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2022年11月19日

カルダノにとってプレマイニングされたADAは大きな問題。そんな神話を打ち砕く。







2022年11月3日に配信した内容の記事

【引用元】
Myth busting: Pre-mined ADA is a big issue for Cardano

プレマイニングされたコインを使用すると、そんなプロジェクトは詐欺に違いないと主張する人がいる。公平なコインの分配ができるのは、マイニングに参加した人に報酬が行くPoWコンセンサスだけだというのだ。ADAコイン(以下、ADA)は、2015年から2017年にかけて一般向けに販売された。ここでは、カルダノが「プレマイニングされた」というだけで詐欺なのかどうかを考察する。

要約
●「プレマイニング」とは、コインが公開される前、もしくはブロックチェーンが起動する前のコインの採掘をいう。
●カルダノはプレマイニングされたADAを公平に分配していた。
●ビットコインがローンチした当時は、さほど分散化されておらず安全でもなかったが、気にする者はいなかった。現在は、ブロックチェーンがローンチするのはそう簡単ではない。最初からセキュリティーがしっかりしていなければならないからだ。
●Satoshiはビットコインを1,125,140枚所有している。その枚数はプレマイニングされたものと考えていいのか。
●ブロックチェーン・ネットワークを生成したチームはいずれも報酬を得るに値する。
●イニシャルコインの分配にVCファンドが参入することの意味合いを知るのは良いことだが、プロジェクトそのものに致命的な影響を及ぼすとはかぎらない。
●ADAの初回販売は中央集権的に実施されたが、このことが現在のカルダノネットワークの分散化に影響を及ぼしたわけではない。
●カルダノはPoSコンセンサスに切り替わった初日に分散化された。
●初回のADAの配布を気にする人がほぼいないのは、Satoshiのコインを気にしない人が多いのと似たようなものである。

ブロックチェーンを安全に立ち上げるには

パブリックブロックチェーンを安全に立ち上げるのは、比較的複雑な作業である。ビットコインのネットワークが公開されたとき、それを知っていたのはSatoshiと数人の友人だけだったため、Satoshiにとっては簡単だった。それは実験的なものであり、仮に洟から失敗していたとしても、多くの人が経済的損失を被ることはなかったのだ。ハッシュレートの大きさから見て、51%攻撃が比較的容易だったのに、それを試みる者はいなかった。多くの愛好家がラップトップでBTCの採掘を始めたが、コインに市場価値がなかったため、多くの場合、単なる楽しみのためだった。

マイナーが徐々にマイニングに関与するようになるにつれ、ハッシュレートも増えていった。これは、ハッシュレートは上がっているが、マイニングに関わることが難しくなっていることを除けば、現在も同じである。このため、小規模なマイナーが減少し、代わりに少数の起業家の手中に収まるような大規模なマイニングホールが建設されている。

今日、状況は違ってきている。事実上、いつでも攻撃が可能であるため、ブロックチェーン・ネットワークの立ち上げは、最初の段階であっても、以前より困難になっている。カルダノは、IOHK、カルダノ財団、Emurgoの3つの主体によって維持される少数のノードによる連合ネットワークとしてスタートした。2020年、Proof-of-Stakeコンセンサスに移行し、移行期間中にADAがユーザーに十分行き渡るよう分配する必要があった。

カルダノのセキュリティーは、ビットコインと同じように最小から最大へと数年をかけて徐々に成長するというわけにはいかなかった。PoSへの移行期には、分散性と安全性を可能な限り高くしておく必要があり、プロジェクトの目標は、セキュリティーを維持し、それを高め続けることが理想だった。

黎明期には、ビットコインのセキュリティーや分散性が低くても気にする人はいなかった。ビットコインのローンチ後、採掘された1ブロックあたりの報酬は50BTCだった。Satoshiは1,125,150BTCを採掘し、これは現在まで使われておらず、計22,500ブロック分に相当する。Sastoshiはおそらく2009年1月から7月にかけて自身で採掘したと考えられる(一人で採掘したと仮定すると、これだけのブロックを採掘するには156日かかる)。実はチーム全体がSatoshi Nakamotoというペンネームの背後に隠れているかどうかはわからないが、そのことはあまり重要ではない。

PoSに切り替わる前、カルダノのテストネットに登録し、自分のプールを始めようと思えば、それは誰にでもできた。ADAの所有者はテストネットでステーキングを学んだ。プールの運営者とステイカーは教育・訓練を受ければ、カルダノメインネットでのPoSへの移行が可能になった。テストネットでは、test-ADA(tADA)を獲得することができ、この報酬がカルダノのメインネットに移され、人々に渡された。

希望すれば誰でもADAを購入し、カルダノネットワークの立ち上げに参加することができた。

プレマイニングされたコインとは何か

「プレマイニング」という用語は、コインが公開される前、もしくはブロックチェーンが起動する前のコインの採掘を指す。プレマイニングは、利害関係者に販売する前に内部グループのためにコインを生成するプロセスとその実践の両方をいう。このプロセスは本質的に中央集権的であり、通常はブロックチェーン・ネットワークの立ち上げを計画しているチームによって管理されている。

