2019年06月22日
THE SECOND STORY 俊也と真梨 <36 弟の縁談>
弟の縁談
こんな日々の中、大阪の聡一から夫婦で会いたいと連絡がきた。そちらもご夫婦でという話だった。
聡一夫婦は土曜日の夕方、夫婦で我が家にやってきた。服装が少し改まっていたので何事かと思った。純一の見合いの話だった。相手は美奈子さんの親戚の浅田家の親戚の娘だ。今度は身近に付き合っている家だから大丈夫。浅田家はもともと大阪の田原と親しい。それに、結婚したら大阪に住むことになる。全く無縁の土地に行くのではない。先方の親が純一を見染めてくれたという話だった。
絵梨がお茶を持って部屋に入ってきた。「こんにちは、いらっしゃいませ。」とあいさつした。「絵梨ちゃん、元気そうでよかった。」と美奈子さんが言った。テーブルの上には、「釣り書」と書かれた書類があった。
「純一の縁談よ。絵梨もお話伺う?」と真梨がいった。絵梨の動作が一瞬止まって表情がゆがんだ。心なしか震えているようにも見えた。「いえ、私ちょっと用事があって。」と突然踵を返して部屋を出てしまった。
絵梨の不自然な態度に皆、一瞬、呆気にとられた。しばらくして絵梨が外出する音が聞こえた。
縁談に関しては特に断る理由もないのでよろしくお願いしますということで話は終わった。これから純一と話すということだった。縁談といってもまだ本人同士は全く知らない話だ。
本人同士が気に入らなければ進まない。まとまって欲しいような、まとまって欲しくないような複雑な気持ちだった。
話がいったん終わったところで今度は僕がコーヒーを淹れた。その時、美奈子さんが口火を切った。「さっき絵梨ちゃん様子がおかしくなかった?私には絵梨ちゃんが震えてるように見えたんやけど。」といった。聡一も「ちょっと、様子が変やったな。体調が悪かったんかな?その割にはすぐ、どっかへ行ったみたいやな。」といった。
真梨も黙って考え込んでいた。「ねえ、絵梨ちゃん純一君のこと好きなんやないの?」と美奈子さんが声を落として言った。僕は「そんなことは無いだろう。だって絵梨は結婚したんですよ。不幸な結果だったけれど。」と言い終わらないうちに、数日前の絵梨の言葉を思い出していた。
絵梨は「好きでもない結婚」と言った。確かにそういった。真梨も同じことを考えていたようだった。
続く
こんな日々の中、大阪の聡一から夫婦で会いたいと連絡がきた。そちらもご夫婦でという話だった。
聡一夫婦は土曜日の夕方、夫婦で我が家にやってきた。服装が少し改まっていたので何事かと思った。純一の見合いの話だった。相手は美奈子さんの親戚の浅田家の親戚の娘だ。今度は身近に付き合っている家だから大丈夫。浅田家はもともと大阪の田原と親しい。それに、結婚したら大阪に住むことになる。全く無縁の土地に行くのではない。先方の親が純一を見染めてくれたという話だった。
絵梨がお茶を持って部屋に入ってきた。「こんにちは、いらっしゃいませ。」とあいさつした。「絵梨ちゃん、元気そうでよかった。」と美奈子さんが言った。テーブルの上には、「釣り書」と書かれた書類があった。
「純一の縁談よ。絵梨もお話伺う?」と真梨がいった。絵梨の動作が一瞬止まって表情がゆがんだ。心なしか震えているようにも見えた。「いえ、私ちょっと用事があって。」と突然踵を返して部屋を出てしまった。
絵梨の不自然な態度に皆、一瞬、呆気にとられた。しばらくして絵梨が外出する音が聞こえた。
縁談に関しては特に断る理由もないのでよろしくお願いしますということで話は終わった。これから純一と話すということだった。縁談といってもまだ本人同士は全く知らない話だ。
本人同士が気に入らなければ進まない。まとまって欲しいような、まとまって欲しくないような複雑な気持ちだった。
話がいったん終わったところで今度は僕がコーヒーを淹れた。その時、美奈子さんが口火を切った。「さっき絵梨ちゃん様子がおかしくなかった?私には絵梨ちゃんが震えてるように見えたんやけど。」といった。聡一も「ちょっと、様子が変やったな。体調が悪かったんかな?その割にはすぐ、どっかへ行ったみたいやな。」といった。
真梨も黙って考え込んでいた。「ねえ、絵梨ちゃん純一君のこと好きなんやないの?」と美奈子さんが声を落として言った。僕は「そんなことは無いだろう。だって絵梨は結婚したんですよ。不幸な結果だったけれど。」と言い終わらないうちに、数日前の絵梨の言葉を思い出していた。
絵梨は「好きでもない結婚」と言った。確かにそういった。真梨も同じことを考えていたようだった。
続く
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