2019年08月15日
うつ病治療に運動を取り入れるA
うつ病治療に運動を取り入れるA
運動は何通かの形でうつ病と闘うらしい。
ストレスに対する生化学的な回復力を強め、
新たな脳細胞の成長を促し、
自己肯定を高め、
精神疾患の背景にある遺伝的リスクを相殺する
可能性さえある。
軽度から中等度のうつ病患者のほとんどにとって、
運動はもっとも有効で、
安全で、役に立ち、実行しやすく、
楽しくもある治療だといえる。
心理学者や臨床医は
30年以上前から、
運動をうつ病の代替療法として研究してきた。
運動が効く理由
運動は心拍数を高め、
血液や酸素、ホルモン、神経作用物質
を全身にどっと送り出す。
その時、体は運動を一種のストレスとして
受け止めて反応している。
このストレスこそが最終的には有益になる。
いくつかの研究によると、
中程度の運動を習慣的に行うと、
脳と免疫系の配線が組み替えられ、
肉体的・精神的な緊張に
うまく対処できるようになる
と見られる。
様々なストレス因子に
うまく対処できるほど、
うつ状態に陥るリスクは下がる。
うつ病の中には
脳細胞の成長と
脳細胞間の接続の成長が
阻害され、
扁桃体や海馬、前頭前皮質が
fMRI(機能的磁気共鳴装置ー画像検査の一種)
で血流低下や萎縮が起きていると
報告されている。
脳由来神経栄養因子(BDNF)
脳由来神経栄養因子(BDNF;
英: Brain-derived neurotrophic factor)は、
神経細胞の生存維持、
神経突起の伸長促進、
神経伝達物質の合成促進など
の神経細胞の成長を調節する
液性蛋白質である。
BDNFは、脳の中では、
海馬、大脳皮質、大脳基底核で特に多く、
これらの部位は、学習、記憶、高度な思考
に必須の領域である。
BDNFは、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)、
うつ病などの精神神経疾患との関連が報告されている。
アルツハイマー病患者の脳では、
特に大脳皮質や海馬において、
BDNF濃度が健常者よりも低い。
健常者では前頭前野において
BDNF高親和受容体の mRNAレベルが
加齢に伴い減少する。
ラットでは加齢に伴う空間記憶の低下と、
海馬のBDNF mRNA発現量の減少
が相関することが示されている。
これらの事実から、
加齢及びアルツハイマー病における記憶低下に、
BDNF作用の減少の関与が示唆されている。
BDNFとうつ病との関連を示すデータも報告されている。
うつ病患者の脳では、
海馬を含むいくつかの領域で
BDNF蛋白量の減少が認められる。
うつ病のモデル動物では
海馬のセロトニン作動性神経線維
の脱落が認められるが、
BDNFはセロトニン作動性ニューロン
の生存維持に作用する。
運動がBDNFの生産を高める
運動がBDNFの生産を高める
ことが動物とヒトの両方について示されている。
2001年、抗うつ薬と走る場を与えられたラットは、
走るだけ、あるいは薬剤投与だけのラットと比べて
BDNFの濃度が高くなった。
2016年、中度から重度の
うつ病患者を対象に、
抗うつ薬を内服中の57人を
2群にわけ、
週4回の有酸素運動を
28日間参加、
他方は運動をしなかった。
症状は2群とも軽くなったが、
運動群では抗うつ薬を減らしても
改善が見られた。
睡眠習慣の改善や運動を増やすなど
健康な生活様式に変えるよう
促しただけで、
抗うつ薬の効力が劇的に高まり、
薬だけだと10%の寛解率が、
60%の寛解率になることが示されている。
2015年、マラソンや長距離自転車の
高齢競技者55人と、競技者ではない58人について
精神衛生とゲノムを比較した。
非競技者では、うつ状態の回数と
BDNF生産を阻害する遺伝子変異との間に
統計的に有意な相関が見られたが、
競技者では、この相関が見られなかった。
長期の活発な有酸素運動が
BDNFの生産を刺激することを通じて、
うつ病の遺伝的因子の効果を打ち消した
のだろうと推測された。
【参考文献】
別冊日経サイエンス 最新科学が解き明かす脳と心
日経サイエンス編集部編 日経サイエンス社
2017年12月16日
老化ゲノム300 コア研究「老化ゲノムの解明」
http://www.tmig.or.jp/J_TMIG/genome300/BDNF.html
