統領は巧みなフェイントで 避けてまずはメルケル首相とハグ。 さらに他のリーダー数人と 握手してから最後にトランプ大統領と握手を交わした。 あれぐらい フランス人のプライドをくすぐる演出はない。 フランスのリーダーには珍しく英語が堪能で、 トランプ大統領や各国首脳と 英語で丁々発止とやる姿も フランス人には頼もしく映る。 マクロン大統領はEU支持派で、 移民や難民の受け入れにも肯定的。 当然、メルケル首相とは馬が合う。 メルケル首相もマクロン大統領を非常に重視していて、 何度も会談を重ねている。 メルケルとマクロンを重ね合わせた 「メルクロン」なる造語が登場するほど 独仏関係はうまくいっていて、 結束してEUを牽引している。 おかげでヨーロッパは非常に安定した。

「社会の分断」に対する反動がくる

イタリアでも EU離脱を掲げる極右勢力 「五つ星運動」が台頭して そのメンバーがローマ市長になったり、 イタリア3位のモンテパスキ銀行が 経営危機に陥ったりなど、 政治経済ともに流動化していた。 しかし、 ここにきて職権乱用や 側近の汚職問題が浮上したり 実務能力のなさを露呈したりなどして ローマ市長の人気は急落、 モンテパスキ銀行はEUの承認を得て 公的資金が注入されることになり、 第2のギリシャ化するリスクは遠ざかった。 今年3月に行われたオランダの総選挙でも 反EUや移民排斥を訴える極右政党の得票が伸びずに、 中道右派の与党「自由民主党」が第1党を維持した。 アメリカと対抗したときのヨーロッパは ロシアと接近しやすい。 アメリカの軍事力という後ろ盾がないまま ロシアと対峙するのはきついからだ。 バルト三国やポーランドなど ロシアを毛嫌いしている国もあるが、 ヨーロッパ全体としては ロシアに対する経済制裁を解いて、 新しい関係を模索することになるだろう。 マクロン大統領は就任演説で 「われわれの社会における分裂や分断を克服する必要がある」 と語った。 フランスをはじめ欧州各国で EUに対する向き合い方、 移民政策や経済政策などをめぐって国民の分裂、 社会の分断が浮き彫りになった。 これを克服し、繕っていくためには、 ヨーロッパが結束して立ち向かう必要がある。 社会の分断というものは トランプ政権を生み出したアメリカにおいても、 安倍一強体制が続いてきた日本においても進行してきた。 その反動は必ずやってくると思うし、 28カ国が政治・経済的に共同体を とにもかくにも運営してきたヨーロッパに 学ぶ知恵もあるに違いない。
長いこと 「正しいと言われること」を 選択してきた。 ヨーロッパでもアメリカでも 日本でもそうだ。 「正しいと言われること」は 「正しいと思うこと」と ちょっと違うことがある。 当然 「正しくないがこうしたいこと」とは 大きく違う。 「正しいと言われること」を選択していれば 大きな間違いはないが 時代が成熟して より多様化が進めば 確実に不満は増える。 「正しいと言われること」が行われた結果として 自分の生活が貧しくなったり 社会不安や 将来への不安がましたりすれば 「正しいと言われること」の価値は 急激に落ちる。 そして 「正しいと思うこと」を 見つける必要に迫られる。 自分の価値観を持つことが迫られる。 同時に多くの情報や 知識を持たなくてはならない。 しかし短期間では限界があるから その流れはとりあえず 右傾化と呼ばれる方向に 向かいやすい。 そして 右傾化に向かってみると 様々なところで 自分の首を自分で絞めるようなことになる。 我々はもうそれほど単純な世界に住んではいない。 そして マクロンのような イデオロギーにとらわれない 折り合いをつける政治の方向性に向かう。 もう右とか左とか独裁とか協調とか 言っている暇も場もない。 多少中身は異なるが 安倍政権の5年間も ある意味で 似ている面がある。 当初右傾化という声もあったが 実際の経済政策は 大いにリベラルで その度合いは どんどん加速しているように見える。 この場合の経済政策は 折り合いのための政策だ。 今はそれがとても大切だ。 こういった流れは 歴史の中では ある意味で必然的な流れだが 流れる方向は共通でも 実際に起こることの衝撃は それぞれの地域でけっこう違う。 確かにイギリスは結構ひどい目にあう。 EUはまだまだ成熟してはいないが 現状では止むを得ない面を多く持つ。 ヨーロッパは一体となって 折り合いをつけていかなくては 地域としての正常な安定はない。 アメリカは良い方向に向かう可能性もあるが 確実に分断された社会になっていく可能性も まだまだ大きい。 トランプを選択するという 社会実験の結果をどうこれからに生かすか ということだ。 トランプが良い大統領だとは思わないが トランプを選択するという実験は 有意義かもしれないと思っている。 それだけ 「正しいと言われること」から 「正しいと思うこと」に移行することは それなりの手間暇も労力もいる。
posted by sachi at 20:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治

