2019年06月23日
家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨 <37 姉の恋>
姉の恋
聡一夫婦の来訪が純一の縁談に関してだと知った時、絵梨は不自然に取り乱して外出してしまった。
美奈子さんは「私ね最近気になることができたんです。純一君のこと。純一君、隆とそっくりよね。純一君、ひょっとしたら、あなたの子供やないの?」と聡一を見た。何気ない口調で聡一の心臓をぶち抜いた。聡一は顔面蒼白になっていたが否定しなかった。
「私、こちらに純一君できはったって聞いたとき、なんか不自然な感じがしてたんです。でも、そんなこと深く考える余裕なかったんです。あの時、私、実は、拗ねて結婚したんです。母親に急かされて急かされて。田原の息子と結婚したら叔父の資産取り戻せるんやからって言われて。私、あのころ、母に逆らうことができなかったんです。せやから、母のいいなりになって結婚したんです。」話がどんどん深刻な方へ向いてしまった。
聡一も「そういえば、新婚のころの君はほんまに難しい嫁さんやったなあ。直ぐ黙ってしまうし、すぐ体壊すし。」と聡一も黙っていない。
「田原のお義父さんもお義母さんも優しいのをいいことに都合の悪いことに目をつぶってたんです。あの時、子供さんがいはって、どっかへ養子に出しはったっていう話、なんとなく知ってたんですけど、知らんぷり決め込んでました。純一君と付き合ってるうちに、なんとなく養子に出されたのはこの子やないかと気が付いたんです。隆と純一君、ホントに気が合うし。」といった。この人はいつも突然大砲をさく裂させる人だった。
「絵梨ちゃんと純一君、実の兄弟やないんと違います?そやから、お互い好きおおてるのと違います?絵梨ちゃんが可愛そうなことになった時、純一君、絵梨ちゃんのことほっとかれへんようになったんと違います?」といった。僕たち夫婦は何も言葉が出なかった。
「もしもよ、もしも2人が相思相愛やったら話は簡単ですよね。戸籍上のことだけですよね。ねえ、あなた、この話冗談ごとやないよ。2人の幸福考えたら本気で何とかしないと。ちょっと、大阪へ帰って隆に聞いてみます。今度の縁談は一旦止めます。どんな形にしろ、そういう縁談進めるわけにはいかへんわ。」といった。
「私、お義母さんが真梨さんのことものすごく大切にしてはることも腑に落ちるんです。ちょっとやきもち焼いてたんです。でも、そんな甘い話やないことが分かってきました。」と美奈子さんは、もう純一が聡一の子供と決め込んでいた。
僕は何か現実とは違う場所にいるような気がしていた。絵梨が純一を愛している?そんなことあり得るか?でも、確かにさっきの絵梨の態度は不自然だ。
聡一は涙目になっていた。「長いこと騙して悪かったな。このままだまし続けるつもりやった。罪な話やな。それにしても拗ねてたとは知らんかったな。身体も心も弱い人やと思ってた。」といった。聡一夫婦の雲行きが怪しくなってきた。
美奈子さんは「拗ねてたんは悪かったけど、こんな隠し事してはったんやから、おあいこですやないの。」とあっさり言ってのけて、聡一はぐうの音も出なかった。
「私、結婚するの嫌やったんです。ご存知やと思いますけど私の父にはお妾さんとの間に子供がいました。お妾さん言うても私と同い年ぐらいの人です。母に勝ち目ないやないですか。男の人ってみなそんなもんやと思ってました。だから結婚なんて嫌やったんです。
そやけど田原の家の人は皆ちゃんとしてて、聡一さんも俊也兄さんもちゃんとした家庭人やったから、私、自分の幸せ守りたかったんです。そやから、どこかにもらわれた子供さんのこと自分に目隠ししてたんです。でも、絵梨ちゃんのこともあるし、なんとか幸せになってほしいんです。」
美奈子さんの父親は衆議院議員の山下健三という人だった。普段は東京住まいで現地妻のような人がいたのは親戚の間でも皆知っていた。
