2019年04月12日
家族の木 THE FIRST STORY 真一と梨花
婚姻届け
最近は僕は大阪でも仕事をした。必要な資料はコンパクトにまとめて持ってきていた。仕事の資料には金目のものがないので常時車に積んでいた。少しぐらいなら滞在しても仕事ができる。
依子さんは退院して田原の家で暮らすことになった。そろそろ、梨花を東京へ連れて帰る時が来た。
「そろそろ、東京へ帰ろうか?依子さんもここへ来るし。」僕は何気なく、ママと梨花の前でそういった。ママは激怒した。出産は里帰りしてするものだ。なんでわざわざ東京で生む必要がある?今ここにいるのに、なぜ東京へ行く必要がある?と一歩も譲らない。
梨花も東京へ行くのは怖い、もういい年だから流産でもしたらどうするのだと、やはり大阪での出産を望んだ。
僕は、梨花と子供を早く自分の領分に連れて帰りたくてしょうがなかった。それでも、出産は大阪ですることになった。僕は大阪と東京の二重生活を余儀なくされたのだった。
依子さんが来て、大阪の家は騒々しかった。僕は根を詰めなければならないときには東京へ帰った。東京でコンビニ食と外食を繰り返していた。あと半年もすれば、この暮らしも終わるとおもうと感慨深いものがあった。
婚姻届けを一人で出してきた夜、梨花に報告の電話をした。「いやあ、今日から私、真ちゃんの奥さんやね。嬉しい。せやけど苗字変われへんから、ちょっと盛り上がりに欠けるねえ。ママにも言っとく。」
「盛り上がりに欠けるって、こっちも譲歩したんだよ。」僕は憤慨した。
梨花は、「ごめんごめん、近いうちに、親戚集まって軽い宴会することになると思う。まあ、パパとママの兄弟の家族だけやから気は使うことはないんよ。ていうか、面白い人ばっかりやから。」梨花は僕が怒っても全く意に介しなかった。
ああ、やっぱり面倒なことになってきたと思った。僕は親戚づきあいというものを知らない。どうふるまえばいいのかわからない。しかし、親戚に紹介もされないのも問題だ。きちんと挨拶しなきゃ子どもが親せきに認められなくなるじゃないかと自分の尻を叩いた。
その夜、例の新聞社の友人から電話がかかってきた。彼のおかげで書評やコラムの仕事があった。一応名前は知られていたので多少の収入にはなった。ショートストーリーのようなものも書いていた。
「先生、元気かい?」友人は相変わらず僕を先生と言ってからかった。
「ありがとう元気だよ。双風社からも順調に仕事をもらってる。大新聞からの紹介は手堅いね。助かったよ。」僕は彼の好意に礼を言った。
「また忙しそうにしているから、ああいう儲からん仕事は断りたいのかなと思って電話した。実は先方はお前のことを気に入っている。もうちょっと続けて欲しいらしいんだが。」うれしい言葉を聞いた。その出版社は僕の仕事を評価してくれている。
「もちろん、続けさせてもらうよ。」好きな仕事がつながってホッとした。
「そりゃあよかった。なんだか落ち着いたなあ、先生。」と言われた。
僕は「実は結婚したんだよ。例の遠縁の娘と。」と報告した。
「そりゃあ、おめでとう。思い人と一緒になれたんだ。落ち着くはずだ。載せてもいいかい。」「おう、地味に頼む。」ここでも一件落着した。
翌日の夕刊に本当に地味に出ていた。「推理作家、島本真一氏結婚」新聞記事が出た夜、真知子から電話があった。自分も結婚するという話だった。僕は心の底から喜んだ。結婚すれば自分の過去の男のことで損害賠償などしないだろう。狡い計算をしていた。
翌日仕事関係の電話がかかって本当か?と確認された。本当だと答えて終わった。その翌日も電話がかかってきたので、本当だと答えて終わった。
この時点で田原梨花の名前はどこにも出ていない。家族と親戚と親しい友人しか知らない地味な結婚だった。僕は地味なことが好きなんだということを最近自覚した。
続く
最近は僕は大阪でも仕事をした。必要な資料はコンパクトにまとめて持ってきていた。仕事の資料には金目のものがないので常時車に積んでいた。少しぐらいなら滞在しても仕事ができる。
依子さんは退院して田原の家で暮らすことになった。そろそろ、梨花を東京へ連れて帰る時が来た。