運動は何通かの形でうつ病と闘うらしい。
ストレスに対する生化学的な回復力を強め、
新たな脳細胞の成長を促し、
自己肯定を高め、
精神疾患の背景にある遺伝的リスクを相殺する
可能性さえある。
軽度から中等度のうつ病患者のほとんどにとって、
運動はもっとも有効で、
安全で、役に立ち、実行しやすく、
楽しくもある治療だといえる。
心理学者や臨床医は
30年以上前から、
運動をうつ病の代替療法として研究してきた。
運動が効く理由
運動は心拍数を高め、
血液や酸素、ホルモン、神経作用物質
を全身にどっと送り出す。
その時、体は運動を一種のストレスとして
受け止めて反応している。
このストレスこそが最終的には有益になる。
いくつかの研究によると、
中程度の運動を習慣的に行うと、
脳と免疫系の配線が組み替えられ、
肉体的・精神的な緊張に
うまく対処できるようになる
と見られる。
様々なストレス因子に
うまく対処できるほど、
うつ状態に陥るリスクは下がる。
うつ病の中には
脳細胞の成長と
脳細胞間の接続の成長が
阻害され、
扁桃体や海馬、前頭前皮質が
fMRI(機能的磁気共鳴装置ー画像検査の一種)
で血流低下や萎縮が起きていると
報告されている。
脳由来神経栄養因子(BDNF)
脳由来神経栄養因子(BDNF;
英: Brain-derived neurotrophic factor)は、
神経細胞の生存維持、
神経突起の伸長促進、
神経伝達物質の合成促進など
の神経細胞の成長を調節する
液性蛋白質である。
BDNFは、脳の中では、
海馬、大脳皮質、大脳基底核で特に多く、
これらの部位は、学習、記憶、高度な思考
に必須の領域である。
BDNFは、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)、
うつ病などの精神神経疾患との関連が報告されている。
アルツハイマー病患者の脳では、
特に大脳皮質や海馬において、
BDNF濃度が健常者よりも低い。
健常者では前頭前野において
BDNF高親和受容体の mRNAレベルが
加齢に伴い減少する。
ラットでは加齢に伴う空間記憶の低下と、
海馬のBDNF mRNA発現量の減少
が相関することが示されている。
これらの事実から、
加齢及びアルツハイマー病における記憶低下に、
BDNF作用の減少の関与が示唆されている。
BDNFとうつ病との関連を示すデータも報告されている。
うつ病患者の脳では、
海馬を含むいくつかの領域で
BDNF蛋白量の減少が認められる。
うつ病のモデル動物では
海馬のセロトニン作動性神経線維
の脱落が認められるが、
BDNFはセロトニン作動性ニューロン
の生存維持に作用する。
運動がBDNFの生産を高める
運動がBDNFの生産を高める
ことが動物とヒトの両方について示されている。
2001年、抗うつ薬と走る場を与えられたラットは、
走るだけ、あるいは薬剤投与だけのラットと比べて
BDNFの濃度が高くなった。
2016年、中度から重度の
うつ病患者を対象に、
抗うつ薬を内服中の57人を
2群にわけ、
週4回の有酸素運動を
28日間参加、
他方は運動をしなかった。
症状は2群とも軽くなったが、
運動群では抗うつ薬を減らしても
改善が見られた。
睡眠習慣の改善や運動を増やすなど
健康な生活様式に変えるよう
促しただけで、
抗うつ薬の効力が劇的に高まり、
薬だけだと10%の寛解率が、
60%の寛解率になることが示されている。
2015年、マラソンや長距離自転車の
高齢競技者55人と、競技者ではない58人について
精神衛生とゲノムを比較した。
非競技者では、うつ状態の回数と
BDNF生産を阻害する遺伝子変異との間に
統計的に有意な相関が見られたが、
競技者では、この相関が見られなかった。
長期の活発な有酸素運動が
BDNFの生産を刺激することを通じて、
うつ病の遺伝的因子の効果を打ち消した
のだろうと推測された。
【参考文献】
別冊日経サイエンス 最新科学が解き明かす脳と心
日経サイエンス編集部編 日経サイエンス社
2017年12月16日
老化ゲノム300 コア研究「老化ゲノムの解明」
http://www.tmig.or.jp/J_TMIG/genome300/BDNF.html
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