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「言論封殺」憤る各党
――――――石井紘議員刺殺で相次ぐコメント
政界動揺、防御策に不安

　民主党の石井紘基衆院議員刺殺事件で同党は二十五日、「暴力によって政治活動を封殺することは断じて許しがたい。一刻も早い犯人逮捕と事件の解明を求める」とする党声明を発表した。各党とも同様の見解を示し、憤りや哀悼の意を表したが、犯人の動機、背後関係がなお不明なことから不安の声も漏れている。＜本文記事１面＞

　民主党の鳩山代表は二十五日夜、党本部で記者会見し、「強い憤りを禁じえない。二度とこのようなことが起こらない社会を作らなければいけない」と強調した。

　これに先立ち、石井氏の遺体をのせた車が国会議事堂前を通るのを見送った後、党本部で中野幹事長らと今後の対応を協議した。

　民主党以外の各党にもショックを与え、党幹部らが「民主主義、議会政治への重大な挑戦だ」（福島社民党幹事長）などと感想を語った。

　自民党の中川秀直国会対策委員長は同日、国会内で民主党の佐藤敬夫国会対策委員長と会い、「同じ立法府、公党に籍を置くものとしてこういうことは絶対許してはいけない」と語った。

　石井氏は特殊法人問題や不正入札疑惑など、政官業の癒着追及で知られただけに、政治的背景を指摘する声も出ているが、事実関係は明らかになっていない。与野党間では言論の自由を守るための国会決議を行う構想も取りざたされているものの、具体的な見通しは立っていない。

　中野幹事長は二十五日の記者会見で「（犯行の手口は）素人の技ではないという印象を持つ。司法当局の解明を求める」と述べた。

　国会議員の安全確保策も今後、論議を呼びそうだ。

　与党幹部の一人は「SP（セキュリティー・ポリス）から『私がドアを開けるまで絶対に車を降りないでください』ときつく言われた。嫌な事件だ……」と漏らし、顔をこわばらせた。

現職の国会議員が殺害されたケースとしては、一九六〇年十月の浅沼稲次郎・社会党委員長（当時）の刺殺事件のほか、九〇年十月に自民党の丹羽兵助・元労相が自衛隊式典に出席中、精神病で入院中の男に首などを刺され、その後死去した例などがある。

　閣僚や各党幹部、首相経験者らには警察官であるSPが付くが、ほとんどの議員には特別の警護がついていないのが実情だ。

　自民党内では、「うかうか歩けない。国会議員がものを言うことを制約されるようなことになれば大変だ」（亀井善之経理局長）などの声も出ており、政界の動揺は収まっていない。

a積極的に不正追求

　亡くなった石井氏は、モスクワ大学大学院終了後、旧社会党職員を経て、社会民主連合（社民連）の結成に参加。学生運動を通じて知り合った江田五月・元科技庁長官（民主党参院議員）の秘書を務めた後に、一九九三年の総選挙で旧日本新党から初当選し、三回連続当選。今国会で衆院災害対策特別委員長に就いた。

　国会活動では、公共事業の無駄や特殊法人改革、政治家、官僚の不正などを積極的に取りあげることで知られていた。

　今年の通常国会では、鈴木宗男・元北海道沖縄開発庁長官に絡む北方四島支援事業に関する政治献金を問題を指摘したり、外務官僚の退職金の公表を迫るなど、疑惑や不正、税金の無駄遣いを追及することに熱心だった。オウム真理教の問題では超党派の議員で活動規制のための新法制定をめざす活動もしていた。

　同僚議員に委員会での質問時間を譲ってほしいと頼み込んだエピソードも残っている。民主党内では、「構造汚職追及の先陣を走った闘士」（佐藤敬夫・民主党国対委員長）との評価が聞かれる一方、「あれだけ激しい質問をしているので『大丈夫か、恨みを買うことはないか』と声を掛けたこともある」と話すベテラン議員もいる。

　昨年秋には、自らの交通違反に関する運転免許取り消し処分の出頭要請に応じないで運転を続けた――と新聞で報じられることもあった。

　十一月七日には、近著の好評を祝ったパーティーを都内のホテルで開く予定だったが、急きょ「お別れ会」として開かれることになった。

　夫人のナターシャさんはロシア出身でNHKの語学番組にも出演していた。