2019年06月19日
家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨 <33 デジャブ>
デジャブ
純一が大阪で働くようになったころ絵梨も保育園の保母の仕事を頑張っていた。そろそろ正職員としての就職も視野に入れ始めていた。
そんな時、所用で大阪の家に寄った。母も高齢だ。健康そうだが会える時に会っておいた方がいいと思ったからだ。昼間だったので純一は会社に行っている。聡一が家にやってきた。折り入って話があるという。真梨や絵梨には内緒の話だ。
一瞬、資金繰りか何かの相談かと思ったが大阪の田原家には美奈子さんの実家がついていた。美奈子さんは浅田隆一の姪で父の山下健三は衆議院議員だった。大阪の名門の出身だ。親戚には大阪の政財界に顔が効く人が何人もいた。資金の相談ならそちらへした方がよほど頼りになるだろう。
その日の聡一の話に僕は水を浴びせられたような気になった。純一の話だった。聡一は、純一が絵梨を好いているのではないかと感じていた。純一は絵梨の話になると寡黙になって悲しそうな顔をする。長谷川の息子の話になると怒りがむき出しになるというのだ。
これは純一の祖母である僕の母や美奈子さん、隆君も感じていることらしい。もし、どこかで長谷川の息子に会うようなことがあったら、ただ事では済まない気がすると心配していた。
大阪の方では、皆がなんとなく純一の気持ちに気付き始めているようだ。母が、とても心配しているし聡一としても何とかうまく解決したいと考えて、こっそり相談にきたのだ。
僕は純一の部屋で見たものの話はしなかった。好いているどころではない。純一は絵梨を深く愛している、それが過去の話なのか、今も続いているのかが僕にはわからなかった。
聡一が、純一の結婚の世話をしたい、大阪で結婚すれば田原興産の役員なり関連会社の社長なりのポストを用意するというものだった。要するに籍こそ触らないが息子を返してくれという話だった。
僕は30年前のことを思い出していた。この部屋で継父に真梨との婚約の報告をして婿養子になることを認めてもらった。継父は怒って口もきかなかったが継父の姉である叔母の説得で了承したのだった。
まるでデジャヴを見たような気がした。継父のあの時の気持ちが痛いほど分かった。見栄でも意地でもない。可愛い息子を、いきなり手放せといわれた。しかも跡取りと決めていた息子だ。
聡一は「絵梨ちゃんにいい婿をとってT不動産を継がせたってくれ。それが一番順当な方法や。僕の息子にT不動産を継がすわけにはいかん。それは余りにも厚かましい話や。兄ちゃんの資産は全部絵梨ちゃんが継がなあかん。」といった。
僕は30年前、自分がいかに継父にひどいことをしたのか今頃分かった。それでも純一の気持ちを落ち着かせるためには絵梨との距離を拡げるのが一番いいということは分かっていた。
とりあえず真梨と相談するということで、その日の話は終わった。その話を食事の支度にやってきた美奈子さんが聞いてしまったことは聡一も僕も気が付かなかった。
続く
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その日の聡一の話に僕は水を浴びせられたような気になった。純一の話だった。聡一は、純一が絵梨を好いているのではないかと感じていた。純一は絵梨の話になると寡黙になって悲しそうな顔をする。長谷川の息子の話になると怒りがむき出しになるというのだ。
これは純一の祖母である僕の母や美奈子さん、隆君も感じていることらしい。もし、どこかで長谷川の息子に会うようなことがあったら、ただ事では済まない気がすると心配していた。
大阪の方では、皆がなんとなく純一の気持ちに気付き始めているようだ。母が、とても心配しているし聡一としても何とかうまく解決したいと考えて、こっそり相談にきたのだ。
僕は純一の部屋で見たものの話はしなかった。好いているどころではない。純一は絵梨を深く愛している、それが過去の話なのか、今も続いているのかが僕にはわからなかった。
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僕は30年前、自分がいかに継父にひどいことをしたのか今頃分かった。それでも純一の気持ちを落ち着かせるためには絵梨との距離を拡げるのが一番いいということは分かっていた。
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