2019年04月06日
家族の木 THE FIRST STORY 真一と梨花
父の心構え
人生は突然変化する。ずっと一人で世間に虚勢を張って生きてきた僕が、ここへきて急に父親になる。父親、父親、なんと優しい響きだろう。
母が結婚する時、亡くなった時、僕にはなぜ父親がいないのだろうと自分の運命を呪っていた。こんな時に父親がいてくれたら、どんなに助けられただろうと、いつも父親がいないことを悲しく思っていたが祖父母には言えなかった。彼らは一人娘を亡くして僕を生きがいにしていたのだから。
それが、どうだ。今、僕は父親になろうとしている。運命は、無意識のときに本人には知らせずに、そっと動く。
その日は泊まらずに帰った。すませなければならない仕事があった。もう、いい加減なことはできない。生活の形を整えなくてはいけない。電話で引っ越しのスケジュールを打ち合わせようと思っていた。
それまでに部屋の準備をしなくてはいけない。いやいや、梨花に経済的な話をしなければならない。梨花は納得するだろうか?いや納得させなければならない。子供のことが最優先だ。幸福感を味わえる家庭にしなくてはいけない。
家庭?それってなんだ?僕は普通の家庭の味を知らない。そんな人間に家庭がもてるか?
僕は父親の味をあまり知らない。父親ってどんな風にふるまうんだ?自分らしく振舞えばいいのか?いや違う。自分らしくてはだめだ。立派な行動をとらなくてはならない。喜びと迷いは毎日交錯した。
聡は本気で喜んでくれた。「兄ちゃん、ホンマモンの兄弟になんねんなあ。こうなるって、あの日、初めて会った日、想像もつかへんかった。人間の縁ってわからんなあ。」と感慨にふけってくれるのだ。本当にいいやつだった。
続く
人生は突然変化する。ずっと一人で世間に虚勢を張って生きてきた僕が、ここへきて急に父親になる。父親、父親、なんと優しい響きだろう。
母が結婚する時、亡くなった時、僕にはなぜ父親がいないのだろうと自分の運命を呪っていた。こんな時に父親がいてくれたら、どんなに助けられただろうと、いつも父親がいないことを悲しく思っていたが祖父母には言えなかった。彼らは一人娘を亡くして僕を生きがいにしていたのだから。
それが、どうだ。今、僕は父親になろうとしている。運命は、無意識のときに本人には知らせずに、そっと動く。
その日は泊まらずに帰った。すませなければならない仕事があった。もう、いい加減なことはできない。生活の形を整えなくてはいけない。電話で引っ越しのスケジュールを打ち合わせようと思っていた。
それまでに部屋の準備をしなくてはいけない。いやいや、梨花に経済的な話をしなければならない。梨花は納得するだろうか?いや納得させなければならない。子供のことが最優先だ。幸福感を味わえる家庭にしなくてはいけない。
家庭?それってなんだ?僕は普通の家庭の味を知らない。そんな人間に家庭がもてるか?
僕は父親の味をあまり知らない。父親ってどんな風にふるまうんだ?自分らしく振舞えばいいのか?いや違う。自分らしくてはだめだ。立派な行動をとらなくてはならない。喜びと迷いは毎日交錯した。
聡は本気で喜んでくれた。「兄ちゃん、ホンマモンの兄弟になんねんなあ。こうなるって、あの日、初めて会った日、想像もつかへんかった。人間の縁ってわからんなあ。」と感慨にふけってくれるのだ。本当にいいやつだった。
続く
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