2019年03月04日
家族の木 Extra edition 夜職の家
香織
香織は大阪を地盤とする衆議院議員、山下健三の娘だった。といっても、世間でいう「外の子」だ。山下と母の咲は仲が良く母の性格も穏やかだった。あまり苦労もせずに大学まで出してもらった。咲は香織が20歳になったら店に出てほしいといっていた。咲も祖母の真由美も筋金入りのホステスだった。ホステスといっても経営者で蓄財も生活もしっかりしたものだった。
そういう咲を山下が気に入って、最初は秘書にするつもりだったようだ。お金の管理を任せられるからだろう。でも咲は断ってラウンジの経営者として、山下の妾として生きていく方を選んだ。おかげで香織たちが住んでいる家へ来る時の山下は政治家ではなく普通の優しい父だった。
咲は山下に買ってもらったマンションに住んでいた。近所には真由美が住んでいたので夜は真由美と兄の健と三人で過ごした。兄も同じ父の子供だった。山下は、ときどき真由美の家まで香織たちを迎えに来たりもした。その時に山下が真由美によく渡していた封筒にはお金が入っていたのだということに気付いたのは大きくなってからだ。
香織の兄、健は地方公務員になった。区役所に採用されて職場結婚した。兄嫁は夫の実家を軽蔑していた。硬い家庭に育った娘が代々妾として生きてきた女を軽蔑するのはよくある話だった。
香織は大学を出て大手の不動産会社で働いていた。父の山下健三のコネだった。自分から大阪支社に異動願を出した。家では、咲も真由美も香織を一人前の経営者にしたいと思っていた。
そして、いいパトロンを見つけて子供を産んでほしいと思っていたのだ。本妻なんて、つまらないというのが二人の考えだった。事実、父の山下も咲のところへ来てよく本妻の愚痴をこぼしていたようだった。
しかし、山下は香織が普通の結婚をすることを望んでいた。香織が誰かの妾になるのは面白くなかったようだ。山下は香織が咲や真由美と離れて暮らすことを喜んだ。大阪なら自分が面倒をみられると言ってくれた。
続く
香織は大阪を地盤とする衆議院議員、山下健三の娘だった。といっても、世間でいう「外の子」だ。山下と母の咲は仲が良く母の性格も穏やかだった。あまり苦労もせずに大学まで出してもらった。咲は香織が20歳になったら店に出てほしいといっていた。咲も祖母の真由美も筋金入りのホステスだった。ホステスといっても経営者で蓄財も生活もしっかりしたものだった。
そういう咲を山下が気に入って、最初は秘書にするつもりだったようだ。お金の管理を任せられるからだろう。でも咲は断ってラウンジの経営者として、山下の妾として生きていく方を選んだ。おかげで香織たちが住んでいる家へ来る時の山下は政治家ではなく普通の優しい父だった。
咲は山下に買ってもらったマンションに住んでいた。近所には真由美が住んでいたので夜は真由美と兄の健と三人で過ごした。兄も同じ父の子供だった。山下は、ときどき真由美の家まで香織たちを迎えに来たりもした。その時に山下が真由美によく渡していた封筒にはお金が入っていたのだということに気付いたのは大きくなってからだ。
香織の兄、健は地方公務員になった。区役所に採用されて職場結婚した。兄嫁は夫の実家を軽蔑していた。硬い家庭に育った娘が代々妾として生きてきた女を軽蔑するのはよくある話だった。
香織は大学を出て大手の不動産会社で働いていた。父の山下健三のコネだった。自分から大阪支社に異動願を出した。家では、咲も真由美も香織を一人前の経営者にしたいと思っていた。
そして、いいパトロンを見つけて子供を産んでほしいと思っていたのだ。本妻なんて、つまらないというのが二人の考えだった。事実、父の山下も咲のところへ来てよく本妻の愚痴をこぼしていたようだった。
しかし、山下は香織が普通の結婚をすることを望んでいた。香織が誰かの妾になるのは面白くなかったようだ。山下は香織が咲や真由美と離れて暮らすことを喜んだ。大阪なら自分が面倒をみられると言ってくれた。
続く
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