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2017年08月22日

「エリート」も多いアスペルガー

アスペルガーはまず知識で理解することが
お互いにとってプラスだ。


夫婦関係と発達障害(中)「エリート」も多いアスペルガー

――最近、 大人になってから アスペルガー症候群であることに気付いた 「大人の発達障害」 が注目されるようになりました。 増えているのでしょうか?  「絶対数が増えているというよりも、 日本の家族や社会のあり方が変化し、 見えやすくなってきたのだと思います。 昔のようにお父さんは仕事ばかりして、 遊ぶのも外で、 ろくに家にいないし、 家族のことは妻に任せきり。 妻は妻で女同士で過ごしていて、 男女7歳にして席を同じくせずという環境であれば、 アスペルガー症候群の人は目立ちません。 しかし、 コミュニケーション能力が ずっと問われるようになった今は、 空気が読めない人は「KY」と言われ、 仕事ばかりではなく、 『お父さんも育児を』 となれば様々な役割を演じなくてはならず、 アスペルガーの人の問題が 様々なところで見えてきます。 今日、私の診療に来た女性は、 アスペルガーと診断されたのが20歳です。 同窓会で同級生の非言語のメッセージが読めずに、 学生時代に好きだった人の自宅に連れて行かれて、 望まない性行為をさせられてしまい、 統合失調症のような状態を発症してしまいました。 その女性の母親に話を聞くと、 『夫は自分や娘の気持ちを全くわかってくれない。 自分勝手』 という話をしていました。 昔ながらの厳格な家庭を守っている人って、 たいていエリートですから、 そういう中にたくさんアスペルガーの人が隠れていますよ」  ――パートナーが対処する方法はありますか?  「距離を持たないといけませんね。 ある人のだんなさんは予備校の人気講師で、 年収が数千万円ということでしたが、 やはりアスペルガーでした。 その奧さんは、 『私はうちの夫に、 息子をどういう風に遊ばせればいいかを伝える場合、 すべてストーリー仕立てで書く。 夫がその通りにしてくれたときには、 彼が好きなコーヒーをいれてあげると、 嬉うれしそうに飲むんです』 と工夫を話してくれました。 してほしいことを具体的に伝えて、 ご褒美を上手に与える ということでうまく回しているのですね」  ――アスペルガーの多くは男性ということですが、 男性本人はどのようにしてパートナーシップを築けばいいのでしょうか?  「まず、 お母さんの育て方が大事になってきますね。 例えば、思春期になって、 いいと思う女の子ができる頃から、 女性はどういう生き物で、 こういう風に男性に接してもらえると 嬉しいのよということを パターン的に教え込むことです。 こういう付き合い方をしなさい、 こういうことはしてはいけませんと教え込めば、 それを覚えて、実行するようになります」  ――それ以外はできないのですかね? 応用力は身に着けられませんか?  「でも、 1人の人間がそれだけできれば十分でしょう?」  ――確かに。一般の男性だって、 「女心がわからない」 と言っている人多いですものね。  「それとお母さんが、 いずれ、あなたはこの家族から離れていくのよ ということを息子に教え込まなくてはいけません。 お母さんと息子という世界が、 結婚しても続くと考えてはいけない。 これは一般の男性でも言えることですけれどもね」  ――いわゆるマザコン的な感じでしょうか?  「そうそう。 マザコンの中にもかなりそういう人がいます。 健康な子どもは外で友達と遊んだり、 スポーツに専念したりして 自分から距離を取って行きます。 そうならない子どもの場合、 母親は、 だんだん自分から距離を取っていくのがいいです。 具体的には、 12歳になったら、 あんたは男で、お母さんは女なんだから、 前腕の長さ以上の距離を置く ということを伝える。 12歳までは一緒にお風呂に入ろうが、 一緒に寝ようがOK。 でも12歳過ぎたら、 お母さんとの距離を保つ。 お風呂に入るのも一緒に寝るのもだめ。 男の子にとって、 お母さんは 昔おっぱいを吸っているわけですから、 アスペルガーの人は、 高校生になっても お母さんのおっぱいを 吸っていることを おかしいと感じないんです」 ――それは困りましたね。  「もう一つ問題なのは、 お母さんは 急に自分の息子が 男になったのに気付いて、 遠ざけることがあります。 すると、 昨日まで 僕のことを抱っこしてくれていたお母さんが 急に僕を避けるということで、 アスペルガーの男の子は 理由がわからなくて混乱するわけです。 一般的な子どもは、 ほかの子どもとグループを作って、 お母さんと徐々に距離ができていく。 そして今度は彼女ができるわけでしょう。 彼女ができない男だと うちにいるしかありません。 アスペルガーの家庭だと、 たいていお父さんは家にいませんから、 お母さん自身も寂しくて、 息子とくっついてしまいます」  ――共に依存してしまうわけですね。  「そうです。 その息子とくっついている時に、 ある日男になっていることに気づき、 遠ざける。 すると、 子どもはお母さんに 暴力を振るうこともあります。 また、お母さんは、 生理的なことを性的なことと勘違いして、 自分が何とかしてあげなくてはと 処理してあげてしまうこともあるのです。 夫は家庭に不在で コミュニケーションも取れませんから、 だんなに どうにか教えてあげてね ということもできないのです。 アスペルガーの男性は、 自分がこっそりやっていることを 人に見られるのを嫌います。 私が診ていた患者さんもそうですが、 おしっこをするところをお父さんが 人に見られるのがいやだからと、 お母さんが立って教えてあげたそうです」  「もう一つの問題は、 男の子にとって、 父親と母親は いつまでも父親と母親なんです。 