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2019年02月10日

『脳の発達』

最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていくつもりです。

脳の進化と成長

『脳の発達』

出生後、急激にふえたあとは、減少の一途をたどる神経細胞のシナプス

脳は、母親の胎内にいるときに基本的な『形』ができあがる。
受精後5か月くらいから、脳のしわ(大脳皮質の折りたたみ)ができ始め、受精後9か月もするとしわだらけのいわゆる”ヒトの脳”ができあがる。

形の成長とともに、脳の『機能』の発達も進む。心臓の動きの制御など、生命維持のために重要なものから発達がはじまり、徐々に耳や目も機能しはじめる。

また、受精後9か月終わりごろの胎児に音を聞かせると、最初はびっくりして反応するが、次第に反応しなくなる。刺激への”なれ”といった高度な機能も胎内で発達をはじめる。
神経細胞.jpgシナプス.jpg

受精から約10か月後、赤ちゃんは外の世界へと生れ出る


そして、周囲から多くの刺激を受けながら、未熟な脳から成熟した大人の脳へと、仕上げの発達がはじまる。

神経細胞のネットワーク(神経回路)が活動することで、脳は機能を発揮する。新しい言葉や動きを次々と覚える乳幼児の脳では、新しいネットワークがどんどんつくられ、複雑になっていくように思える。

ところが、脳の発達は、そう単純ではない。

神経細胞のつなぎ目『シナプス』の数は、1〜3歳前後までは急激に増えるが、その後は徐々に減っていくのである!
実は、シナプスが減っていくといいう現象は、”過剰生産”されたシナプスのうち、不要なものが消えていく過程だということが、その後の研究でわかっている。

つまり、神経細胞は、とりあえず最初は広く手をつないでおき、あとで不要な手を離すという戦略をとっているのだ。
この『多めに作ってあとで減らす』方式の方が、『必要に応じて増やす』という方式よりも、周囲の状況の変化に敏感に対応できるのである。

さらに、最近の研究で、手のつなぎ方が変化するだけではなく、神経細胞自体の性質にも巧みな変化がおきていることがわかってきた。

脳の重さは、生まれた時点で大人の約30%

生まれた時の脳の重さは約400g、成人の脳の重さは約1,200〜1500gなので、重さだけなら、生まれた時点で成人の30%前後までに成長している。

脳は大きく重くなるが、シナプスの密度は頭打ち

出生後の『脳の重さ』は、最初の数年間で急激に成長する。
1歳で、300g
4〜5歳には1,200gほど(大人の約80%)
出生後、神経細胞は、樹状突起や軸索を伸ばして大きくなることはあっても、基本的には細胞分裂して数がふえることはない
脳が重くなるのは、主に、神経細胞を支えたり、髄鞘の元となる『グリア細胞』が分裂してふえることによる(重いほど脳の機能が高い訳ではない)。


神経細胞のつなぎ目である『シナプス』の密度は、脳の多く部位で1〜3歳にピークをむかえる。
視覚情報を処理する大脳の後頭葉にある『視覚野』では、生後8〜9か月ごろにピークをむかえたあと、数年かけて3分の2程度にまで減少する

参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2018年7月15日発行
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タナカマツヘイ
総合診療科 医学博士 元外科学会専門医指導医、元消化器外科学会専門医指導医、元消化器外科化学療法認定医、元消化器内視鏡学会専門医、日本医師会産業医、病理学会剖検医
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