和田政宗 メディアの方向性は大丈夫か

和田政宗ブログ より

和田政宗 メディアの方向性は大丈夫か

朝日新聞が小川榮太郎氏と飛鳥新社を訴えたが、 大新聞が ここまでしなくてはならないというのは 相当追い込まれているのではないか。 今年は、 一部新聞を中心に バイアスのかかった報道がなされ、 結局事実ではないと 証明された事例があった。 やるべき事実の検証を行わず、 一人の証言のみを拠りどころにした記事などである。 “安倍政権を追いこむ”など、 まず追及することや疑惑を作ることありきで、 ほとんど関係ない事実を 無理やりつなぎ合わせたり 社説などでバイアスをつけたりする手法は 極めて危険である。 もし疑惑があるのなら、 あくまで事実の積み上げによって追及すべきである。 過去、 満州事変において若槻内閣の事態不拡大方針を、 東京朝日新聞など 新聞各社はこぞって弱腰であると批判し 世論を作っていった。 この時は 軍事状況についての報道規制もあったが、 やみくもに新聞各紙は 関東軍などの行動を支持して 若槻内閣の批判を続け 事態拡大をあおった。 当時の満州での治安状況の悪化阻止や 満州族の独立などの視点は もちろん重要であり 私も必要性を感じるが、 満州事変においての新聞各社は 丹念な検証からの必要性というよりも、 まず突き進んだ関東軍などの 行動を支持するという 結論ありきの論調であった。 まず結論ありきの論調は危険である。 こうした過去に 新聞社は学んでないのだろうか。 一部新聞は戦前の批判を良くするが、 自分たちの過去は学んでないのだろうか。 私は今年を 「メディアが死んだ年元年」 と名付けているが、 メディア各社におかれては 今年の報道のあり方をしっかりと振り返り、 事実に基づいた正確な報道を 心がけるべきではないだろうか。 メディアの方向性に、 非常に危険なにおいがしてきている。
そもそも 事実の念密な検証も行わず 事実を軽んじ続けて 世の中に大迷惑をかけている 大新聞が 自らに向けられた 個人からの批判を 事実ではないと 提訴するのだから 笑ってしまう。 どれほどの有名人であったとしても 個人と 大手新聞社では 言論表現の機会と能力が 雲泥の差なのは誰がみても明らかだ。 事実でないなら事実でないことを 言論表現でしっかり社会に対して 証明する手段と機会が十分にありながら それを行わず 提訴に走ると言うのは 提訴することに 本来の意味以外のことを 求めていると思われても 仕方がない。 事実の重み知らようだが 恥の重みも知らない。 大手新聞社というハードの中にある 本来もっとも大切なはずの ソフトが ハードに対して あまりにも稚拙なのが あまりにおかしい。 まあその辺は 置いて置くとしても 問題は 朝日新聞のやり口が 慰安婦問題と同じだどいうことだ。 同じように 事実確認を徹底しないまま 結論ありきの姿勢での報道をやめない。 そしてその都度その都度 批判を浴びては言い訳をして 言い訳しきれなくなると 謝罪するのだろうが 繰り返していれば 反省も問題視もしていないのは 明白だ。 その姿勢が 中長期的に 継続可能だと 思っているのだろうか。 それとも その場限りなのか。 それとも もっと違った 我々の考えつかないような 特殊な価値観で 自分たちの立ち位置を捉えているのだろうか。 どちらにしても 来年の今頃朝日新聞はどうなっているのか 注視したい。 多分来年も何かやってしまう。 来年の暮れには また メディアの位置付けも それなりの変化があるだろう。 様々な情報の中で それぞれのメディアが どういう方向性で 存在意義を確立していくのか 伝える内容も含め そろそろ本気で考えなくては 誰も望まない方向に 行ってしまうのではないかと 危惧感はある。
posted by sachi at 15:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治
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