「そろそろ、東京へ帰ろうか?依子さんもここへ来るし。」僕は何気なく、ママと梨花の前でそういった。ママは激怒した。出産は里帰りしてするものだ。なんでわざわざ東京で生む必要がある?今ここにいるのに、なぜ東京へ行く必要がある?と一歩も譲らない。
梨花も東京へ行くのは怖い、もういい年だから流産でもしたらどうするのだと、やはり大阪での出産を望んだ。
僕は、梨花と子供を早く自分の領分に連れて帰りたくてしょうがなかった。それでも、出産は大阪ですることになった。僕は大阪と東京の二重生活を余儀なくされたのだった。
依子さんが来て、大阪の家は騒々しかった。僕は根を詰めなければならないときには東京へ帰った。東京でコンビニ食と外食を繰り返していた。あと半年もすれば、この暮らしも終わるとおもうと感慨深いものがあった。
婚姻届けを一人で出してきた夜、梨花に報告の電話をした。「いやあ、今日から私、真ちゃんの奥さんやね。嬉しい。せやけど苗字変われへんから、ちょっと盛り上がりに欠けるねえ。ママにも言っとく。」
「盛り上がりに欠けるって、こっちも譲歩したんだよ。」僕は憤慨した。
梨花は、「ごめんごめん、近いうちに、親戚集まって軽い宴会することになると思う。まあ、パパとママの兄弟の家族だけやから気は使うことはないんよ。ていうか、面白い人ばっかりやから。」梨花は僕が怒っても全く意に介しなかった。
ああ、やっぱり面倒なことになってきたと思った。僕は親戚づきあいというものを知らない。どうふるまえばいいのかわからない。しかし、親戚に紹介もされないのも問題だ。きちんと挨拶しなきゃ子どもが親せきに認められなくなるじゃないかと自分の尻を叩いた。
その夜、例の新聞社の友人から電話がかかってきた。彼のおかげで書評やコラムの仕事があった。一応名前は知られていたので多少の収入にはなった。ショートストーリーのようなものも書いていた。
「先生、元気かい?」友人は相変わらず僕を先生と言ってからかった。
「ありがとう元気だよ。双風社からも順調に仕事をもらってる。大新聞からの紹介は手堅いね。助かったよ。」僕は彼の好意に礼を言った。
「また忙しそうにしているから、ああいう儲からん仕事は断りたいのかなと思って電話した。実は先方はお前のことを気に入っている。もうちょっと続けて欲しいらしいんだが。」うれしい言葉を聞いた。その出版社は僕の仕事を評価してくれている。
「もちろん、続けさせてもらうよ。」好きな仕事がつながってホッとした。
「そりゃあよかった。なんだか落ち着いたなあ、先生。」と言われた。
僕は「実は結婚したんだよ。例の遠縁の娘と。」と報告した。
「そりゃあ、おめでとう。思い人と一緒になれたんだ。落ち着くはずだ。載せてもいいかい。」「おう、地味に頼む。」ここでも一件落着した。
翌日の夕刊に本当に地味に出ていた。「推理作家、島本真一氏結婚」新聞記事が出た夜、真知子から電話があった。自分も結婚するという話だった。僕は心の底から喜んだ。結婚すれば自分の過去の男のことで損害賠償などしないだろう。狡い計算をしていた。
翌日仕事関係の電話がかかって本当か?と確認された。本当だと答えて終わった。その翌日も電話がかかってきたので、本当だと答えて終わった。
この時点で田原梨花の名前はどこにも出ていない。家族と親戚と親しい友人しか知らない地味な結婚だった。僕は地味なことが好きなんだということを最近自覚した。
続く
ピュアプラセンタは優れた栄養バランスでお肌を整えてくれます。プラセンタとは胎盤のことです。胎盤は赤ちゃんを守って成長させるための様々な栄養素を含んでいます。
それに加えて、優れた抗酸化成分であるアスタキサンチンがお肌を紫外線などのダメージから守ります。またレスベラトロールも優れたポリフェノールで赤ワインに含まれていることで有名です。
サプリメントなので体の内部からお肌の老化を緩和します。
それに加えて、優れた抗酸化成分であるアスタキサンチンがお肌を紫外線などのダメージから守ります。またレスベラトロールも優れたポリフェノールで赤ワインに含まれていることで有名です。
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