2019年03月22日
家族の木 THE FIRST STORY 真一と梨花
恋心
姉ちゃんはその日は泊まっていくことになった。「目覚まし時計、貸してくれる?」といって僕のベッドサイドの目覚まし時計を持って隣の部屋へ入っていった。僕は「悪いな、散らかった部屋で。」といって自分のベッドにもどった。
僕がベッドに入ったのを見計らってキッチンで洗い物をする音が聞こえた。昔、家族と暮らしていたころ、布団の中で台所の音を聞いた。祖母が朝ごはんを作る音だった。昔のことを思い出しながら眠ってしまった。
翌朝、姉ちゃんはコンビニへ買い物に行ってくれた。サンドイッチと牛乳とスープの素も買ってきていた。その他に、アンパンとカステラも買ってきていた。
コーヒーを淹れかけたら、がっつり怒られてしまった。「胃い悪いのに、そんなん飲んだらまた戻す!何考えてんのん!」オヤジ節がさく裂した。サンドイッチを食べようとしたら、また「そんな消化の悪いもん食べられへんよ。牛乳でスープ作るから、それ飲んで。お腹が頼りなかったら、カステラ食べて。」といって怒られた。
「スープとカステラは合わない。」「スープがご飯でカステラがデザートやないの!」僕は納得できなかったが圧倒的に不利な立場なので言われるとおりにした。少しむくれていたかもしれなかった。サンドイッチは姉ちゃん自身のためのものだった。
久しぶりに、アンパンを食べながら牛乳を飲んだ。彼女は「これこそが人生の楽しみや。」といって、サンドイッチもカステラもアンパンも食べたのだった。ダイニングチェアーの上に体育座りをしていた。姉ちゃんが「この部屋寒い」といったとき、僕はまた、姉ちゃんを抱きしめたくなった。
でも、もう一つの心で、この女には手を出してはいけない。いい加減なことはできないと思った。変人だが良家の娘だ。いずれは釣り合いの取れた男の嫁になるのだろう。それまでは妹として付き合わなければいけないと覚悟を決めた。
手を出したが最後、大阪のユーモラスな親戚との付き合いが終わってしまう。今、あの愉快で善良な親戚との縁が切れるのはとてもつらいことだった。
1時間ぐらい、げらげら笑いながらおしゃべりをした。また小学生のように見えた。こんなに馬鹿笑いをしたのは何年ぶりだろう。僕は学生の頃、友人と馬鹿話をして大声で笑っていても、心の中では、いつも冷静に友人の品定めをしていた。
だが、今は風邪のしんどさも手伝っていたかもしれないが、ゴタゴタものを思うのが嫌だった。この楽しい時間を充分に堪能したかった。僕は、少し、ふらついていたが回復していた。
彼女にスーパーの場所を説明して食材や風邪薬を買ってきてもらった。レシートを見て1万円渡して1円単位までお釣りをもらった。丼勘定ではない。きちんとした家庭で育った、きちんとした女だった。
「ママに電話して昨夜の通りに説明しといたってほしい。本気で心配してるから。」
「そうする。君が来てくれてうれしかった。」彼女の帰り際、言いようのない淋しさに襲われた。
玄関ドアを閉めるときに力を入れて彼女の腕を引き寄せた。しばらく力を抜くことができなかったが、ゆっくりと手を離した。白い腕に僕の指跡が残った。
彼女は「今、抵抗でけへんかった。あと3秒引っ張られてたら、このまま、部屋に戻ってしもたと思う。・・・・またね。」といって帰っていった。僕は、惜しいことをしたと自分の運のなさを恨んだ。あと3秒粘ればよかったと。
たった、一晩、いや正味4時間介抱されたら、ものの見事にほれてしまった。「聡よ。お前の姉ちゃんのクライアントが多いのは、オッサントークのせいじゃないんだ。いい女だからなんだ。」
続く
姉ちゃんはその日は泊まっていくことになった。「目覚まし時計、貸してくれる?」といって僕のベッドサイドの目覚まし時計を持って隣の部屋へ入っていった。僕は「悪いな、散らかった部屋で。」といって自分のベッドにもどった。
僕がベッドに入ったのを見計らってキッチンで洗い物をする音が聞こえた。昔、家族と暮らしていたころ、布団の中で台所の音を聞いた。祖母が朝ごはんを作る音だった。昔のことを思い出しながら眠ってしまった。
翌朝、姉ちゃんはコンビニへ買い物に行ってくれた。サンドイッチと牛乳とスープの素も買ってきていた。その他に、アンパンとカステラも買ってきていた。
コーヒーを淹れかけたら、がっつり怒られてしまった。「胃い悪いのに、そんなん飲んだらまた戻す!何考えてんのん!」オヤジ節がさく裂した。サンドイッチを食べようとしたら、また「そんな消化の悪いもん食べられへんよ。牛乳でスープ作るから、それ飲んで。お腹が頼りなかったら、カステラ食べて。」といって怒られた。
「スープとカステラは合わない。」「スープがご飯でカステラがデザートやないの!」僕は納得できなかったが圧倒的に不利な立場なので言われるとおりにした。少しむくれていたかもしれなかった。サンドイッチは姉ちゃん自身のためのものだった。
久しぶりに、アンパンを食べながら牛乳を飲んだ。彼女は「これこそが人生の楽しみや。」といって、サンドイッチもカステラもアンパンも食べたのだった。ダイニングチェアーの上に体育座りをしていた。姉ちゃんが「この部屋寒い」といったとき、僕はまた、姉ちゃんを抱きしめたくなった。
でも、もう一つの心で、この女には手を出してはいけない。いい加減なことはできないと思った。変人だが良家の娘だ。いずれは釣り合いの取れた男の嫁になるのだろう。それまでは妹として付き合わなければいけないと覚悟を決めた。
手を出したが最後、大阪のユーモラスな親戚との付き合いが終わってしまう。今、あの愉快で善良な親戚との縁が切れるのはとてもつらいことだった。
1時間ぐらい、げらげら笑いながらおしゃべりをした。また小学生のように見えた。こんなに馬鹿笑いをしたのは何年ぶりだろう。僕は学生の頃、友人と馬鹿話をして大声で笑っていても、心の中では、いつも冷静に友人の品定めをしていた。
だが、今は風邪のしんどさも手伝っていたかもしれないが、ゴタゴタものを思うのが嫌だった。この楽しい時間を充分に堪能したかった。僕は、少し、ふらついていたが回復していた。
彼女にスーパーの場所を説明して食材や風邪薬を買ってきてもらった。レシートを見て1万円渡して1円単位までお釣りをもらった。丼勘定ではない。きちんとした家庭で育った、きちんとした女だった。
「ママに電話して昨夜の通りに説明しといたってほしい。本気で心配してるから。」
「そうする。君が来てくれてうれしかった。」彼女の帰り際、言いようのない淋しさに襲われた。
玄関ドアを閉めるときに力を入れて彼女の腕を引き寄せた。しばらく力を抜くことができなかったが、ゆっくりと手を離した。白い腕に僕の指跡が残った。
彼女は「今、抵抗でけへんかった。あと3秒引っ張られてたら、このまま、部屋に戻ってしもたと思う。・・・・またね。」といって帰っていった。僕は、惜しいことをしたと自分の運のなさを恨んだ。あと3秒粘ればよかったと。
たった、一晩、いや正味4時間介抱されたら、ものの見事にほれてしまった。「聡よ。お前の姉ちゃんのクライアントが多いのは、オッサントークのせいじゃないんだ。いい女だからなんだ。」
続く
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