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2019年06月04日
家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨 <21 叔母の最期>
叔母の最期
ある朝、叔父からいつになく取り乱した声で電話がかかってきた。「梨花が倒れた。今救急車を呼んだ。意識が朦朧としてしゃべれないんだ。」
叔父の家に駆け付けた時には、キッチンのカウンターの下に倒れた叔母に叔父が毛布を掛けていた。「卒中だったら動かしてはいけないだろう。」とそばに寄り添って救急車を待っていた。待つ間、叔父はずっと叔母の手のひらや腕をさすっていた。
僕は慌てて火の元を確認した。真梨は入院の準備をした。絵梨と純一は叔父と並んで同じように腕や足をさすった。叔母は明徳第二病院に運ばれた。この近辺では大きな病院だった。
叔母の卒中発作は二度目だった。一度目は朝起こしても目覚めないので救急車を呼んだ。病院でしばらく寝ている間に普通に目覚めた。脳梗塞だといわれた。最初の発作の時に叔父は自分が叔母の健康状態に鈍感だったと、ひどく気に病んだ。
それでも叔母は普通の生活をしていて僕たち一家が行くといえば夕食の準備に大張り切りする。しかし叔母が実際に大人数の夕飯を作ることは叔父が許さなかった。叔母をおだて倒して出前を取る。
「絵梨や純一は梨花と話したいそうだよ。梨花が忙しいと面白くないらしい。」「真梨が教えてほしいことがあるようだ。和服のことは君が詳しいからね。」といった具合だ。
今度の発作で叔母は危篤状態に陥った。叔母は意識がうっすら戻る時と眠っている時を行きつ戻りつしながら2日たった。叔父はほぼ不眠不休だった。叔母のベッドの横の椅子に座って手をさすっていた。
叔母がかすれた声で何かうわごとを言った。「真ちゃんが大好き・・。」というと眉間にしわをよせた。「ママ。ママ。苦しい?苦しいの?」真梨がすこし大きな声を出した。叔父は「真梨、ちょっと二人にしてほしい。」といって叔母の手を握った。
僕たちが病室を出るとき、叔父は確かに言った。「大丈夫。すぐ行くよ。すぐ行く。直ぐだよ。すぐだ。」と叔母の耳元で何度もささやいていた。そして僕たちが病室に戻った時には叔母はもう安らかな表情になっていた。少し微笑んでいるようにも見えた。
それから病室は急にバタバタしだしたが蘇生は行われなかった。叔父の意思だった。叔父は粛々と葬儀をこなし叔母の遺言書を真梨にあずけた。もう僕たちが内容をよく知っている遺言だった。絵梨と純一には同額の遺産が残されていた。叔父や僕たち夫婦と相談して決められた配分だった。僕がその処理を任されていた。
僕は叔父の言葉が気になってしょうがなかった。「お義父さん、病室でお義母さんと二人きりになった時すぐ行くよって何度も言ってた。絶対お義父さんから目を離したらいかん。あぶない。」と真梨にいった。
「あなた、いいのよ。パパの好きなようにしたら。ママあってのパパ。パパあってのママだから。ホントに仲良かったの。」真梨はある程度の覚悟はしているようだった。
「パパもあなたを信用してるし、今は純一も絵梨もいるんだから、パパもあんまり思い残すこともないと思うの。好きなようにさせてあげたいの。パパが今、気になるのは、ママがあっちで道に迷わないかってことだけかもしれないの。」
叔母は軽い認知症が出ていた。去年の冬、歯医者に行った叔母が「帰り方がわからない。」と電話してきたことがあった。叔父は歯医者のあるショッピングセンターを走り回って叔母を探し出して連れて帰ってきた。
それ以降、叔父は完全に仕事を辞めて日々叔母と行動を共にしてきた。叔母は道がわからなくなる、住所が言えない以外は普通だった。それでも火の用心が不安だった叔父は家中をすべて電気にしてしまった。
おもしろくて、おしゃれで、いつまでもきれいなおばあちゃんだった。叔父は雑踏の中では叔母と腕を組んだり手をつないだりした。叔父は叔母を1人では逝かせられないだろう。そんな気がした。
続く
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ある朝、叔父からいつになく取り乱した声で電話がかかってきた。「梨花が倒れた。今救急車を呼んだ。意識が朦朧としてしゃべれないんだ。」
叔父の家に駆け付けた時には、キッチンのカウンターの下に倒れた叔母に叔父が毛布を掛けていた。「卒中だったら動かしてはいけないだろう。」とそばに寄り添って救急車を待っていた。待つ間、叔父はずっと叔母の手のひらや腕をさすっていた。
