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2019年03月01日

短期記憶のしくみ

最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。

記憶力

短期記憶のしくみ

短期記憶では、シナプスで
”キャッチャー”をふやす


第2章でみたように(2/24 信号伝達Bシナプスのスパイン.jpeg
)、
ニューロンは、前のニューロンとのつなぎ目であるシナプスから少々信号を伝えられたくらいでは、
次のニューロンに信号を送り出すことはしない。
情報も伝わらず、記憶もできない。

情報を伝えるには、シナプスで信号の伝達をよくし、
前のニューロンより強い信号を細胞体に集める必要がある。

シナプスの信号伝達をよくするしくみが、
『LTP(長期増強)』
である。

LTPが起きるしくみをみてみよう

通常の信号が送られてきた場合、シナプスでは、隙間に化学物質が放出される。
受け手で待ち構える”キャッチャー”(受容体)が化学物質を捕まえ、そのことによって受容体に穴が開き、ナトリウムイオンが流れ込む。これ1回の反応では、信号伝達がよくなることはない。

一方、印象的な出来事を経験するとした場合、ごく短い時間に繰り返し信号が送られてくることがある。
この場合、短時間のうちに繰り返し化学信号が受け渡されて、
受け手側のニューロンに大量にナトリウムイオンが流れ込む。
するとさらに別の入り口からカルシウムイオンが流れ込む。

ところで、受容体には”在庫品”があり、出番を待っているものがある。
カルシウムイオンが流れ込むと、これをきっかけに受容体の”在庫品”が新たに活動をはじめる。

受容体はナトリウムイオンを招き入れる入り口でもあるのだから、
受容体が増えれば、当然流れ込むナトリウムイオンが増える。
つまり、受け手側のニューロンに強い信号が伝わる状態になる。
こうして『LTP』が起きる!

多くのシナプスでLTPが起きれば、結果的に受け手側のニューロンが『発火』しやすくなり、回路も変化するだろう。

このようなLTPは即座に起き、そして数時間ほど続く

しかし長続きはしない。そのまま放っておくと、せっかく増えた受容体の数が元に戻ってしまうからだ。

これでは記憶は消えてしまう。
例えば1ヶ月前の朝食のメニューを覚えていないのは、このような理由によると考えられている。

短時間で消えてしまうLTPは、特に『E-LTP』と呼ばれている。
E-LTPは『短期記憶』に相当すると考えられている。

参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2018年7月15日発行
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タナカマツヘイ
総合診療科 医学博士 元外科学会専門医指導医、元消化器外科学会専門医指導医、元消化器外科化学療法認定医、元消化器内視鏡学会専門医、日本医師会産業医、病理学会剖検医
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