2019年06月20日
家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨 <34 夫婦喧嘩>
夫婦喧嘩
いつまでも真梨に隠しておくわけにもいかなかった。その夜、家に帰ってから寝室で真梨と話し合った。絵梨に聞かせる話ではなかった。
僕は口火を切るのに時間がかかった。真梨が「お兄ちゃんどうしたの?元気ないけど、なんか嫌なことあった?」と尋ねた。僕は「嫌なことというより深刻な問題や。もっと早くに君に話すべきやったけど、なかなか言えんかった。」といった。「どんなこと?」と甘えて寄りかかってくる。一日が終わってホッと一息ついていた。そんな時間から辛い話をしなければならなかった。
「実は、今日聡一と会って純一の話になった。向こうではずいぶん世話になっているらしい。田原のおばあちゃんも純一が行ってからずいぶん元気になったらしい。」
「一度美奈子さんにお礼の電話しなくちゃね。絵梨のことでもずいぶん神経使わせちゃったし。来週デパートに行ってなんか送ろうかしらね。」と気楽な話が続いた。
僕は心を決めて「実は純一が絵梨を好いてるっていう話が出た。」というと「そりゃ当り前よ。昔から純一は絵梨が大好きじゃないの。今更何を言ってるの?大阪出張で疲れたの?」と真梨は怪訝そうな顔をした。
僕は真梨の肩を抱いて「真梨、落ち着いて聞いてほしい。僕たちはちょっと鈍感な親だったようだ。実は純一は絵梨を愛してる。きっと、ものすごく深く愛してる。」といった。真梨はの僕の腕の中で、じっと聞いていた。そして大きな声で「あなたは一体なにを言ってるの!私の子供たちを何だと思ってるの!あの子たちは仲のいい兄弟なのよ。」といった。途中から声を落とした。
「こんなこと絵梨に聞かせられないじゃないの。それでなくても、いろいろ苦しいことがあって、やっと落ち着いてきたのに!あなた方は、この家族を壊したいの?」と荒っぽく僕の手を払った。僕は真梨を抑え込むのに必死だった。「それでね純一に大阪で嫁を取ったらどうかといわれた。そのまま田原興産の事業に入ったらどうかといわれた。」
「何を言ってるのよ!私から純一を取り上げるの?純一は一人息子なのよ!いままでずっと絵梨と純一仲良し兄弟がいたから頑張れたんじゃないの!なんで急に私たちの家族が壊れなきゃいけないのよ。都合のいいこと言われても困るのよ。聡ちゃんちょっと身勝手じゃないの?」と聡一に怒りの矛先が向いてしまった。
「いや、聡一はこの家の資産を絵梨に全部渡したい。純一には自分が、相当のものを用意するべきだと考えてる。絵梨と距離を置かせることを考えたら反対もできなかった。」といった。真梨は「あなたがそんな人だと思わなかった。もう信じない!」と寝室を出てしまった。しばらくして戻ってきた時、ふっとウィスキーの匂いがした。
翌日僕は会社から早く帰った。疲労もあったが絵梨の留守中にもう一度真梨に話さなければならなかった。純一の部屋に入って真梨に風景写真の裏側を見せたが、そこには何もなかった。机の引き出しは空になっていた。純一は自分の大切なものを大阪へ持って行ったのだ。純一は、この家に帰らないつもりだとわかった。
真梨にいくら説明しても納得しなかった。僕は真梨とのやり取りに疲れてきていた。僕たちは割合仲のいい夫婦だった。僕の真梨への気持ちは変わらなかったが真梨は、その日から僕と距離を取るようになっていた。僕は、いい年になって、また、子供の時のように寂しい思いをしていた。
一カ月ぐらい経ったある晩、寝室で久しぶりに真梨が肩にもたれかかってきた。その日あったことをそれとなく話しながら5分ぐらい過ぎたころに「絵梨も純一も両方幸福になってほしい。聡ちゃんの考えが一番いいのかもしれないわね。踏ん切りをつけるのに、ずいぶん時間がかかちゃった。辛いのはお兄ちゃんも一緒よね。お兄ちゃんも、大阪の叔父さんにつらい思いをさせて、こっちへ来てくれたんだもんね。」といった。
僕は「若い時に君のハニートラップにハマって未だに抜け出せない。ずいぶん深くて美味しくて、今、充分幸福だ。純一にも絵梨にも幸福になってもらおう。」といった。
