2019年06月10日
すこやかな人生@ 日本心身医学会名誉理事長 池見 酉次郎 (いけみ ゆうじろう)
最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。
すこやかな人生@
日本心身医学会名誉理事長 池見 酉次郎 (いけみ ゆうじろう)
大正四年福岡生まれ。一九四一年九州大学医学部卒業。
九州名誉教授。北九州市立小倉病院名誉院長。日本心身医学会理事長。
自律調整法国際委員会委員長。国際心身医学会前理事長。医学博士。
著書「セルフコントロールの医学」「自己分析」「心で起こる体の病」「心療内科」ほか
き き て 井筒屋 勝 巳
平成三年九月十五日 放送
井筒屋: 今日は心と体の健康を保って健やかに生きていくのにどうしたらいいのか。
日本心身医学会名誉理事長の池見酉次郎さんにお話を伺ってまいります。
どうぞよろしくお願い致します。
今日は敬老の日に因んで、
特にこの中高年の健康ということについてお伺いしていきたいと思うんですけれども、
高齢化社会に突き進んでいる日本としては、これは非常に大きな課題ですよね。
池見: 日本人の平均寿命が昨年度も世界一位にランクされていますね。
それで男子が七十五・八七。私は、今、七十六歳でちょうど平均なんでございますね。
日本人が長生きすればするほど、老後を如何に健康で生きがいを持って過ごすか、
ということが、成人期の健康の問題よりも、もっと重要な問題になってきましたですね。
昔は隠居三年で済んだんですけれども、
今は隠居しましてから、十年も二十年も生きなければならない。
井筒屋: 定年後?
池見: 定年後ですね。
特に都市型の中高年の方の場合は、今まで職場の仕事の張りがあって、
職場での人間関係に支えられておられた方が、
いきなりそういうのがすっかりなくなりますと、
急速に呆けがくる可能性がありますね。
隠居三年を過ぎて遙かに長く生きなければならない。
そこで日本の厚生省では、これに対する具体的な対策をしなければいけないというので、
中高年者のための心の健康と生きがいを創造する施策を昨年から進めておられまして、
専門課ができました。
どういうことをやるかといいますと、
一番目が、健康生きがい作りの場とか機関に関するデータを紹介する
二番目が、個々人の嗜好や個性に則して、中高年者が健康生きがい作りに取り組めるようにする
三番目が、仲間作りや組織活動に参加できるような場を作ってやる
四番目が、専門的な技術、文化、芸術などの分野について指導を行う
五番目が、健康生きがい作りについての一般的な啓蒙活動をやる
こういうことが厚生省で打ち出されています。
井筒屋: どれもきちんとやらなければいけないことなんでしょうけれども、
心身医学の我が国のパイオニアでいらっしゃる先生からしますと、
心身医学の立場からは健康と生きがい作り、どんなことが言えるんでしょう。
池見: はい。
実は私が四十年あまり前から、七十六歳の今日まで、
心身両面の健康の問題を一筋にやってまいりました。
その間私は、自分が唱えてきた心身医学の学説を自分の身体で実証しながら進んでまいりました。
今日、この歳になりましても、いまだにこの研究を続けており、
歳をとるほどだんだん忙しくなるというような毎日でございますが、
そういうことができるのはそのお陰だと思います。
実は先般、朝日新聞の週刊誌「AERA」の記者の方が、日本の高僧で、九十歳以上長生きされた方を五人訪問されまして、その生活の態度をお訊きになって「だから高僧は長生きする」という特集記事を書いておられるんです。そうすると、その高僧たちの生き様に全部共通したものがあるんですね。
一番目が、姿勢がよいこと―背筋が立っている
二番目が、ゆっくり息を吐く―長呼吸をされる
三番目が、実によく歩かれる
四番目が、少食ないし、粗食である
五番目が、一合以内の晩酌を嗜(たしな)まれる
六番目が、幼児の時は揃って病弱であった。
七番目が、どなたも大らかな温かさ優しさの持ち主である
そういう点が、みんな一致しているんですね。
井筒屋: それだけ多くの共通点があるというのは非常に興味深いですね。
池見: はい。その心身を健やかにセルフ・コントロールしていきますうえで、なんと言っても、土台になりますのは「姿勢を正す」ことですね。顎を引いて、背筋を真っ直ぐ立てて、腰を立てるんですね。と言いますのは、私どもの心身両面でのいろんな営みを全部纏めて統御している脳の働き―脳から出ましたいろんな神経系をわれわれの全身に伝えるための脊髄がわれわれのまさに大黒柱ですから、その大黒柱を真っ直ぐに立てる。そして脳からの働きがスムーズにいくようにする。これくらい健康に必要なことはないわけですね。その一番簡単なことが一般になかなか行われていないんですね。
井筒屋: そうですね。
これは、平成三年九月十五日に、NHK教育テレビの