続く
聡一夫婦の来訪が純一の縁談に関してだと知った時、絵梨は不自然に取り乱して外出してしまった。
美奈子さんは「私ね最近気になることができたんです。純一君のこと。純一君、隆とそっくりよね。純一君、ひょっとしたら、あなたの子供やないの?」と聡一を見た。何気ない口調で聡一の心臓をぶち抜いた。聡一は顔面蒼白になっていたが否定しなかった。
「私、こちらに純一君できはったって聞いたとき、なんか不自然な感じがしてたんです。でも、そんなこと深く考える余裕なかったんです。あの時、私、実は、拗ねて結婚したんです。母親に急かされて急かされて。田原の息子と結婚したら叔父の資産取り戻せるんやからって言われて。私、あのころ、母に逆らうことができなかったんです。せやから、母のいいなりになって結婚したんです。」話がどんどん深刻な方へ向いてしまった。
聡一も「そういえば、新婚のころの君はほんまに難しい嫁さんやったなあ。直ぐ黙ってしまうし、すぐ体壊すし。」と聡一も黙っていない。
「田原のお義父さんもお義母さんも優しいのをいいことに都合の悪いことに目をつぶってたんです。あの時、子供さんがいはって、どっかへ養子に出しはったっていう話、なんとなく知ってたんですけど、知らんぷり決め込んでました。純一君と付き合ってるうちに、なんとなく養子に出されたのはこの子やないかと気が付いたんです。隆と純一君、ホントに気が合うし。」といった。この人はいつも突然大砲をさく裂させる人だった。
「絵梨ちゃんと純一君、実の兄弟やないんと違います?そやから、お互い好きおおてるのと違います?絵梨ちゃんが可愛そうなことになった時、純一君、絵梨ちゃんのことほっとかれへんようになったんと違います?」といった。僕たち夫婦は何も言葉が出なかった。
「もしもよ、もしも2人が相思相愛やったら話は簡単ですよね。戸籍上のことだけですよね。ねえ、あなた、この話冗談ごとやないよ。2人の幸福考えたら本気で何とかしないと。ちょっと、大阪へ帰って隆に聞いてみます。今度の縁談は一旦止めます。どんな形にしろ、そういう縁談進めるわけにはいかへんわ。」といった。
「私、お義母さんが真梨さんのことものすごく大切にしてはることも腑に落ちるんです。ちょっとやきもち焼いてたんです。でも、そんな甘い話やないことが分かってきました。」と美奈子さんは、もう純一が聡一の子供と決め込んでいた。
僕は何か現実とは違う場所にいるような気がしていた。絵梨が純一を愛している?そんなことあり得るか?でも、確かにさっきの絵梨の態度は不自然だ。
聡一は涙目になっていた。「長いこと騙して悪かったな。このままだまし続けるつもりやった。罪な話やな。それにしても拗ねてたとは知らんかったな。身体も心も弱い人やと思ってた。」といった。聡一夫婦の雲行きが怪しくなってきた。
美奈子さんは「拗ねてたんは悪かったけど、こんな隠し事してはったんやから、おあいこですやないの。」とあっさり言ってのけて、聡一はぐうの音も出なかった。
「私、結婚するの嫌やったんです。ご存知やと思いますけど私の父にはお妾さんとの間に子供がいました。お妾さん言うても私と同い年ぐらいの人です。母に勝ち目ないやないですか。男の人ってみなそんなもんやと思ってました。だから結婚なんて嫌やったんです。
そやけど田原の家の人は皆ちゃんとしてて、聡一さんも俊也兄さんもちゃんとした家庭人やったから、私、自分の幸せ守りたかったんです。そやから、どこかにもらわれた子供さんのこと自分に目隠ししてたんです。でも、絵梨ちゃんのこともあるし、なんとか幸せになってほしいんです。」
美奈子さんの父親は衆議院議員の山下健三という人だった。普段は東京住まいで現地妻のような人がいたのは親戚の間でも皆知っていた。
続く
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