2019年03月23日
家族の家 THE FIRST STORY 真一と梨花
直言
聡の姉ちゃんはいい女だった。面倒見がよくて美人だ。たった4時間介抱されただけで惚れてしまった。介抱されて恋に落ちる話は少女漫画の中の作り話と思っていた。それでも、スーパーへ行くみたいな気軽さで大阪から東京まで車を飛ばしてきてくれたら、どんな男でも惚れてしまうと思った。
それから3日ぐらいは家にいたが一週間ぐらいで完全に回復していた。ある夜、高校時代の友達から電話が入った。彼は新聞社の記者として働いている硬派だった。
「先生、ずいぶんボロクソに言われているじゃないか。有名税か?」
「そんなもん払うほど有名じゃないし儲かってない。このまま仕事が減れば生活にかかわる。」
「その時は言ってくれ。何か回せるかもしれん。」
「ありがとう。」
「嫌に素直じゃないか。まだ、結婚しないのか?」
「この状況でできるわけがないだろう。」
「好きな女もいないのか?」
「いても、まとまらん話だよ。良家の娘に片思いだ。」
「良家の娘?そんな言葉を聞いたのは久しぶりだ。金持ちの娘か?」
「ああ、金持ちで名門の娘だ。釣り合いが取れなくて話にもならんよ。」
「釣り合い?」
「また珍しい言葉を聞いたもんだ。なあ、島本、これがいい機会じゃないか?ちょっと仕事のやり方を変えたほうがいいんじゃないか?昔の女のことで、こんなにごたごた言われるような仕事、遅かれ早かれなくなるぜ。今の、やり方はお前を無駄に消耗させているだけなんだよ。」
「なんで急に、そういう心臓をぶち抜くような話するんだよ。そんなこと、僕が一番わかっていることだろうが。」
「いい機会じゃないか、今の仕事から距離を置いて地道に行けよ。それには、金持ち娘との結婚は意味があるよ。」
「さすが社会部、社会の仕組みに詳しいね。」
「多少の打算も人生には必要だよ。」
「いや、実は僕は出生がよくないんだ。相手はちゃんとした家のちゃんとした娘だよ。しかも本人もちゃんとした仕事をしてる。」
「出生?今日は前時代的な言葉をよく使うなあ。いったいどうしたんだよ。」
「うん、打算出来ないんだ。」
「はあ?先生本気で惚れちゃったってわけか?」
「いい加減なことをしていい相手じゃないんだ。遠縁の娘なんだよ。親戚の連中も巻き込む話なんだ。」
「先生、仕事なら何とか工面してやるから地道な道を探せよ。その、良家の娘にサポートしてもらえ。それが最善の方法だよ。」
「そう簡単にいくか!」と電話を切った。さすがに、自分の働き方に厳しい指摘を受けたのには参った。
続く
聡の姉ちゃんはいい女だった。面倒見がよくて美人だ。たった4時間介抱されただけで惚れてしまった。介抱されて恋に落ちる話は少女漫画の中の作り話と思っていた。それでも、スーパーへ行くみたいな気軽さで大阪から東京まで車を飛ばしてきてくれたら、どんな男でも惚れてしまうと思った。
それから3日ぐらいは家にいたが一週間ぐらいで完全に回復していた。ある夜、高校時代の友達から電話が入った。彼は新聞社の記者として働いている硬派だった。
「先生、ずいぶんボロクソに言われているじゃないか。有名税か?」
「そんなもん払うほど有名じゃないし儲かってない。このまま仕事が減れば生活にかかわる。」
「その時は言ってくれ。何か回せるかもしれん。」
「ありがとう。」
「嫌に素直じゃないか。まだ、結婚しないのか?」
「この状況でできるわけがないだろう。」
「好きな女もいないのか?」
「いても、まとまらん話だよ。良家の娘に片思いだ。」
「良家の娘?そんな言葉を聞いたのは久しぶりだ。金持ちの娘か?」
「ああ、金持ちで名門の娘だ。釣り合いが取れなくて話にもならんよ。」
「釣り合い?」
「また珍しい言葉を聞いたもんだ。なあ、島本、これがいい機会じゃないか?ちょっと仕事のやり方を変えたほうがいいんじゃないか?昔の女のことで、こんなにごたごた言われるような仕事、遅かれ早かれなくなるぜ。今の、やり方はお前を無駄に消耗させているだけなんだよ。」
「なんで急に、そういう心臓をぶち抜くような話するんだよ。そんなこと、僕が一番わかっていることだろうが。」
「いい機会じゃないか、今の仕事から距離を置いて地道に行けよ。それには、金持ち娘との結婚は意味があるよ。」
「さすが社会部、社会の仕組みに詳しいね。」
「多少の打算も人生には必要だよ。」
「いや、実は僕は出生がよくないんだ。相手はちゃんとした家のちゃんとした娘だよ。しかも本人もちゃんとした仕事をしてる。」
「出生?今日は前時代的な言葉をよく使うなあ。いったいどうしたんだよ。」
「うん、打算出来ないんだ。」
「はあ?先生本気で惚れちゃったってわけか?」
「いい加減なことをしていい相手じゃないんだ。遠縁の娘なんだよ。親戚の連中も巻き込む話なんだ。」
「先生、仕事なら何とか工面してやるから地道な道を探せよ。その、良家の娘にサポートしてもらえ。それが最善の方法だよ。」
「そう簡単にいくか!」と電話を切った。さすがに、自分の働き方に厳しい指摘を受けたのには参った。
続く
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/8660156
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック