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鳩山政権のご都合主義 桜井よしこ

鳩山由紀夫氏がまだ民主党幹事長だった今年4月、彼は外国人参政権問題についてこう語っている。「まさに愛のテーマだ。(私が)友愛と言っている原点はそこにある」さらに、氏はこうも語った。

「仏教の心を日本人が世界で最も持っているはずなのに、なんで他国の人たちが、地方参政権を持つことが許せないのか」(「産経新聞」2009年10月10日付)

氏は、外国人の参政権は地方政治にとどまらず、国政においても認められるのがよいとまで明言する。国政選挙に外国人を参加させて、国家というものが維持出来るのかなどという発想は、氏には無縁なのであろう。

この鳩山政権下で外国人参政権問題が急展開し、実現されかねないという懸念は少なからぬ人びとが共有する。だが、首相の夢見る少年のような幼い発想とは別に、外国人参政権問題についての民主党の意見はまったく集約されていない。意見集約が不可能だったからマニフェストにも載らなかった。

他方、民主党は個々の議員による立法を事実上禁止する通達を、小沢一郎幹事長名で九月一八日に出した。民主党の法案はすべて政府提案、いわゆる閣法として出す、個々の議員は立法などせず、次の選挙に備えて政治活動に専念せよという趣旨の通達である。

立法府の面々に立法を禁ずるという尋常ならざるこの通達は、従来、多くの議員立法を行ってきた民主党の、闊達な議論を封殺するものだ。

こうした状況下の11月6日、山岡賢次国対委員長が、突然、自民党の川崎二郎国対委員長との会談で、現在の国会に外国人への参政権付与法案を議員立法で提出すると述べたのだ。

山岡氏は、党内に賛否の溝があるために、党議拘束をかけずにやるとの考えも示した。つまり、政府としての統一見解が出せないから、閣法でなく議員立法でやるというのである。なんというご都合主義か。

私は、そもそも、議員立法を禁ずること自体反対である。また、そのルールを例外的に破り、自分たちの通したい法案はなんとしてでも通すという独善主義にも反対である。

それでも、山岡氏は自信をうかがわせた。小沢チルドレンと呼ばれる1年生議員143人は、ほとんどが小沢、山岡ラインの指示に従って、参政権付与法案の支持に回るであろう。社民党、そして民主党、自民党のリベラル派を足せば、法案可決は可能だと確信している口振りだ。

民主党で外国人参政権に最も熱心な人物の一人、川上義博参院議員も9日、可決に向けての「自信はある」と述べている。

地方参政権というが、地方自治体は、原子力発電所や米軍基地などに代表されるように、国家政策の根幹にかかわる問題に直接関係している。地方選挙だからといって軽視は出来ない。

また、地方参政権付与の対象となる在日永住者のなかには金正日政権に忠実な朝鮮総連加盟者が多数存在し、中国共産党員もいる。韓国籍の永住者は韓国の参政権も保有しており、日本の参政権を得れば、日韓両国で政治に直接かかわる立場を得る。

民主党は、韓国が05年に外国人に地方参政権を認めたのであるから互恵主義で日本も同様にせよと主張する。だが、韓国で永住が認められるのは韓国人の配偶者やその子どもたちに限られ、永住在韓日本人は約300人にすぎない。特別永住資格を与えられた在日韓国人約40万人(朝鮮籍の人々を含めると約45万人)とは比較にならない。つまり、互恵主義は成り立たないのだ。

このような矛盾と問題を抱える法案だけに、反対論が続出し、山岡氏は現時点での法案提出を断念した。独善的手法で突っ走りかねない民主党の政権運営には、不安がいっぱいだ。(週刊ダイヤモンド)
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