「こころの時代」で放映されたものである
すこやかな人生@
日本心身医学会名誉理事長 池見 酉次郎 (いけみ ゆうじろう)
大正四年福岡生まれ。一九四一年九州大学医学部卒業。
九州名誉教授。北九州市立小倉病院名誉院長。日本心身医学会理事長。
自律調整法国際委員会委員長。国際心身医学会前理事長。医学博士。
著書「セルフコントロールの医学」「自己分析」「心で起こる体の病」「心療内科」ほか
き き て 井筒屋 勝 巳
平成三年九月十五日 放送
井筒屋: 今日は心と体の健康を保って健やかに生きていくのにどうしたらいいのか。
日本心身医学会名誉理事長の池見酉次郎さんにお話を伺ってまいります。
どうぞよろしくお願い致します。
今日は敬老の日に因んで、
特にこの中高年の健康ということについてお伺いしていきたいと思うんですけれども、
高齢化社会に突き進んでいる日本としては、これは非常に大きな課題ですよね。
池見: 日本人の平均寿命が昨年度も世界一位にランクされていますね。
それで男子が七十五・八七。私は、今、七十六歳でちょうど平均なんでございますね。
日本人が長生きすればするほど、老後を如何に健康で生きがいを持って過ごすか、
ということが、成人期の健康の問題よりも、もっと重要な問題になってきましたですね。
昔は隠居三年で済んだんですけれども、
今は隠居しましてから、十年も二十年も生きなければならない。
井筒屋: 定年後?
池見: 定年後ですね。
特に都市型の中高年の方の場合は、今まで職場の仕事の張りがあって、
職場での人間関係に支えられておられた方が、
いきなりそういうのがすっかりなくなりますと、
急速に呆けがくる可能性がありますね。
隠居三年を過ぎて遙かに長く生きなければならない。
そこで日本の厚生省では、これに対する具体的な対策をしなければいけないというので、
中高年者のための心の健康と生きがいを創造する施策を昨年から進めておられまして、
専門課ができました。
どういうことをやるかといいますと、
一番目が、健康生きがい作りの場とか機関に関するデータを紹介する
二番目が、個々人の嗜好や個性に則して、中高年者が健康生きがい作りに取り組めるようにする
三番目が、仲間作りや組織活動に参加できるような場を作ってやる
四番目が、専門的な技術、文化、芸術などの分野について指導を行う
五番目が、健康生きがい作りについての一般的な啓蒙活動をやる
こういうことが厚生省で打ち出されています。
井筒屋: どれもきちんとやらなければいけないことなんでしょうけれども、
心身医学の我が国のパイオニアでいらっしゃる先生からしますと、
心身医学の立場からは健康と生きがい作り、どんなことが言えるんでしょう。
池見: はい。
実は私が四十年あまり前から、七十六歳の今日まで、
心身両面の健康の問題を一筋にやってまいりました。
その間私は、自分が唱えてきた心身医学の学説を自分の身体で実証しながら進んでまいりました。
今日、この歳になりましても、いまだにこの研究を続けており、
歳をとるほどだんだん忙しくなるというような毎日でございますが、
そういうことができるのはそのお陰だと思います。
実は先般、朝日新聞の週刊誌「AERA」の記者の方が、日本の高僧で、九十歳以上長生きされた方を五人訪問されまして、その生活の態度をお訊きになって「だから高僧は長生きする」という特集記事を書いておられるんです。そうすると、その高僧たちの生き様に全部共通したものがあるんですね。
一番目が、姿勢がよいこと―背筋が立っている
二番目が、ゆっくり息を吐く―長呼吸をされる
三番目が、実によく歩かれる
四番目が、少食ないし、粗食である
五番目が、一合以内の晩酌を嗜(たしな)まれる
六番目が、幼児の時は揃って病弱であった。
七番目が、どなたも大らかな温かさ優しさの持ち主である
そういう点が、みんな一致しているんですね。
井筒屋: それだけ多くの共通点があるというのは非常に興味深いですね。
池見: はい。その心身を健やかにセルフ・コントロールしていきますうえで、なんと言っても、土台になりますのは「姿勢を正す」ことですね。顎を引いて、背筋を真っ直ぐ立てて、腰を立てるんですね。と言いますのは、私どもの心身両面でのいろんな営みを全部纏めて統御している脳の働き―脳から出ましたいろんな神経系をわれわれの全身に伝えるための脊髄がわれわれのまさに大黒柱ですから、その大黒柱を真っ直ぐに立てる。そして脳からの働きがスムーズにいくようにする。これくらい健康に必要なことはないわけですね。その一番簡単なことが一般になかなか行われていないんですね。
井筒屋: そうですね。
これは、平成三年九月十五日に、NHK教育テレビの
「こころの時代」で放映されたものである
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