真梨は「絵梨に子供が生まれたら毎日会いに行くのよ。純一に子供が生まれたら年に2回は会いに行くの。私たち、しょっちゅう、やってくるめんどくさい、おじいちゃんとおばあちゃんになるのよ。」と涙ぐんだ。ここまで、思いを落ち着かせるのに一カ月もかかったのだ。
続く
いつまでも美しくありたい全ての女性に
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そんなあなたに
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いつまでも真梨に隠しておくわけにもいかなかった。その夜、家に帰ってから寝室で真梨と話し合った。絵梨に聞かせる話ではなかった。
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「実は、今日聡一と会って純一の話になった。向こうではずいぶん世話になっているらしい。田原のおばあちゃんも純一が行ってからずいぶん元気になったらしい。」
「一度美奈子さんにお礼の電話しなくちゃね。絵梨のことでもずいぶん神経使わせちゃったし。来週デパートに行ってなんか送ろうかしらね。」と気楽な話が続いた。
僕は心を決めて「実は純一が絵梨を好いてるっていう話が出た。」というと「そりゃ当り前よ。昔から純一は絵梨が大好きじゃないの。今更何を言ってるの?大阪出張で疲れたの?」と真梨は怪訝そうな顔をした。
僕は真梨の肩を抱いて「真梨、落ち着いて聞いてほしい。僕たちはちょっと鈍感な親だったようだ。実は純一は絵梨を愛してる。きっと、ものすごく深く愛してる。」といった。真梨はの僕の腕の中で、じっと聞いていた。そして大きな声で「あなたは一体なにを言ってるの!私の子供たちを何だと思ってるの!あの子たちは仲のいい兄弟なのよ。」といった。途中から声を落とした。
「こんなこと絵梨に聞かせられないじゃないの。それでなくても、いろいろ苦しいことがあって、やっと落ち着いてきたのに!あなた方は、この家族を壊したいの?」と荒っぽく僕の手を払った。僕は真梨を抑え込むのに必死だった。「それでね純一に大阪で嫁を取ったらどうかといわれた。そのまま田原興産の事業に入ったらどうかといわれた。」
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翌日僕は会社から早く帰った。疲労もあったが絵梨の留守中にもう一度真梨に話さなければならなかった。純一の部屋に入って真梨に風景写真の裏側を見せたが、そこには何もなかった。机の引き出しは空になっていた。純一は自分の大切なものを大阪へ持って行ったのだ。純一は、この家に帰らないつもりだとわかった。
真梨にいくら説明しても納得しなかった。僕は真梨とのやり取りに疲れてきていた。僕たちは割合仲のいい夫婦だった。僕の真梨への気持ちは変わらなかったが真梨は、その日から僕と距離を取るようになっていた。僕は、いい年になって、また、子供の時のように寂しい思いをしていた。
一カ月ぐらい経ったある晩、寝室で久しぶりに真梨が肩にもたれかかってきた。その日あったことをそれとなく話しながら5分ぐらい過ぎたころに「絵梨も純一も両方幸福になってほしい。聡ちゃんの考えが一番いいのかもしれないわね。踏ん切りをつけるのに、ずいぶん時間がかかちゃった。辛いのはお兄ちゃんも一緒よね。お兄ちゃんも、大阪の叔父さんにつらい思いをさせて、こっちへ来てくれたんだもんね。」といった。
僕は「若い時に君のハニートラップにハマって未だに抜け出せない。ずいぶん深くて美味しくて、今、充分幸福だ。純一にも絵梨にも幸福になってもらおう。」といった。
真梨は「絵梨に子供が生まれたら毎日会いに行くのよ。純一に子供が生まれたら年に2回は会いに行くの。私たち、しょっちゅう、やってくるめんどくさい、おじいちゃんとおばあちゃんになるのよ。」と涙ぐんだ。ここまで、思いを落ち着かせるのに一カ月もかかったのだ。
続く
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