2019年03月28日
直観と訓練
最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。
判断力・直観力
直観と訓練
直観は訓練で生み出される?
前日の実験で、大脳基底核が直観を担っていることが明らかになった。
大脳基底核は大脳皮質の内部に位置していおり、大脳皮質とは神経結合のループを作って繋がっている。
大脳皮質から送られた情報は大脳基底核を通り、ここで選ばれた情報だけが大脳皮質へ戻るのだ。
大脳基底核は大脳皮質に比べ、進化的に古い場所だ。
大脳基底核は幾つかの領域からなっており、直観に関わるのは尾状核である。
私たちは無意識に、危険や利益を計算しながら次にとるべき行動を決めている。
この働きを担うのが尾状核で、本能的で素早い反応を司る部位である。
将棋プロジェクトを行う、理化学研究所脳科学総合研究センターの田中啓治(けいじ)副センター長は、尾状核を経由して将棋の次の一手が決められる仕組みを次のように考える。
「候補となる次の一手の情報は、大脳皮質から尾状核へ行き、そこから大脳基底核内を巡回します。尾状核に届く、次の一手の候補はたくさんありますが、これらはまだ意識に昇りません。
大脳基底核から再び大脳皮質に戻った、次の一手の候補のみが意識に上るのです。
盤面を見て大脳皮質が活性化すると、次の一手の候補の情報を伝える神経細胞の働きを、抑えようとする神経経路が働き出します。
こうして候補たちはみな大脳基底核内で“足止め”されますが、やがて、大脳皮質に向かって進める次の一手の候補が出てきます。
これが、直観的に次の一手として浮かんでくるのです」(田中副センター長)。
田中副センター長はさらに興味深い仮説を立てている。
次の一手を考えている時、プロ棋士もアマチュア棋士も大脳皮質の様々な場所が活動していた。
このことから田中副センター長は、最初は誰の脳でも、次の一手を決める作業は大脳皮質で行われているのではないかと考える。
しかし訓練を重ねるにつれ、この作業が大脳皮質から楔前部・大脳基底核へのルートへと移ってくるのではないか、という。
大脳基底核で起こる反応は、無意識的で素早い、つまり直観となる。
高度な能力というイメージがある直観は進化的に“新しい脳”の大脳皮質から、より“古い脳”に作業場が移行した思考回路によって生み出されるのかもしれない。
大脳基底核内を巡回して、次の一手の候補を生む直観のルート
大脳皮質(頭頂葉、側頭葉)に保存されている連合記憶の中には、将棋に関する記憶(知識・経験)がたくさんある。
それらは尾状核に入り、そのまま大脳基底核を巡回しようとするが、巡回途中に伝達が行われなくなってしまう。
しかし、やがてそのような中から、伝達が行われるようになるものが出てきて大脳皮質へと向かう。
これが直観として意識にのぼる次の手だ。
1. 次の一手の候補が浮かぶ前
経路A(大脳皮質→尾状核→淡蒼球→視床→大脳皮質)
経路B(大脳皮質→視床下核→淡蒼球)
多くの「次の一手」の候補の情報は、大脳皮質から脳の内部にある大脳基底核を通り、その後、再び大脳皮質に戻る(経路A)。
盤面を見て大脳皮質が活性化すると、大脳皮質→視床下核→淡蒼球という別の神経細胞の経路(経路B)が活性化する。
この経路Bの神経細胞によって、経路Aの中の淡蒼球から大脳皮質へ向かう全ての神経細胞の働きが一時的に抑えられ、どんな次の一手の情報も、大脳皮質に届くことができなくなる。
2.次の一手の候補が浮かんだ瞬間
やがて、経路Bの神経細胞によって働きを抑えられていた、たくさんの経路Aの神経細胞の中から、抑制が外れて活性化するものが出てくる。
この回路が活性化することで、この経路が担う次の一手の情報が大脳皮質に再び届けられる。
こうして届いた次の一手の情報が、直観として意識に浮かんでくるのである。
経路Bのように全ての可能性を一旦抑える機能がないと、偶然、大脳基底核から最初に大脳皮質に到達した、最適ではない選択肢が選ばれてしまう危険がある。
参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2014年7月15日発行
判断力・直観力
直観と訓練
直観は訓練で生み出される?
