2019年08月14日
うつ病治療に運動を取り入れる
うつ病治療に運動を取り入れる
運動は何通かの形でうつ病と闘うらしい。
ストレスに対する生化学的な回復力を強め、
新たな脳細胞の成長を促し、
自己肯定を高め、
精神疾患の背景にある遺伝的リスクを相殺する
可能性さえある。
軽度から中等度のうつ病患者のほとんどにとって、
運動はもっとも有効で、
安全で、役に立ち、実行しやすく、
楽しくもある治療だといえる。
心理学者や臨床医は
30年以上前から、
運動をうつ病の代替療法として研究してきた。
アメリカのデューク大学医学部の
臨床心理学者ジェームズ・ブルーメンソールは
先駆者の一人だ。
1980年代、彼らは心血管疾患の患者さんに
運動がどう役立つのかを調べていて、
意外な副次的効果があることに気づいた。
トレーニングは人の気分を向上させ、
うつ病患者の示す様々な訴えや診察所見
が軽くなった。
1999年に発表された初期の
研究では、
うつ病と診断された156人の
高齢男女の健康状態を追跡し、
1)定期的に運動している
患者と、
2)抗うつ薬を服用している
患者、
3)その両方を行っている
患者で比較した。
16週後、3集団は皆等しく
改善していたが、
ぶり返しの率は運動をした
1)3)患者群で低かった。
10年後に発表された研究では、
200人以上のうつ病の成人を4集団に分け、
それぞれ異なる介入処置を行った。
1)コーチによる指導つきの運動
2)自宅での運動
3)投薬治療
4)偽薬
の4群だ。
結果は、1)コーチつきの運動をした患者は
2)自宅トレーニング群よりも経過が良く、
寛解率は45%と、
3)抗うつ薬投与群の47%とほぼ同等だった。
2)自宅トレーニング群の寛解率は40%、
4)偽薬群は31%だった。
さらに近年では、スウェーデンの科学者チームが
2015年の同様の研究で、
軽度から中等度のうつ病患者946人を3群に分け、
3種類の以下の治療のいずれか1つを
12週間受けてもらった。
1)ヨガ、有酸素運動、筋トレのいずれかを週に3回
2)インターネットを使った認知行動療法、
3)カウンセリングと投薬による標準的な治療
どのグループの患者も改善されたが、
1)運動をしたグループの患者が
もっとも大きな改善が得られた。
2)ネット利用治療群は僅差で2位、
3)標準治療群は他の2つに大差をつけられた。
エビデンスに基づく医療の推進を
主導している非営利団体、
コクラン共同計画による2013年の評価は、
運動がうつ病の治療法として、
投薬とカウンセリングと同程度の効果がある
と結論づけている。
2016年に発表されたより新しいメタ解析も
同様の結論となった。
国際研究チームが25件の厳密な実験研究を調べ、
運動、特に専門家の指導の下で行う、
中程度から激しい有酸素運動は、
うつ病の治療法として確かに有効であると判定した。
また別の評価では、
うつ病治療に運動を用いると
成功率が67〜74%も上がると計算されている。
どれだけ運動すればよいか
どんな運動や強度が
うつ病対策として効果的か
を明らかにしようとした研究者もいる。
いろいろと研究結果が出ているが、
心臓に負担をかける運動と
筋肉に負荷をかける運動は、
単独でも組み合わせでも、
うつ病治療に効果があるが、
どちらの運動が好ましいか
を明確に判断できるデータはまだない。
運動が情緒と認知の両面にもたらす
利益を研究してきた
ボストン大学の心理学者
オットー(Michael Otto)は
「どちらの運動が気分向上の効果が大きく、
どの程度の強度が最善なのか。
単独で十分なのか、
他の治療法と組み合わせた方がいいのか。
確かなことはまだわかっていない」
という。
「大まかな推奨はできるが、
細目まで自信を持って
勧められるようになるには、
もっとデータが必要だ」。
【参考文献】
別冊日経サイエンス 最新科学が解き明かす脳と心
日経サイエンス編集部編 日経サイエンス社
2017年12月16日
