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2020年01月26日

『資産寿命』という言葉をご存知ですか?

『資産寿命』という言葉をご存知ですか?


『資産寿命 人生100年時代の「お金の長寿術」』(朝日新書)の著者、大江 英樹さんはかつて証券会社で働いていらっしゃいました。万札に乗った人形の老夫婦.png

大江さんは、投資より、何よりも大切なのは、健康維持と収支管理と社会保険の知識の3本柱とおっしゃっています。

すなわち、健康を維持し、できるだけ長く働けるようにする。

そして、収入だけを考えるのではなく、『収支をきちんと管理する』こと、
さらには『社会保険の知識を得ておくこと』。

投資をするのは4番目か5番目で十分ともおっしゃっています。

社会保険の知識がなぜ必要かといえば、私たちは知らない間に社会保険料をたくさん負担してきたのですから、それに見合ったサービスを受けられるのは当然だからです。

ところが、多くの人たちが社会保険の給付制度やサービスを知らず、『ムダな』お金を払って民間の保険に入っています。

「資産寿命」を延ばす最適な方法は、投資という「結果の不確実なもの」ではありません。

それをしっかり理解しておくべきでしょう。

個人の支出で一番大きな買い物は、不動産です。

意外ですが、二番目に大きな買い物は「保険」です。

三番目が車になります。

保険は、もし万が一という時に備えとして必要なもので、その時々によって、準備しないといけない金額が違います。

例えば、入院保険の場合、昔と違って、入院期間が短く、外来手術、外来通院にシフトしてきているので、長年払ってきた掛け金すら回収できるものではありません。

まして国民皆保険制度で、65歳以下ですら、3割負担、また年収によっては、限度額を超えた支払いは請求すれば、あとで戻ってきます。

準備すべきは、現金であって、保険ではないということです。

死亡保険(生命保険)に関しても、今死んだ時に残された家族が生活していく上でどれだけお金が必要かによって異なります。

結婚して、子供が生まれたあとが一番、保険が必要で、進学するたびに準備するお金は減っていき、子供が社会人になってしまえば、葬式代で事足りるのです。

そういう金融常識は、学校では習いません。

こういうことこそ、本来は義務教育で教えるべきだと思います。

金融庁の思惑にはまった「投資意識高い系」の人たち


「貯蓄から投資へ」を推進したいという金融庁の意図はよくわかりますし、報告書を丁寧に読めば、かなり気を遣って書いてあるということもわかります。

昨年の騒動をきっかけに投資を始めた人も多いようですから、そういう意味では金融庁の思惑どおりになったのかもしれません。

投資を始めるだけの経済的なゆとりがある人たちです。


しかし、日々の暮らしの中からそれだけの金額を投資に回す余裕がない人もたくさんいます。

そんな人たちにとって、あの騒動はマイナスの結果しかもたらしていません。

「真面目に働いても、2000万円なんて貯められない、もう、どうしようもないな」などと、諦めに近い気持ちになった人たちも少なくないでしょう。

そんな人たちが、諦めの気持ちから怨嗟(えんさ)の念を強めてしまうと、社会の分断が起こりかねません。


あまり知られていない社会保険の「防貧」機能

年金や医療といった社会保険について正しい知識を広めていくことこそが、金融庁の仕事です。

年金に限らず、日本の社会保険は、多くの人が言うほど不安な制度ではありません。

生活保護などの制度が、すでに貧困に陥ってしまった人を救う、いわゆる「救貧」の役割を果たすとすれば、通常の社会保険は貧困に陥ることを防ぐための手段、すなわち「防貧」の機能を持っているものです。

実際には公的年金だけで生活している人もたくさんいます。

私自身、定年退職して起業したものの、まったく仕事のない頃がありました。

そんなときも一部支給されていた年金のおかげで、ぜいたくはできなかったものの普通の暮らしをすることは可能でした。

むろん、生活費がどれくらいかかるかは、その人がどんな暮らしをしたいかによって大きく変わってきます。

「定年後は毎年のように海外旅行に行きたい」ということであれば、公的年金だけでは難しいでしょう。

そんなふうにお金のかかる生活をしたいのであれば、年金に加えて自分でお金を用意しておくことは必要です。

ただ、その場合も「投資が必要」というわけではありません。

投資以外にも、さまざまな方法があります。

「お金の余命」は知恵と工夫次第で、長生きさせることが十分可能であると知ってもらいたいのです。

3本柱は、健康維持と収支管理と社会保険の知識

何よりも大切なのは、健康を維持し、できるだけ長く働けるようにすることです。

そして、収入だけを考えるのではなく、収支をきちんと管理すること、さらには社会保険の知識を得ておくこと。

この3つがまず必要だと思います。投資をするのは4番目か5番目で十分です。

社会保険の知識がなぜ必要かといえば、私たちは知らない間に社会保険料をたくさん負担してきたのですから、それに見合ったサービスを受けられるのは当然だからです。

ところが、多くの人たちが社会保険の給付制度やサービスを知らず、ムダなお金を払って民間の保険に入っています。

もったいない話です。

投資も、それ自体は決して悪いことではありませんが、先の見えない不確実なものにお金を委ねるわけですから、自分でリスクを取る覚悟が必要になります。リスクを取れない人は、投資をする必要などありません。

「老後の安心のためにも資産寿命を延ばしましょう」という金融機関の誘いには安易に乗らないことです。

健康維持、収支管理、社会保険の3つの基本を踏まえたうえで投資をする場合も、自分でよく勉強してから投資すべきです。

「資産寿命」を延ばす最適な方法は、投資という「結果の不確実なもの」ではありません。

それをしっかり理解しておくべきでしょう。
#東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/articles/-/325934?fbclid=IwAR3FHy3xAeGm76bJzemWXujFsLGVP_DI1MrXPHr9bnyVG9VUNw086vhy-Xc

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総合診療科 医学博士 元外科学会専門医指導医、元消化器外科学会専門医指導医、元消化器外科化学療法認定医、元消化器内視鏡学会専門医、日本医師会産業医、病理学会剖検医
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