2019年03月25日
THE FIRST STORY 真一と梨花
不快な相談
ある日聡から電話があった。「兄ちゃん、ちょっと折り入って相談があんねん。時間取れる?」
「取れるよ。こっちへ来て、ゆっくりすれば?こっちのおすすめグルメスポットを紹介するよ。」
「僕はしがないサラリーマンやから、土日しかあかんねん。次の金曜の夜いってもええ?」
「おう、来いよ。」
「いいバーへ連れて行くよ。」
「いいよ、兄ちゃん。二人で歩いてたら目立つから。家へ行く。落ち着いて話したいねん。高級な酒とおつまみ用意しといて。飯は、寿司でいいわ。」
割と厚かましいオーダーを受けたが相変わらず聡のことは好きだった。
聡は金曜日の夜10時を過ぎたころにやってきた。「遅なってごめんな。これでも目いっぱい急いで来てんで。」と謝った。寿司を食べながら飲んだ。聡はなかなか要件を切り出さなかった。差しさわりのない世間話が30分以上も続いた。
その中には梨花の噂話も入っていた。最近男と別れたらしい。聡のクライアントが梨花を見染めて始まった付き合いでもう1年になるそうだ。資産家の息子で世間でいう釣り合いの取れた相手だった。
僕には、手の届かない話だった。梨花は機嫌よく付き合っていたらしいが、最近になって、急に別れてしまったらしい。飽きてしまったの一点張りだそうだ。ひょっとしたら僕への思いがあるからではないか?僕は虫のいい希望を抱いていた。
聡がやっと、話を切り出した。
「結婚したい人がおんねんけど、兄ちゃんならどう思うかと思って。」
「僕がどう思うって、関係ないだろう?ママがどう思うかの方が重要だろう。」
「ママは、その人のこと好きなんや。会社の事務員でママのお気に入りや。ママの挨拶状とか全部代筆してる。筆耕ができるんや。時々姉も毛筆の表書きとか頼んでる。前からママもねえもその人のこと好きやねんけど。」
「全く問題ないだろ?ママと姉ちゃんが気に入ってるんだったら他に誰が文句言うんだ?」
「その人の夫が言うかもしれん。」
「えっ、その人既婚?」
「そう、子供もいる。男の子、今4歳。付き合い始めて1年ぐらいになる。」
「もともと、四国の人やのに、家出して子供連れて大阪に住んでる。普通のOLやから暮らしは楽じゃない。これ不自然やろ?普通、親のそばに住めへん?」
「そりゃあ、親元にいられない事情があるのかもしれないなあ。」
「どんな事情や思う?」
「本人に聞くしかしょうがないよね。ここで空想しても何にもならない。」
「兄ちゃん、怒らんといてほしいんやけど・・・・・・。こういう場合、子供はどう思うんやろなあ。」
聡に聞かれて僕はむっとなって黙った。
「母親の恋愛ってどんな感じやった? 失礼な質問ってよくわかってるんやけど。でも兄ちゃんには絶対相談せなあかんと思たんや。」
「お前はホントに失礼だなあ。なんか腹立ちすぎて怒る元気もなくなるわ。」
「ごめん、でも意見聞く相手は兄ちゃん以外には考えられへんかった。」
僕は、自分の苦々しい記憶に嫌でも向き合わなくてはならなかった。
続く
ある日聡から電話があった。「兄ちゃん、ちょっと折り入って相談があんねん。時間取れる?」
「取れるよ。こっちへ来て、ゆっくりすれば?こっちのおすすめグルメスポットを紹介するよ。」
「僕はしがないサラリーマンやから、土日しかあかんねん。次の金曜の夜いってもええ?」
「おう、来いよ。」
「いいバーへ連れて行くよ。」
「いいよ、兄ちゃん。二人で歩いてたら目立つから。家へ行く。落ち着いて話したいねん。高級な酒とおつまみ用意しといて。飯は、寿司でいいわ。」
割と厚かましいオーダーを受けたが相変わらず聡のことは好きだった。
聡は金曜日の夜10時を過ぎたころにやってきた。「遅なってごめんな。これでも目いっぱい急いで来てんで。」と謝った。寿司を食べながら飲んだ。聡はなかなか要件を切り出さなかった。差しさわりのない世間話が30分以上も続いた。
その中には梨花の噂話も入っていた。最近男と別れたらしい。聡のクライアントが梨花を見染めて始まった付き合いでもう1年になるそうだ。資産家の息子で世間でいう釣り合いの取れた相手だった。
僕には、手の届かない話だった。梨花は機嫌よく付き合っていたらしいが、最近になって、急に別れてしまったらしい。飽きてしまったの一点張りだそうだ。ひょっとしたら僕への思いがあるからではないか?僕は虫のいい希望を抱いていた。
聡がやっと、話を切り出した。
「結婚したい人がおんねんけど、兄ちゃんならどう思うかと思って。」
「僕がどう思うって、関係ないだろう?ママがどう思うかの方が重要だろう。」
「ママは、その人のこと好きなんや。会社の事務員でママのお気に入りや。ママの挨拶状とか全部代筆してる。筆耕ができるんや。時々姉も毛筆の表書きとか頼んでる。前からママもねえもその人のこと好きやねんけど。」
「全く問題ないだろ?ママと姉ちゃんが気に入ってるんだったら他に誰が文句言うんだ?」
「その人の夫が言うかもしれん。」
「えっ、その人既婚?」
「そう、子供もいる。男の子、今4歳。付き合い始めて1年ぐらいになる。」
「もともと、四国の人やのに、家出して子供連れて大阪に住んでる。普通のOLやから暮らしは楽じゃない。これ不自然やろ?普通、親のそばに住めへん?」
「そりゃあ、親元にいられない事情があるのかもしれないなあ。」
「どんな事情や思う?」
「本人に聞くしかしょうがないよね。ここで空想しても何にもならない。」
「兄ちゃん、怒らんといてほしいんやけど・・・・・・。こういう場合、子供はどう思うんやろなあ。」
聡に聞かれて僕はむっとなって黙った。
「母親の恋愛ってどんな感じやった? 失礼な質問ってよくわかってるんやけど。でも兄ちゃんには絶対相談せなあかんと思たんや。」
「お前はホントに失礼だなあ。なんか腹立ちすぎて怒る元気もなくなるわ。」
「ごめん、でも意見聞く相手は兄ちゃん以外には考えられへんかった。」
僕は、自分の苦々しい記憶に嫌でも向き合わなくてはならなかった。
続く
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