プレマイニングは、新興企業の新規株式公開(IPO)前に従業員に株式を提供する慣行に似ている。暗号通貨界では、開発などの資金調達のために、チームがコインの一部を保有するのが一般的である。また、一部のコインは利害関係者に売却される。コインの販売が公正であるかぎり、原則としてこのプロセスには何の問題もない。

私たちの観点では、コインの売却は入札者全員にとって公平でなければならない。もし、チームがコインのうちかなりの枚数を自身やベンチャーキャピタルファンドのためにとっておいて、全体のうちほんの一部しかパブリックセールに充てていないのであれば、このコインの分配は公正であるとは言えない。たとえば、コインのセールを数回に分けて実施し、最初のラウンドにはベンチャーキャピタルファンドと高額入札者だけを招待するというようなやり方はダメだ。初回ラウンドのコインをその後に続くラウンドより安くするのは構わない。通常、少額の入札者は、コインの総数のうち少しの割合しか購入できず、しかも不運なことに高値で入札することになる。

いかなるプロジェクトも、とりわけ未来のユーザーのことを思えば、コインの分配はできるだけ公平にすることを目標とすべきだ。初回のコイン配布にありがちな問題点とは、最も儲かる購入の時期が最初の短期間であり、後から来た人は皆、何らかの不利益を被ってしまうことである。しかも、最初の時期に買うのが最も有利であったという事実は、たとえばブロックチェーンがローンチした5年前やパブリックセールによってコインを流通させた当初よりもコインの市場価値が高くなった現在の状況下でやっと明らかになったのだ。

もちろん、失敗するリスクはプロジェクトの初期段階の方が高い。カルダノで言えば、パブリックセールで最初にコインを流通させた関係者が最も大きなリスクを負ったと言える。今日、コインの購入者は、カルダノのネットワークが機能し、チームが最初に約束したものを提供できていることを確認できるため、リスクが少ない。

多くのプロジェクトに関する非難でよくあるのが、プロジェクトが約束したことが実現した時点でコインを投げ売るVCファンドの参入である。コインの市場価値は、後から来た入札者が購入することによって数倍になっていた可能性もある。VCファンドは、プロジェクトのマーケティングやプロモーションを支援し、パートナーシップを組むことも可能である。最初のコインの流通にVCファンドが関わると、利益が出たときにコインを売却するリスクは常にある。その結果、コインの市場価値が大きく下落することもある。

VCファンドの参入が何を意味するかを知るのは大事である。しかし、プロジェクトそのものに致命的な影響を及ぼすとはかぎらないと言うことも重要である。ユーザー数を十分に集めれば、プロジェクトはこの段階を乗り越え、成功することができる。コインを所有することに経済面での合理性があれば、コインの価値は再び上昇する可能性がある。これは個人にも言えることで、合意形成(コンセンサス)の意思決定力を分散させ、所謂プロジェクトを分散化させるためにコインが用いられれば、通常は有利に働く。

プレマイニングされたADAの販売

カルダノは、プレマイニングされたADAを公平に分配していた。ADAバウチャーの流通は、2015年10月から2017年1月初旬までアジアで4段階に分けて実施された。チームは将来起こりうる問題を避けたいと考え、KYC(Know Your Customer)のガイドラインに従った。暗号通貨界隈では初めてのことだ。さらに、配布のプロセスについても監査が実施された。VCファンドは明示的には招待されておらず、著者の知るかぎりでは、VCは参加していなかった。

一般向けには259億2707万538枚のADAが販売された。これは最大供給量の450億枚の約57%に相当する。Genesisブロック(最初のブロック)では、ADAはカルダノ財団、Emurgo、IOG (IOHK)と、3つの団体に分配された。カルダノ財団は6億4817万6761ADA、Emurgoは20億7416万5644ADA、IOGは24億6307万1701ADAを受領した。セールでは108,844.5BTCを稼ぎ、8,000BTC以上がカルダノ財団に寄付された。

プロジェクト開始時には、合計311億1248万464ADAが配布された。138億8751万5354ADAがカルダノプロトコルのために確保され、現在は通貨拡大(報酬とプロジェクトのtreasury[財務金庫])を経由して流通している。

ADAの初回セールは中央集権的に実施されたが、このことが現在のカルダノネットワークの分散化に影響を及ぼしたわけではない。カルダノの所有者は、ADAを保有する人々である。ADAは、プールを生成するにも、プールに権限を委任するにも重要である。ブロック生成の観点からは、カルダノは完全に分散化されたネットワークである。ADAの初回セールによって、分散化が確保できたと言える。PoSブロックチェーンを立ち上げるのに、これ以上に優れた方法は他にはないだろう。カルダノはPoSコンセンサスに切り替わった後、初日に分散化された。IOGチームはいくつかのプールを運用していたが、そのことを批判することはできない。それは、ブロックチェーンのローンチ後、しばらくの間、世界で唯一BTCを採掘していたSatoshiを批判するのと同じことになってしまう。ネットワークが円滑に動いているのを確認すべきはチーム以外に誰がいるだろうか。

