2017年11月21日
NHK大河ドラマ「おんな城主直虎」第46回放送「悪女について」
徳川家康の嫡男・信康は、織田信長によって謀反の疑いをかけられました。徳川家は大国・織田の圧力をどうすることもできず、信康を裁くしかなくなりました。そんな動きに対して物語の主人公の直虎と万千代がどう動くのか、どう事件と関わっていくのか、と思わせて前回の放送は終了しました。
今回はもちろん、その続き。
徳川家康は今川氏真を仲介役として小田原の北条家と同盟を結ぼうとします。それによって、織田や徳川にとって長年脅威だった武田家を追い詰めるのです。それが徳川だけではなく織田を助けることにもなりますから、同盟成立の功によって織田信長を喜ばせて信康の助命を願い出よう、と家康は考えたのです。
その同盟が成立するまでの間、信康を殺してはならない。家康は信康の幽閉先を移すことによって時間稼ぎをしようとします。
家康の考えは万千代らごく一部の者しか知りません。周囲の人間は、信康の所在が点々とすることがなぜなのか分かりません。家康の正室・築山殿(瀬名)も同様です。彼女は、自分こそが武田と内通していたのだとして信康の罪をかぶろうとします。すなわち、武田勝頼との密書らしきものをわざと残して、家臣・石川数正とともに行方をくらませるのです。周囲の人間は「ほんとうに武田と通じていたのは奥方様だったか。信康様は無実だったか」と騒ぎ始めます。
家康は万千代に思いを託して、万千代をひそかな使者として築山殿に会わせ、真意を知らしめようとするのです。
そのころ築山殿は自分の実母や幼馴染の直虎の故郷である井伊谷をひそかに訪れていました。そして偶然、直虎と会います。直虎は築山殿が罪をかぶって死のうとしていることを言い当て、思いとどまらせようとします。やがて万千代もかけつけ、家康の真意を伝えるとともに、築山殿を井伊谷でかくまおうという案を示します。
しかしそれでも、築山殿は「同盟がなっても、それで本当に信康は助かるのだろうか」と疑問を呈し、それならがやはり自分が罪をかぶって死んだ方がいい、と言います。
直虎は怒りをあらわにします。死んでゆくものはお家の為というが、それで残されたものはどうなる? 残されたものの気持ちを考えているのか! という意味のことをいって、築山殿に考え直すよう言います。
万千代は直虎の言葉をそばで聞き、なにかを感じたようです。大国の圧力によって犠牲を払わなくてはならない、小勢力の悲哀。その犠牲者の思いや残されたものの悲しさ。それは万千代の実父の悲劇でもあり、直虎の悲劇でもあり、井伊家歴代の当主の悲劇でもあるのです。
結局、築山殿はかくまわれることを拒み、徳川家の家臣によって殺されます。
家康は築山殿の首を土産に信長に面会し、信康に罪はないとして助命を嘆願します。だが、信長は冷たく言い放つのです。徳川は好きなようにやればよい、そのかわり我も好きなようにやるがな、と。
それは、俺の言うことを聞かず信康を誅殺しないというのならそれはそれで構わないが徳川家がどうなっても知らないぞ、という強迫が秘められた言葉なのです。
結局、信康は自刃することとなり、家康は正室と嫡男を失うこととなったのです。
悲しみに暮れる徳川家。
もちろん、直虎も、友同様であり姉妹同様でもあった築山殿を失った嘆き、哀しみに暮れます。
大名たちが戦をやめてこの世から戦がなくなれば、と言う直虎に、南渓和尚はそうなるように努力してみればいい、という意味のことを言います。直虎は「そんなことできるはずがない」と言いますが、和尚は「なんだ、やってみないうちから諦めるのか、しみったれたやつじゃのう」という意味のことを言って活を入れます。直虎は、万千代を通じて徳川を動かして徳川が平和な世をつくる、という考えがひらめきます。
そうして、夢が万千代に託されることになりました。万千代は幼いころに井伊で教えられたことを家康に伝えます。負けたらなぜ負けたのか原因を考え、負けない対策をとる。負けを次に勝つための反省材料として活かすのだと。
悲しみに暮れて家臣を信じられなくなっていた家康がこころを動かされます。家康と万千代との間に新たな絆が生まれたのです。
今回の放送の重要ポイントは、息子の命を助けるためにあえて罪をかぶって死のうとした「母の愛」であり、「妻に心底から信頼されなかったのか」「そんなに頼りない男と思われていたのか」「心から信頼されていれば妻は死ななかったのに」と悲しむ家康の無念の思い。そして、大きな挫折を乗り越えて徳川を発展させるべきだと家康を励ます万千代の言葉でしょう。
タイトルの「悪女について」の悪女とは、息子を助けるために敢えて汚名を着た築山殿のことです。通説でも、また昔の大河ドラマ「徳川家康」(滝田栄さん主演)でも大変嫉妬深く今川家の姫としての誇りを捨てずに威張り散らして家康を馬鹿にして裏切った人物として描かれていましたが。今回では息子を救いたい一心で汚名をかぶった哀しい女性をして描かれました。
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