2019年06月12日
家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨 <28 真実>
真実
しばらくして、お手伝いさんが着替えを持ってきた。そして僕に手紙を渡すと、そそくさと帰っていった。絵梨がウトウトしだしたので真梨と一緒に手紙を読んだ。
「若奥様は、いつも独りぼっちでした。旦那様は三日に一度帰ってこられればいい方です。
帰ってきても食事がすめばすぐ大奥様と病院経営の話でした。この病院は赤字経営です。それを若奥様には内緒にしていたため若奥様はいつも蚊帳の外でした。
大奥様は家事は一切なさいませんでした。若奥様と私で全ての家事をしておりました。
旦那様は、とても神経質でこだわりの多い方です。気に入らなければ外食に出てしまわれます。すると大奥様が若奥様を厳しく叱責されます。若奥様は私どもと同じ家事労働担当でした。
ここしばらく、ろくに食事ができないご様子でした。疲労とストレスでとても大変だったと思います。私が若奥さまの病室に長居をしたりおしゃべりをしたら、必ず大奥様に知れてしまいます。この病院にはスパイのような人がいっぱいいます。どうぞ早く、よそへお移り下さいませ。どうぞ、この手紙は病院の外で破り捨ててくださいませ。お願い申し上げます。」
僕と真梨は怒りに震えた。絵梨に退院の手続きをすることを伝えた。真梨は「流産は普通、一日入院したら、すぐ自宅療養よ。絵梨ホテルに移りましょう。」といった。すぐに絵梨の着替えをさせた。長居は無用だった。早く別の場所でゆっくりさせたかった。
絵梨は泣きながら「そうよね。逃げて当たり前よね。なんで逃げなかったんだろう?」といった。 真梨が「ひとりで抱え込むと正常な判断ができなくなるのよ。」といった。
2人は、そのまま、僕たちが泊まっているホテルに行った。
僕は、その足で事務センターに行った。「どうも、精神的に不安定なんで、しばらくこちらでゆっくりさせます。」というと事務長という人が出てきた。
応接室へ通されたので事務長に声を落として「自死の心配をしています。もしものことがあったら病院にも長谷川さんのお家にもどんなご迷惑がかかるか。しばらくは、こちらで預かって様子を見ます。もちろん大奥様には先程ご了解をいただきました。ご安心ください。」と穏やかに紳士面をして話した。
事務長は信用してくれた。自死という言葉にインパクトがあったようだ。明らかに厄介なことから逃げようとする態度だった。そして「精算の方は、どういたしましょうか?」ときいたところ直ぐに計算を済ませるということだった。話が長引いている間に真梨と絵梨は無事タクシーにのったようだった。
精算は早く終わった。流産後の処置以外は何も治療をしていないのだから当然だった。
僕も急いで病院を退散した。それで、この病院とはお別れだった。
新たに別のホテルを予約して3人でそちらに泊まった。もう長谷川の人間には僕たちの居場所は分からない。向こうからやってくることは無い。こちらから向こうの家に出向いて言いたいことを言ってやるだけだった。
真梨がずっと付き添うので絵梨は驚くほどよく眠った。食事もしっかりとることができた。純一にもメールで流産のことを知らせておいた。2時間ほどして純一から電話があったので「余程のストレスがあったようだ。今は精神的に不安定になっている。」と伝えた。
夕食後しばらくして絵梨に離婚の意思を確認した。翌朝には会社で世話になっている弁護士に離婚手続きを依頼した。それで終わりだ。僕は絵梨の体が気になったので病院に行かせたかった。長谷川は地元の名士だ。迂闊な病院に行けば長谷川に連絡が入りかねない。
今回の顛末を報告するために聡一に電話をした。聡一にはザッと説明してから、この近くの病院を知らないかと尋ねた。その質問に応対してくれたのは奥さんの美奈子さんだった。
とても驚いていた。と同時に恐縮もしていた。「そんな話になってるやなんて、ちっとも知らなくて。ホントに絵梨ちゃんに申し訳ない。ホントになんとお詫びしたらいいか。」と恐縮された。しかし僕は、お詫びに対する返事より自分の用事を優先した。いい病院を知らないか聞いてみた。
美奈子さんは、この縁談の元になった知り合いに連絡を取って病院を紹介してくれた。結局一週間もすれば普通の生活ができる。ということだったので一週間後に東京へ戻ることにした。
そのころ、長谷川家でエライ騒ぎになっていたのを知ったのは、ずいぶん後のことだった。
お手伝いさんは解雇されたらしい。もう60歳を過ぎている感じがしていた。
続く
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