前日の実験で、大脳基底核が直観を担っていることが明らかになった。
大脳基底核は大脳皮質の内部に位置していおり、大脳皮質とは神経結合のループを作って繋がっている。
大脳皮質から送られた情報は大脳基底核を通り、ここで選ばれた情報だけが大脳皮質へ戻るのだ。
大脳基底核は大脳皮質に比べ、進化的に古い場所だ。
大脳基底核は幾つかの領域からなっており、直観に関わるのは尾状核である。
私たちは無意識に、危険や利益を計算しながら次にとるべき行動を決めている。
この働きを担うのが尾状核で、本能的で素早い反応を司る部位である。
将棋プロジェクトを行う、理化学研究所脳科学総合研究センターの田中啓治(けいじ)副センター長は、尾状核を経由して将棋の次の一手が決められる仕組みを次のように考える。
「候補となる次の一手の情報は、大脳皮質から尾状核へ行き、そこから大脳基底核内を巡回します。尾状核に届く、次の一手の候補はたくさんありますが、これらはまだ意識に昇りません。
大脳基底核から再び大脳皮質に戻った、次の一手の候補のみが意識に上るのです。
盤面を見て大脳皮質が活性化すると、次の一手の候補の情報を伝える神経細胞の働きを、抑えようとする神経経路が働き出します。
こうして候補たちはみな大脳基底核内で“足止め”されますが、やがて、大脳皮質に向かって進める次の一手の候補が出てきます。
これが、直観的に次の一手として浮かんでくるのです」(田中副センター長)。
田中副センター長はさらに興味深い仮説を立てている。
次の一手を考えている時、プロ棋士もアマチュア棋士も大脳皮質の様々な場所が活動していた。
このことから田中副センター長は、最初は誰の脳でも、次の一手を決める作業は大脳皮質で行われているのではないかと考える。
しかし訓練を重ねるにつれ、この作業が大脳皮質から楔前部・大脳基底核へのルートへと移ってくるのではないか、という。
大脳基底核で起こる反応は、無意識的で素早い、つまり直観となる。
高度な能力というイメージがある直観は進化的に“新しい脳”の大脳皮質から、より“古い脳”に作業場が移行した思考回路によって生み出されるのかもしれない。
大脳基底核内を巡回して、次の一手の候補を生む直観のルート
大脳皮質(頭頂葉、側頭葉)に保存されている連合記憶の中には、将棋に関する記憶(知識・経験)がたくさんある。
それらは尾状核に入り、そのまま大脳基底核を巡回しようとするが、巡回途中に伝達が行われなくなってしまう。
しかし、やがてそのような中から、伝達が行われるようになるものが出てきて大脳皮質へと向かう。
これが直観として意識にのぼる次の手だ。
1. 次の一手の候補が浮かぶ前
経路A(大脳皮質→尾状核→淡蒼球→視床→大脳皮質)
経路B(大脳皮質→視床下核→淡蒼球)
多くの「次の一手」の候補の情報は、大脳皮質から脳の内部にある大脳基底核を通り、その後、再び大脳皮質に戻る(経路A)。
盤面を見て大脳皮質が活性化すると、大脳皮質→視床下核→淡蒼球という別の神経細胞の経路(経路B)が活性化する。
この経路Bの神経細胞によって、経路Aの中の淡蒼球から大脳皮質へ向かう全ての神経細胞の働きが一時的に抑えられ、どんな次の一手の情報も、大脳皮質に届くことができなくなる。
2.次の一手の候補が浮かんだ瞬間
やがて、経路Bの神経細胞によって働きを抑えられていた、たくさんの経路Aの神経細胞の中から、抑制が外れて活性化するものが出てくる。
この回路が活性化することで、この経路が担う次の一手の情報が大脳皮質に再び届けられる。
こうして届いた次の一手の情報が、直観として意識に浮かんでくるのである。
経路Bのように全ての可能性を一旦抑える機能がないと、偶然、大脳基底核から最初に大脳皮質に到達した、最適ではない選択肢が選ばれてしまう危険がある。
参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2014年7月15日発行
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/8673663
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック