2019年06月11日
家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨 <27 流産>
流産
絵梨が結婚して半年ぐらいして妊娠したという電話が入った。つわりで多少胸がむかつくらしいが嬉しそうだった。早速、夫婦で小樽まで祝いに出かけた。先方もずいぶん喜んでいる様子だった。姑さんからは跡取りという言葉が何度も出た。婿も大喜びで、その日は、とても楽しい幸福な日になった。純一にも知らせたがメールでひとこと「おめでとう」ときただけだった。
それから一カ月もたたない初夏のある日、真梨から会社にいる僕に一本の電話が入った。
「絵梨が流産したらしいの。」と大声を上げて泣いていた。子供のように泣きじゃくる真梨をなだめることもできなかった。
慌てて家へ帰ると真梨は仏壇の前で、まだ泣いていた。「絵梨から直接電話があったの。消え入りそうな声だった。今、入院しているらしいの。お姑さんもショックで寝込んでいるらしいのよ。一人で病院で寝ているらしいのよ。」といった。
僕たちは翌日の飛行機で北海道へ行った。着いたのは夕方だった。先方の家に着くと通されもしないまま、お手伝いさんから病院の場所を聞いた。お姑さんは寝込んでいるということで出てこなかった。
病院へ着くと絵梨は豪華な個室に入っていた。院長夫人だということで丁重な扱いを受けているようだったが病室に一人っきりだった。真梨がかけよった途端に絵梨の泣き声が聞こえた。しばらく夫婦で絵梨の手を握って黙っていた。僕は「長谷川君に挨拶をしよう。今どこだ?」と聞くと絵梨は悲しそうな声で「今、学会。」と答えた。「学会って、こんな時に何を言ってるんだ。」と思わず大声をあげてしまった。
しばらくすると姑さんがやってきた。「先ほどは失礼いたしました。私も辛くて。せっかくの跡取りが死んでしまいました。」といわれて、思わず「申し訳ありません。」といったものの絵梨はそちらの家で流産したんだと腹が立った。「ご子息は、どちらの学会へ?」と聞くと「東京です。」という答えだった。ムカッときた。
流産の原因は階段からの転落だったらしい。家は三階建てで絵梨たちの寝室が三階だったそうだ。階段の上り下りの途中で、めまいがして転倒してしまったらしい。つわりが激しく食事もできなかったようだった。誰も構ってくれるものはいなかったのか?と腹が立った。
心の中で「くそばばあ」と叫んだ。真梨は最初はお愛想を言っていたが、そのうち何もしゃべらなくなってしまった。病室内に不快な沈黙が流れた。くそばばあは逃げるように帰っていった。絵梨の目からは涙がにじんだ。
続く
いつまでも美しくありたいあなたへ
スキンケアに時間をかけられないあなたへ
最近、しわやたるみが気になりだしたあなたへ
高濃度プラセンタとアスタキサンチンをはじめとする有効成分がお肌を内側からケア
絵梨が結婚して半年ぐらいして妊娠したという電話が入った。つわりで多少胸がむかつくらしいが嬉しそうだった。早速、夫婦で小樽まで祝いに出かけた。先方もずいぶん喜んでいる様子だった。姑さんからは跡取りという言葉が何度も出た。婿も大喜びで、その日は、とても楽しい幸福な日になった。純一にも知らせたがメールでひとこと「おめでとう」ときただけだった。
それから一カ月もたたない初夏のある日、真梨から会社にいる僕に一本の電話が入った。
「絵梨が流産したらしいの。」と大声を上げて泣いていた。子供のように泣きじゃくる真梨をなだめることもできなかった。
慌てて家へ帰ると真梨は仏壇の前で、まだ泣いていた。「絵梨から直接電話があったの。消え入りそうな声だった。今、入院しているらしいの。お姑さんもショックで寝込んでいるらしいのよ。一人で病院で寝ているらしいのよ。」といった。
僕たちは翌日の飛行機で北海道へ行った。着いたのは夕方だった。先方の家に着くと通されもしないまま、お手伝いさんから病院の場所を聞いた。お姑さんは寝込んでいるということで出てこなかった。
病院へ着くと絵梨は豪華な個室に入っていた。院長夫人だということで丁重な扱いを受けているようだったが病室に一人っきりだった。真梨がかけよった途端に絵梨の泣き声が聞こえた。しばらく夫婦で絵梨の手を握って黙っていた。僕は「長谷川君に挨拶をしよう。今どこだ?」と聞くと絵梨は悲しそうな声で「今、学会。」と答えた。「学会って、こんな時に何を言ってるんだ。」と思わず大声をあげてしまった。
しばらくすると姑さんがやってきた。「先ほどは失礼いたしました。私も辛くて。せっかくの跡取りが死んでしまいました。」といわれて、思わず「申し訳ありません。」といったものの絵梨はそちらの家で流産したんだと腹が立った。「ご子息は、どちらの学会へ?」と聞くと「東京です。」という答えだった。ムカッときた。
流産の原因は階段からの転落だったらしい。家は三階建てで絵梨たちの寝室が三階だったそうだ。階段の上り下りの途中で、めまいがして転倒してしまったらしい。つわりが激しく食事もできなかったようだった。誰も構ってくれるものはいなかったのか?と腹が立った。
心の中で「くそばばあ」と叫んだ。真梨は最初はお愛想を言っていたが、そのうち何もしゃべらなくなってしまった。病室内に不快な沈黙が流れた。くそばばあは逃げるように帰っていった。絵梨の目からは涙がにじんだ。
続く
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