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2016年03月26日

557話 推薦

野球選手として、高校から特待などで推薦される

には、龍太郎には大きな欠点がある。


それは体格である。


その証拠にセンバツ高校野球で、私学で特待生を

集める名門高校の選手一覧で身長をチェックした時、

170cm以上、180cm越えの分布が多いほど、

高校野球に力を注いでいる印象が否めない。


しかしながら、野球は9人のチームであり、そのポジションや

打順に個性や特性があり、龍太郎が割り込む余地があること

を信じている。


センバツ高校野球を見ても、「龍太郎のほうが上手いじゃん。」

とつぶやくシーンは多い。


部活を終えて帰宅し、挨拶もしないで2階に上がっている

龍太郎に中央への異動が濃厚となった龍之介は声をかけた。


「龍太郎、ご飯食べたの?」


龍太郎はゲームをしていた。時間はPM10:30時計


「食べてない。ご飯出来たって言われてないもん。」


龍之介は呆れたふらふら


「いくらご飯造ってもらえないからと言っても、スポーツ選手

なら、栄養とらなきゃダメだろう。自分で適当に作って食べりゃ

いいじゃん。   ところで・・・ 」


龍之介は話をすることを少し溜めた。


「龍太郎。お前がゲームばっかりしたり、友達イッパイ作って一緒に

 遊んだり、楽しいことだけして満足している。それは快楽という

 ことで、それはあの麻薬と同じことなんだよ。止めようと思っても

 なかなか止められない。それを許してくれる優しい親が欲しいの?

 お前が将来ダメになっても良いと思う無責任な親がいいの?」


「ダメになってもいいじゃん。」


龍太郎はベットにうつぶせになって顔を隠した。


本心ではないのだろう。


龍太郎も色々悩んでいるのだ。



「野球を真剣にしようという意志は今はあるの、それとも

 ないの?気持ちを聞かせてほしい。

 例えば中央から特待で推薦されてやるとか、そんなことは

 思ってもないのかなぁ?


 俺は今でもお前の可能性を信じてるよ。


 このまま何も言わないで、姉の時のように後悔するよりも、

 お前が大人になった時後悔させるよりも・・・

  
 嫌われてでも俺はしつこく言い続ける親でいるよ。

 お前に後悔させたくない。俺らも後悔したくない。


 お前は絶対にやれると俺は信じてるから。 」


そう静かに話すと龍之介は部屋を出た。



晴れ翌朝、龍太郎が部活に行った後、龍太郎の部屋から朝陽

が光々と漏れていたぴかぴか(新しい)


比較的整理された部屋に、少々の食べ散らかしたゴミと

飲みほしたコップに気が付いた龍之介はそれらを片づけ

ようとした。

部屋を出ようと振り返った龍之介は、整理された机の上に

置かれたある賞状に目が行った。



「んっ目 なんの賞状だろう?」



それは、ジュニアの卒団証書


小学生としては、それはそれはとてもきつい練習内容。

それらに掛けてきた長すぎる時間。


優しく、厳しく、熱く、激しい龍之介とそれを信頼したり不満に

思ったりしながら頑張り、確実に成長をしてついに成功を収め

た龍太郎。


その卒団証書を見ながら、現在の龍太郎はどのように考えたのだろう。


それを想像した龍之介は今、涙を流しながらキーボードを叩いている。


優しくありたい。しかし厳しくあるのが親父である。


龍之介の涙は止まることがなかった。






「もしも、親父のことを理解できる時がきたなら、

中央で一緒にまた頑張ることだってできるんだよ。」





「やればできる」は魔法の言葉ペン


 






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