女の子にとっては、 父母は未来の夫婦像なんです。 男の子の方は、 結婚して自分が夫として 生活を作っていくということを考えない。 未来を想像できないのです。 どういう家庭を作るのか、 自分の家族で学んでいないのです。 だからこそですが、 母親と娘の関係はややこしいこともあります」  ――女の子のアスペルガーの場合は、どのように対処ができますか?  「極端なことを言えば、 戦前の女性教育です。 男女7歳にして席を同じくせずですよ。 セックスは結婚するまでいけません。 何か男性に性的なことを言われたら、 家に電話して相談しなさいと教え込む。 私が診ていたある女の子は、 好きであることとセックスすることの違いが まったくわかりませんでした。 13歳の女の子が、 付き合っていた同じ年の子どもと 性的な関係を持ってしまいました。 相手が裏で 悪いことを考えているということが 想像できないのです。 町を歩いていたアスペルガーのある子が、 『お嬢さん、 すごく汗をかいていますね。 それじゃ体に悪いから、 シャワーを浴びた方が いいのではないですか?』 と言われて、 ついていってしまった ということもありました。 ですから、 そういうことを 親は一つ一つ教えなくちゃいけないのです。 男女の関係は ほとんど 非言語のコミュニケーションで成り立っています。 理解するのが アスペルガーの人は苦手なのです。 一般の人のように、 裏にある意図を読めて、 逃れるコツを知っているなら大丈夫ですが、 デートをして 『あなた今日は疲れているでしょう。 何もしないから今晩泊まりなさい』 と言われて信じてしまうのが アスペルガーの女性です。 だから、 親が必ず報告しなさいと 戦前の厳格な親のように 振る舞う必要があるのです」  ――親は早期発見して、 早めに対処した方が、 本人も生きやすくなるのでしょうけれども、 アスペルガー症候群を 早めに気付くポイントは あるのでしょうか?  「女性の場合は、 思春期に身体不調が 強く出やすいですね。 女性の場合、 思春期に女性ホルモンが出て、 体形が変わり、生理が始まるわけですが、 その変化が余計強く起きます。 眠くてつらい。 学校に行けないという人に多いです。 また、 感情と身体の間に 結びつきがないのも特徴です。 ある男のところに行くと、 心臓がドキドキするので、 私は心臓が悪いのだと思います なんて言います。 ある人は、 おじいちゃんが死んだら、 目から水が出る。 お母さんも目から水が出ている。 なぜ?と聞きます。 それが悲しいという気持ちで、 その水は涙なんですよと説明して 初めて結びつきます。 また、ガールズトークができない。 それが一番発見しやすいかな」  「それから 結婚前に男性に 性的に望まぬことをされたという人に多いです。 女性の場合は、 基本的にほかの人の目を気にしないから、 スカートが極端に短い人が多いのです。 これが10代前半ならおかしくないですが、 18、19歳だとおかしいでしょう?  私の診ていた人で水商売に行った人がいますが、 『私は水商売に入って初めて、 働く喜びを得ました』 と言うのです。 おじさんたちが あなたはよく笑って かわいいねとちやほやしてくれる。 それはもちろん、 距離感がないからです。 ベターとくっつくから、男が喜ぶんです。 でも、 話すと面白くないから、 その人気は長く続かないですね」  ――男性の場合は、何が早期発見の決め手ですか?  「男の子の場合はやはり、 こだわりですね。 電車ばかりに没頭するとかですね。 男女両方とも、 感覚過敏はありますね。 触覚のほかに音や匂いにも敏感ですね。 わりと、特徴的なのは、 しいたけが嫌いということですね。 キノコが嫌いですね。 キノコってかむとかみ切れるのだか、 そうでないのかわからない。 その感触がのみ込みづらくて、 その経験を1度やると食べられなくなる。 キノコをきらいな人は多いですね」 (続く) ◆ 【宮尾益知 みやお・ますとも】どんぐり発達クリニック院長 1975年、徳島大医学部卒業。国立成育医療研究センターこころの診療部医長などを経て、2014年4月、どんぐり発達クリニック開院。専門は、小児の発達障害で、日本小児科学会専門医、日本小児神経学会専門医などの資格を持つ。『アスペルガー症候群』(日東書院)、『大人のアスペルガー症候群』(同)など著書多数。監修した漫画『旦那さんはアスペルガー』シリーズ(野波ツナ、コスミック出版)では、カサンドラ症候群についても詳しく解説している。
アスペルガーがは90〜100人に1人いるという。 また、グレーゾーンまで入れると20人に1人とも言われる。 無視できる人数ではない。 理解しなければ 互いに コミュニケーションなどの困難を感じ 理解すれば 互いに建設的な結果をもたらす。 数年前に 高機能自閉症とアスペルガーの 研修会を受けたことがある。 研修後、数人の知り合いが異口同音に語ったのは 「自分もアスペルガーかもしれない」 というものだった。 確かに一つ一つの症状は かなり多くの人に当てはまるものが多い。 しかし、普通の人は せいぜい20パーセントか30パーセント ぐらいが 「当てはまるようにも感じる」程度だが、 それでも本人にしてみれば かなり多いと感じてしまう。 しかし、本当にアスペルガーと診断される方は 60パーセントから80パーセントが 当てはまる。 レベルが違う。 そういった方々が 「生きづらさ」 を 常に感じていることには ある種のいたたまれなさを感じる。 それが知識で理解するだけでも コミュニケーションが改善されるのであれば 知識が広く知られることは必要だ。


posted by sachi at 10:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 心理
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