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刺殺容疑者逮捕へ
頻繁に事務所出入り
石井氏、困った様子も

　民主党の石井紘基衆院議員が刺殺された事件で、２６日朝、右翼団体の幹部が警視庁本部に出頭した。幹部は関与を認めているという。９年ほど前から、男は頻繁に事務所を訪ね、石井氏と面会していたという。２人の間に何があったのか。
（１面参照）


　石井代議士の秘書らによると、石井氏と、出頭してきた右翼団体の幹部（４８）は石井氏が初当選した９３年ごろから付き合いがあったという。男の自宅が地元事務所と近かったことから出入りするようになったらしい。

　「先生いる？」といった調子で、幹部は地元事務所に月２〜３回、国会近くの議員会館の事務所にも月に１〜２回訪ねてきた。何の連絡もなく来た時などは秘書が多忙を理由に面会を断ると、強引に石井氏の執務室に入ってしまうこともあった。最近１ヶ月は姿を見せていなかったという。

　石井氏は時折困った様子を見せることもあったが、別れ際には「じゃあね」のようなやりとりをよくしていた。執務室はドアを閉めるため２人のやりとりはわからなかったが、大声でやりとりするようなことはなかったという。

　別の秘書は、目黒区の自宅でテレビを見ていて出頭を知った。「逃げ切れないと思ったのだろう。同期は何か、捜査の進展を待ちたい」と話した。この秘書によると、トラブルがあったとされる幹部は忘年会シーズンに、日本酒５，６本を持って地元事務所を訪れ、「酒を買ってくれ」と要求したこともあった。「生活に追われていた様子だった」と話す。

　世田谷区太子堂４丁目の地元事務所には、テレビ報道で幹部の出頭が伝わった。だが、早朝から出ていた職員らは議員を失った重苦しさの中、かかってくる電話への対応に追われていた。秘書の一人は「警察からは何の連絡もないし、身元が確認できないので何とも言えない」と話した。

　石井氏の自宅近くに住む７０歳代の男性は「石井さんは国会でいろいろなことを追及してきた人。悪質な事件で警察には全力を挙げて真相解明をしてもらいたい」と話した。


「すぐかっとなる」関係者

　警視庁に出頭してきた右翼団体の幹部は、１７年前に１人で団体を立ち上げたが、最近はほとんど右翼としての活動はなかったという。過去に傷害などの事件を起こし、関係者は「すぐにかっとなる性格だった」と話す。

　警視庁公安部によると、幹部は５４年、世田谷区で生まれた。８５年に都内の右翼団体に入ったが、半年ほどで脱会し、同年７月に１人で同区に事務所を置いた。それ以前は「書籍販売をしていた」と周囲に話していた。右翼活動に熱心だったころは反共、伝統文化の保護などを唱えていた。

　今月中旬まで住んでいた同区のアパートの住人らによると、近くで子どもを遊ばせていた主婦らに「うるさい」などと怒鳴ることがしばしばあった。幹部の部屋には東京地裁の執行官から引き渡しを受けたとして立ち入りを禁じる債権者の代理人弁護士名の１０月１７日付の張り紙がある。関係者は「最近、金に困っていたと聞くが、生活は地味だった」と話す。