運動は何通かの形でうつ病と闘うらしい。
ストレスに対する生化学的な回復力を強め、
新たな脳細胞の成長を促し、
自己肯定を高め、
精神疾患の背景にある遺伝的リスクを相殺する
可能性さえある。
軽度から中等度のうつ病患者のほとんどにとって、
運動はもっとも有効で、
安全で、役に立ち、実行しやすく、
楽しくもある治療だといえる。
心理学者や臨床医は
30年以上前から、
運動をうつ病の代替療法として研究してきた。
アメリカのデューク大学医学部の
臨床心理学者ジェームズ・ブルーメンソールは
先駆者の一人だ。
1980年代、彼らは心血管疾患の患者さんに
運動がどう役立つのかを調べていて、
意外な副次的効果があることに気づいた。
トレーニングは人の気分を向上させ、
うつ病患者の示す様々な訴えや診察所見
が軽くなった。
1999年に発表された初期の
研究では、
うつ病と診断された156人の
高齢男女の健康状態を追跡し、
1)定期的に運動している
患者と、
2)抗うつ薬を服用している
患者、
3)その両方を行っている
患者で比較した。
16週後、3集団は皆等しく
改善していたが、
ぶり返しの率は運動をした
1)3)患者群で低かった。
10年後に発表された研究では、
200人以上のうつ病の成人を4集団に分け、
それぞれ異なる介入処置を行った。
1)コーチによる指導つきの運動
2)自宅での運動
3)投薬治療
4)偽薬
の4群だ。
結果は、1)コーチつきの運動をした患者は
2)自宅トレーニング群よりも経過が良く、
寛解率は45%と、
3)抗うつ薬投与群の47%とほぼ同等だった。
2)自宅トレーニング群の寛解率は40%、
4)偽薬群は31%だった。
さらに近年では、スウェーデンの科学者チームが
2015年の同様の研究で、
軽度から中等度のうつ病患者946人を3群に分け、
3種類の以下の治療のいずれか1つを
12週間受けてもらった。
1)ヨガ、有酸素運動、筋トレのいずれかを週に3回
2)インターネットを使った認知行動療法、
3)カウンセリングと投薬による標準的な治療
どのグループの患者も改善されたが、
1)運動をしたグループの患者が
もっとも大きな改善が得られた。
2)ネット利用治療群は僅差で2位、
3)標準治療群は他の2つに大差をつけられた。
エビデンスに基づく医療の推進を
主導している非営利団体、
コクラン共同計画による2013年の評価は、
運動がうつ病の治療法として、
投薬とカウンセリングと同程度の効果がある
と結論づけている。
2016年に発表されたより新しいメタ解析も
同様の結論となった。
国際研究チームが25件の厳密な実験研究を調べ、
運動、特に専門家の指導の下で行う、
中程度から激しい有酸素運動は、
うつ病の治療法として確かに有効であると判定した。
また別の評価では、
うつ病治療に運動を用いると
成功率が67〜74%も上がると計算されている。
どれだけ運動すればよいか
どんな運動や強度が
うつ病対策として効果的か
を明らかにしようとした研究者もいる。
いろいろと研究結果が出ているが、
心臓に負担をかける運動と
筋肉に負荷をかける運動は、
単独でも組み合わせでも、
うつ病治療に効果があるが、
どちらの運動が好ましいか
を明確に判断できるデータはまだない。
運動が情緒と認知の両面にもたらす
利益を研究してきた
ボストン大学の心理学者
オットー(Michael Otto)は
「どちらの運動が気分向上の効果が大きく、
どの程度の強度が最善なのか。
単独で十分なのか、
他の治療法と組み合わせた方がいいのか。
確かなことはまだわかっていない」
という。
「大まかな推奨はできるが、
細目まで自信を持って
勧められるようになるには、
もっとデータが必要だ」。
【参考文献】
別冊日経サイエンス 最新科学が解き明かす脳と心
日経サイエンス編集部編 日経サイエンス社
2017年12月16日
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