プレマイニングされたコインを気にする人は本当にいるのか

私たちの見解では、プレマイニングされたADAがカルダノにとって問題になることはない。カルダノはADAを公平に分配していたし、PoSはこれ以上ないほどに優れた方法でローンチできたと思う。かつてコインを買った人も現在コインを買っている人も、そのことで困っていないのであれば、誰が本気で気にするだろうか。

プレマイニングされたコインに対して最も大きな声で批判しているのは、コインを分配できる唯一の公正なシステムはPoWであると信じているPoWネットワークのファンである。ビットコインの場合、プレマイニングされたコインはなく、マイニングこそ、報酬が得られる唯一の手段であるとされている。

Satoshiは当初、BTCを自身で採掘していたため、Satoshiのコインはプレマイニングされたものと考えることができるのを忘れてはならない。Satoshiは、ハッシュレートを提供する報酬としてコインを得たが、私たちからすれば、他の誰も持っていなかった利点だったと言うことができるし、半年間、ラップトップをフルパワーで動かしていても、経済的に高くつくことはなかったと言える。Satoshiは、2100万BTCのうち5%以上を永遠に所有することになる。いかなるチームも、ブロックチェーン・ネットワークを作り上げたのだから、報酬を得るに値する。SatoshiはIOGチームと同じように報酬を手に入れた。それぞれ違う方法で手に入れたとしても、どちらか一方がもう一方よりも良いと言うのは公平ではない。敢えて言うが、多くの人がSatoshiのコインを気にしていないのは、カルダノの場合、ADAの初回の配布を誰も気にしていないのと同じである。なぜそう思うかというと、ほとんどの新規参入者は過去のことはさほど気にせず、むしろ現在と未来を気にするからだ。今時のBTCマイニングは企業が手掛ける事業であって、ほとんどの新規参入者は今から始めようとはしない。それをするくらいなら、BTCは中央集権的な取引所で購入するだろう。新規参入者がコインを買うことを余儀なくされ、ビットコインプロトコルからの報酬としてコインを得る方法がないのなら、プレマイニングされたコインのことなど誰が気にするだろうか。

ADAを購入するのは、ほとんどがステーキングのためだ。購入者は、報酬として新しいADAを手に入れたいと思っている。これは、ネットワークの分散化に対する関心度とみてもよいだろう。ASICマイナーの購入は、基本的にこれと大変よく似た原理である。報酬を得る資格を得るには初期投資をしなければならない。

もし、誰かがADAを買うとしても、コインの初回の分配について知っているであろうし、それを批判しようとはしないだろう。人は、自分の利益が第一で、社会への福祉は二の次なのだ。「コインがプレマイニングされたのだから詐欺に違いない」という議論よりも、プールの運営やステーキングに対する報酬などの方が重要で、その次に分散化の質、実世界での利用、プロジェクトの使命やビジョンといったものが重要なのだ。

IOGチームは今もカルダノプロジェクトに取り組み、新たな改良を加えている。このプロジェクトは2014年に始まり、多くの学術的研究、流動性ステーキングによるPoS、まだハッキングされていないPlutusプラットフォームなどを生み出してきた。IOGチームには、数百人の従業員がいる。ソフトウェア開発は、大変費用の嵩むプロセスであり、開発資金がなければカルダノは、今日のような形でここに存在することはなかっただろう。

結論

ビットコインの誕生に対するSatoshiの貢献を軽んじたいわけではないが、基本的には既存のテクノロジーを組み合わせただけであることを忘れてはならない。PoW、非対称暗号、ブロックチェーン、分散ネットワーク、ハッシュ関数などは、既存のテクノロジーを繋ぎ合わせるだけで十分だった。その成果は素晴らしいものだったが、新しいものを開発するために投資する必要はなかったのだ。IOGチームの努力の賜物によって今日私たちが手にしているものは、プレマイニングされたADAに投資するに値するものであったことは確かである。

ビットコインのローンチという魔法は、PoWにある。ラップトップを走らせ、報酬を待つだけだ。Satoshiではおそらく、PoSネットワークを立ち上げることはできなかっただろう。なぜなら、初回のコイン配布の時点で問題にぶつかっていたことが考えられるからである。プールの運営やステーキングには、コインの所有権が必要となる。Satoshiがしばらくの間、興味を示す人に無料でコインを送り、その後、その他の人が公開市場で買わなければならないとしたら、公平ではないということになる。チームが違う方法でブロックチェーンを立ち上げたことを理由にカルダノを批判するのは愚かなことである。他にも多くのネットワークがあって、ハッカーが攻撃の準備をしている時にPoSブロックチェーンを実行するには、2009年とは異なるアプローチが必要だった。IOGチームはそれを正しく実行しており、プレマイニングされたADAは問題にはならない。少なくとも、多くの批評家が考えるほど大きな問題ではないはずだ。

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以上をご了承の上でご利用ください。

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