僕は慌てて火の元を確認した。真梨は入院の準備をした。絵梨と純一は叔父と並んで同じように腕や足をさすった。叔母は明徳第二病院に運ばれた。この近辺では大きな病院だった。
叔母の卒中発作は二度目だった。一度目は朝起こしても目覚めないので救急車を呼んだ。病院でしばらく寝ている間に普通に目覚めた。脳梗塞だといわれた。最初の発作の時に叔父は自分が叔母の健康状態に鈍感だったと、ひどく気に病んだ。
それでも叔母は普通の生活をしていて僕たち一家が行くといえば夕食の準備に大張り切りする。しかし叔母が実際に大人数の夕飯を作ることは叔父が許さなかった。叔母をおだて倒して出前を取る。
「絵梨や純一は梨花と話したいそうだよ。梨花が忙しいと面白くないらしい。」「真梨が教えてほしいことがあるようだ。和服のことは君が詳しいからね。」といった具合だ。
今度の発作で叔母は危篤状態に陥った。叔母は意識がうっすら戻る時と眠っている時を行きつ戻りつしながら2日たった。叔父はほぼ不眠不休だった。叔母のベッドの横の椅子に座って手をさすっていた。
叔母がかすれた声で何かうわごとを言った。「真ちゃんが大好き・・。」というと眉間にしわをよせた。「ママ。ママ。苦しい?苦しいの?」真梨がすこし大きな声を出した。叔父は「真梨、ちょっと二人にしてほしい。」といって叔母の手を握った。
僕たちが病室を出るとき、叔父は確かに言った。「大丈夫。すぐ行くよ。すぐ行く。直ぐだよ。すぐだ。」と叔母の耳元で何度もささやいていた。そして僕たちが病室に戻った時には叔母はもう安らかな表情になっていた。少し微笑んでいるようにも見えた。
それから病室は急にバタバタしだしたが蘇生は行われなかった。叔父の意思だった。叔父は粛々と葬儀をこなし叔母の遺言書を真梨にあずけた。もう僕たちが内容をよく知っている遺言だった。絵梨と純一には同額の遺産が残されていた。叔父や僕たち夫婦と相談して決められた配分だった。僕がその処理を任されていた。
僕は叔父の言葉が気になってしょうがなかった。「お義父さん、病室でお義母さんと二人きりになった時すぐ行くよって何度も言ってた。絶対お義父さんから目を離したらいかん。あぶない。」と真梨にいった。
「あなた、いいのよ。パパの好きなようにしたら。ママあってのパパ。パパあってのママだから。ホントに仲良かったの。」真梨はある程度の覚悟はしているようだった。
「パパもあなたを信用してるし、今は純一も絵梨もいるんだから、パパもあんまり思い残すこともないと思うの。好きなようにさせてあげたいの。パパが今、気になるのは、ママがあっちで道に迷わないかってことだけかもしれないの。」
叔母は軽い認知症が出ていた。去年の冬、歯医者に行った叔母が「帰り方がわからない。」と電話してきたことがあった。叔父は歯医者のあるショッピングセンターを走り回って叔母を探し出して連れて帰ってきた。
それ以降、叔父は完全に仕事を辞めて日々叔母と行動を共にしてきた。叔母は道がわからなくなる、住所が言えない以外は普通だった。それでも火の用心が不安だった叔父は家中をすべて電気にしてしまった。
おもしろくて、おしゃれで、いつまでもきれいなおばあちゃんだった。叔父は雑踏の中では叔母と腕を組んだり手をつないだりした。叔父は叔母を1人では逝かせられないだろう。そんな気がした。
続く
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THE SECOND STORY 俊也と真梨 <20 ペアブロッサム>
ペアブロッサム
叔父夫婦もいいおじいちゃんとおばあちゃんになった。叔父はこのころ榊島に有料老人ホームを建設し始めていた。小規模な施設で市とタイアップしたものだった。住民用の老人福祉施設は市が作っている。どちらかといえば外部の富裕層を市内に呼び込むための施設だ。ペアブロッサムというおしゃれな名前がついていた。叔父のアイデアだ。
あまり、大規模な施設より小規模ホテルのようなものの方が負担も少なく転用しやすいという叔父の考えだ。どうも叔父は夫婦でこちらに住みたい気持ちもあるようだった。だが叔母に軽い認知症が出た時点で断念した。医師から環境を変えるのは良くないといわれたからだ。
もともと田原の家は榊市とは縁が深い。今の市長は田原真輔という僕たちの祖父に当たる人を知っているらしい。
僕たち4人家族と、叔父夫婦は徒歩5分ぐらいの場所で暮らした。叔父は自分はあまりしゃべらないが賑やかなことは大好きだった。僕らは、しょっちゅう叔母の夕飯をごちそうになった。なんということもない平凡な日々だった。僕は相変わらず真梨の術中にハマり幸福で過酷な毎日を過ごしていた。
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