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2019年09月03日

開化天皇を祀る 猫大明神【熊本県荒尾市】

猫大明神【熊本県荒尾市】

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由来は不明ですが「猫社(ねこじゃ)さん」と呼ばれるまつりが
毎年一月十日に今も行われています。

このまつりに因んだ話のなかに「せなが長者」があります。

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「せなが長者」

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昔、この付近の入江に出入りしていた唐船との貿易によって
栄えていた「せなが長者さん」は、
このあたりには勝てる犬や猫はいないという、
とても喧嘩が強い猫を飼っていました。

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あるとき、とある唐船の船主さんが、
長者さんと酒を酌み交わしているうちに、この猫の話を聞いて、

「お互いの宝物を賭けて、私の犬と勝負しましょう」

と申し出ました。

船主さんの犬も、
これまで喧嘩に負けたことがない犬だったからです。

長者さんは即座に承知しました。

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猫と犬はすさまじい闘いをして、その果てに猫が勝利し、
犬は死んでしまいました。

そこで、長者さんは「金の茶釜」を手に入れ、
これは間もなく荒尾郷を治めていた小代家に献上されました。

しかし、自慢の猫は、闘いによる深手が原因で、
二、三日後に死んでしまいました。

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長者さんはこれを哀れんで、祠を建てて霊を慰め、
これが「猫宮」となったそうです。

まつりの日には、「猫大明神札」という御札が配られます。

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「猫大明神札」の御利益は、
ねずみ除け・家事災厄除け・金運上昇・無病息災(人・猫)
安産・交通安全(猫)だそうです。

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ちなみに小代家に献上された「金の茶釜」は、
小代氏の手によって小岱山山頂の筒ヶ嶽城の井戸に投げ込まれ、
大岩によってふさがれたという伝説も残っています。


猫宮の謎

「猫宮」の由来は、「せなが長者の話」とされていますが、
いくつかの謎があります。

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小代氏が「金の茶釜」を投げ込んだ井戸のある筒ヶ嶽城は
15世紀〜16世紀とされますから、室町時代と考えられます。

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野原八幡宮

しかし、肥後国 野原八幡宮祭礼史料に、
元享二年(1322年)猫宮三郎太夫が、小行事を担当した記録があり、
鎌倉時代には「猫宮」が存在したことになります。

さらに、荒尾市史・通史編によると、
御神体は古墳時代(5〜6世紀)の舟形石棺から切り落とされた
縄掛け突起部分で、菊池川流域から持ち込まれたものです。

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荒尾近隣にて出土したものではありませんから辻褄があいません。

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御祭神は、稚日本根子彦大日日天皇
(ワカヤマトネコヒコオオヒヒノスメラミコト)

第九代 開化天皇です。

古事記・日本書紀では記載が非常に少ない
欠史八代(第二代〜九代の天皇)の一人です。

神社考古学ではその名のとおり
「ヤマトの国の根っ子」となった天皇とされ、
別名「ネコさま」と呼ばれ、
福岡県の猫坂、猫峠、猫尾城、若宮、阿蘇の根子岳に
関連があるとされます。

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高良大社

また、高良大社に祀られる高良玉垂命の俗称(愛称)猫様で、

高良玉垂命=開化天皇説もあり、

その離宮がこの地にあったのではないかともいわれています。

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宮地嶽神社

住吉神社、宮地嶽神社、松尾神社、日枝神社=日吉神社、
比叡山延暦寺の山王権現、山王大社にも深く関係しています。

古事記・日本書紀の記述とは異説をなしますが、
中国の史記に、紀元前1000年頃の周に、
後の呉を起こした太伯の弟・虞仲の子孫である夫差が
紀元前473年に越に亡ぼされた際に、
一族が海を渡り倭国をなしたという記載があります。

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呉の太伯王の末裔であると称した
「松野連系図」(国立図書館所蔵)という、日本側の記録にも
「孝昭三年来朝。火の国 山門に住む。菊池郡。」ともあり、
系図は、神武天皇や倭の五王などと共に開化天皇も連ねています。

開化天皇に関する一族が菊池川流域で「猫宮」のもととなりました。

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せなが長者のはなしは、663年の白村江の戦いで
日本軍(ネコ)が唐・新羅連合軍(イヌ)
に敗れ、多くの兵が帰国後亡くなったことを
隠喩したのではないでしょうか。

藤原氏が編纂した日本書紀で欠史扱いされるようになり
公には語られなくなったためです。

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菊池川

何らかの理由で、荒尾の地に一族が移動する際に、
開化天皇に関係のあった、菊池川流域の首長級の先祖の古墳から
石棺の一部を切り取りシンボルとして持ち込んだのです。

その後、貿易で大成功した一族が「せなが長者」として、
猫と犬の喧嘩のエピソードに代え「猫宮」の由来にあてたのでしょう。

とても古い由来を持っていることが伺えます。

鎮座地
熊本県荒尾市一部猫宮





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