2024年12月17日
闇の底から@短編小説
目を覚ますと、そこは真っ暗な空間だった。どこにいるのかも、どうしてここにいるのかも分からない。ただ、冷たい空気と湿った地面の感触だけが確かだった。
「……ここはどこだ?」
ぼそりと呟く声だけが響き、すぐに闇に吸い込まれる。手探りで周囲を確かめると、壁は硬く冷たい石のようだった。狭い空間だと分かり、息苦しさがじわじわと胸を締めつける。頭を上げようとするとすぐに天井に当たる。這うようにして前に進むしかなかった。
そのとき、遠くで微かな音がした。何かが地面を擦るような音だ。耳を澄ませると、それは少しずつ近づいてきている。
「……誰かいるのか?」
声を張り上げてみるが、返事はない。代わりに、音だけが少しずつ大きくなってくる。人間の足音ではない。何かが地面を這っているような、不気味な音だった。
恐怖に駆られながら進んでいくと、指先が何か固いものに触れた。それは小さなランプだった。震える手で灯りをつけると、ぼんやりとした明かりが闇を照らし出した。
狭いトンネルのような場所だった。壁には無数の傷跡が刻まれている。それは、誰かがここから逃げ出そうと必死にもがいた痕のように見えた。そして、その傷跡の下には、白く乾いた骨が散らばっていた。
息を呑む間もなく、背後から音が急速に近づいてくる。恐怖が体を突き動かし、ランプを片手に前へと這い進む。壁に爪を立てながら進むたび、足元の骨や石が不快な音を立てた。
やがて、遠くにぼんやりと光が見えた。出口だ。安堵の涙が浮かびそうになる。しかし同時に、背後の音がさらに速く迫ってくる。何かが、自分を追いかけてきている。
「あと少し……!」
光に向かって手を伸ばす。その瞬間、背中に冷たい感触が走った。振り向くと、闇の中から黒い影のようなものが伸びてきていた。それは霧のようでいて、どこか人の形をしている。無数の顔が浮かび上がり、誰ともつかない声が響く。
「……戻れ……」
その声に恐怖で息が止まりそうになる。必死に手を伸ばし、光を掴もうとした瞬間、視界が真っ白になった。
気がつくと、そこは病室だった。天井の蛍光灯が眩しく、窓からは穏やかな日差しが差し込んでいる。自分の腕には点滴が繋がれていた。
「夢……だったのか?」
呟きながら身体を起こすと、床に小さなランプが転がっているのが目に入った。拾い上げると、ほんのりと暖かさが残っている。
彼はそのランプを見つめながら、胸の奥に残る不安を消せないまま窓の外を見た。そこに広がる景色は確かに現実のものだったが、どこか微妙に歪んでいるように見えた。まるで、夢の中の闇がまだどこかでこちらを見ているかのように。
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