2019年06月21日
THE SECOND STORY 俊也と真梨 <35 養父と実父>
養父と実父
僕は聡一に電話をして改めて純一のことを頼んだ。そのことで大阪まで出向く気にはなれなかった。真梨の言うように普通に息子の家に遊びに行けばいいことだと言い聞かせても気分がすぐれなかった。
僕たち夫婦には選択肢なんかなかった。こうする以外になかった。純一を迎えた日から今までの時間は何だったのだろうと思ってしまう。息子が親のそばから離れた場所で家庭を持つことなんて普通のことだとわかっていた。それでも割り切れなかった。
聡一は「わかった。任してくれ。兄ちゃんの息子、幸福になるようがんばるわ。」といった。心なしか嬉しそうに聞こえて腹が立った。
THE SECOND STORY 俊也と真梨 <35 姉の気持ち>
絵梨の縁談も考えなければならなかった。いや、むしろ絵梨の縁談の方が大切かもしれない。しかし、これが難題だった。絵梨の暮らしを安定させるためには会社経営ができる婿が必要だった。今僕が社長をしている会社は叔父がコツコツ作り上げた会社だ。自分たちの都合で簡単に手放していいとは思えなかった。
社員の一人と結婚してくれるのが一番いい。社員の中には信頼できる若い男もいた。その男は絵梨よりも3歳年上で東京生まれの東京育ちだ。同じ時期に同じ土地で学生時代を過ごしているのだから何かと話も合うだろう。意外に進む話かもしれない。
真梨もその話には乗り気になった。真梨にしてみれば純一の縁談よりも先に絵梨の縁談がまとまってほしいと思っているだろう。なんとか、この男と絵梨が合う機会を作らなければならない。案外気が合って仲良くなれるような気がした。
絵梨がもう一度見合いをするとは思えなかった。自然に出会って好感を持ってくれればそれが一番よかった。いきなり食事に呼ぶのも唐突だろう。はてどうしたものか?
そう考えつつも、では純一はどうなるんだと思った。純一を弟の子だと割り切れなかった。
純一に会社を継いでほしかった。ずっと、そのつもりで暮らしていた。僕の理想は、純一と絵梨か絵梨の婿が後を継いでくれることだった。この思いがしつこく胸の奥でくすぶっていた。
真梨から、それとなく絵梨に結婚の意向を確認してみた。絵梨は「ママ心配かけてごめんね。でも今私頑張ってるの。このまま正職員として働けたら、ちゃんと厚生年金ももらえるし何とか自立できると思うのよ。将来純一の足手まといにならなくて済むようにしたいの。」といった。絵梨は純一が会社を継ぐと思っているのだ。
真梨が、それとなく「絵梨のお婿さんが会社を継いでもいいし何なら絵梨が今から入社して頑張ってみてもいいのよ。今ならパパに習いながら経営者を目指すことだってできるわよ。」といった。その瞬間、絵梨の顔色が変わった。「純が継ぐのよ。当たり前でしょ。そのために私、好きでもない人と結婚したのよ。」と気色ばんだ。
なぜか二人で継ぐという選択肢がなかった。普通に、どちらかが社長になって、どちらかが役員になってもいいはずなのに、絵梨はもともとうちの幼児教育部門の発案者だ。立ち上げのときも自分で様々な努力も勉強もしている。2人で分担すればいいだけなのに、なぜ、この娘は別の道を行こうとしているのだろう?
好きでもない人と結婚をしたってどういうことだ?僕は少し混乱した。これ以上話すと険悪になりそうだった。真梨も絵梨の言葉に押されて黙ってしまった。日を改めたほうがよさそうだ。
続く
僕は聡一に電話をして改めて純一のことを頼んだ。そのことで大阪まで出向く気にはなれなかった。真梨の言うように普通に息子の家に遊びに行けばいいことだと言い聞かせても気分がすぐれなかった。
僕たち夫婦には選択肢なんかなかった。こうする以外になかった。純一を迎えた日から今までの時間は何だったのだろうと思ってしまう。息子が親のそばから離れた場所で家庭を持つことなんて普通のことだとわかっていた。それでも割り切れなかった。
聡一は「わかった。任してくれ。兄ちゃんの息子、幸福になるようがんばるわ。」といった。心なしか嬉しそうに聞こえて腹が立った。
THE SECOND STORY 俊也と真梨 <35 姉の気持ち>
絵梨の縁談も考えなければならなかった。いや、むしろ絵梨の縁談の方が大切かもしれない。しかし、これが難題だった。絵梨の暮らしを安定させるためには会社経営ができる婿が必要だった。今僕が社長をしている会社は叔父がコツコツ作り上げた会社だ。自分たちの都合で簡単に手放していいとは思えなかった。
社員の一人と結婚してくれるのが一番いい。社員の中には信頼できる若い男もいた。その男は絵梨よりも3歳年上で東京生まれの東京育ちだ。同じ時期に同じ土地で学生時代を過ごしているのだから何かと話も合うだろう。意外に進む話かもしれない。
真梨もその話には乗り気になった。真梨にしてみれば純一の縁談よりも先に絵梨の縁談がまとまってほしいと思っているだろう。なんとか、この男と絵梨が合う機会を作らなければならない。案外気が合って仲良くなれるような気がした。
絵梨がもう一度見合いをするとは思えなかった。自然に出会って好感を持ってくれればそれが一番よかった。いきなり食事に呼ぶのも唐突だろう。はてどうしたものか?
そう考えつつも、では純一はどうなるんだと思った。純一を弟の子だと割り切れなかった。
純一に会社を継いでほしかった。ずっと、そのつもりで暮らしていた。僕の理想は、純一と絵梨か絵梨の婿が後を継いでくれることだった。この思いがしつこく胸の奥でくすぶっていた。
真梨から、それとなく絵梨に結婚の意向を確認してみた。絵梨は「ママ心配かけてごめんね。でも今私頑張ってるの。このまま正職員として働けたら、ちゃんと厚生年金ももらえるし何とか自立できると思うのよ。将来純一の足手まといにならなくて済むようにしたいの。」といった。絵梨は純一が会社を継ぐと思っているのだ。
真梨が、それとなく「絵梨のお婿さんが会社を継いでもいいし何なら絵梨が今から入社して頑張ってみてもいいのよ。今ならパパに習いながら経営者を目指すことだってできるわよ。」といった。その瞬間、絵梨の顔色が変わった。「純が継ぐのよ。当たり前でしょ。そのために私、好きでもない人と結婚したのよ。」と気色ばんだ。
なぜか二人で継ぐという選択肢がなかった。普通に、どちらかが社長になって、どちらかが役員になってもいいはずなのに、絵梨はもともとうちの幼児教育部門の発案者だ。立ち上げのときも自分で様々な努力も勉強もしている。2人で分担すればいいだけなのに、なぜ、この娘は別の道を行こうとしているのだろう?
好きでもない人と結婚をしたってどういうことだ?僕は少し混乱した。これ以上話すと険悪になりそうだった。真梨も絵梨の言葉に押されて黙ってしまった。日を改めたほうがよさそうだ。
続く
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