この写真は「リーベル・ウズアリス ミサ・エッツ・オフィッシ プロ・ドミニシス・エッツ・フェスティス(日曜と祝日のための全てに使える 聖餐式と聖務日課)」と云う四線の楽譜(ネウマ譜)の本の最初のページです。
私の生涯の研究テーマの一つが、このネウマ譜の解読です。最近は他の工学系の研究に忙しくて、全くしていないのが現状ですが、今日は気分転換の為に、楽譜を開いていました。
それで、皆様にはご興味も無いと思いますが、昔のヨーロッパの楽譜は、この様な楽譜が在ったのだと知って戴きたく、紹介させて戴きます。
この楽譜に関しては一応、これだろうと云う歌唱法は確立されているのですが、本当に間違いが無いのかと云われたら、研究者達は絶対に間違っていないとは言えないのです。
この楽譜は五線譜が発明されたバロック期に使われなくなり、その後にクラッシクのメンデルスゾーンが彼の作品で、そのネウマ譜で書かれた旋律を、通奏低音のパートで、使っていて呉れた事から、この楽譜の解読がある程度進んだ経緯が在ります。
所謂、モノフォニー(単音律旋階)からポリフォニー(複音律旋階)への西洋音楽の発展の中で消えていった楽譜なので、現在その解読が、ドイツとフランスの二カ所での研究が続けられています。
私も、微力ながらその研究の手助けがしたく、高校生の頃に、この写真の楽譜を手に入れて、研究を進めています。一番下に1951と在りますが、1951年にパリで印刷されて楽譜です。一冊の本で、その厚さが6cm程在りますし、年数が経っていますので、本もボロボロになってきています。何分私より先に世に出た楽譜ですので・・・・劣化して当然なのかも知れません。
書かれている言語はラテン語で、ラテン語は三種類在ります。その一つは教会ラテン語、貴族ラテン語、民衆ラテン語の三種類在りまして、それぞれが微妙に、また在る部分では絶対的に違っている箇所もあります。因みにこの本は教会ラテン語で書かれています。貴族ラテン語は、学名などに現在使われるだけで、単語のみの使用となっております。イタリア語が民衆ラテン語から出来たのですが、この教会ラテン語からイタリア語を見ると、全然違った言語に見えます。
まずは導入部分(イントロイトス)から・・・。
写真(コピー)の上から三分の一の部分に音符の種類が掲載されています。
ネウマ譜の単体(単音ネウマ)で名称と種類が述べられています。
a.方形の形ですが、これをPunctum quadratum(プンクツム クアドラツム)と呼びます。
b.縦菱形の形ですが。これをPunctum inclinatum(プンクツム インクリナツム)と呼びます。
c.湾曲した方形に右下に尻尾が付いているような形ですが、これをVirga(ビルガ)と呼びます。
d.これは、言葉で表現しにくい形ですが、同じ名前で三種類の形ですが、全て同一の音符です。左側が魔法のランプの炎の形、真ん中が横長の方形のひずんだ形、右側がビルガの尻尾を取った形で、これらをApostropha(アポストロファ)と呼んでいます。
e.これも三種類の形の音符ですが、全て同じ音符として扱います。これは、左から左傾斜の菱形、真ん中が横長の方形、右端が少し膨らんだ方形、これらをOriscus(オリスクス)と呼んでいます。
f.これは、右傾斜の菱形ですが、Qulisuma(クイリスマ)と呼んでいます。
そしてこの音符は全て8分音符で五線譜の音符のような種類は有りません。
写真(コピー)の中央には、ネウマ譜が二つ連結された(二音ネウマ)場合の名称と種類が述べられています。
左側の様な形式が、Pes seu Podatus(ペス セゥ ポダツス)と呼びます。楽譜の一番左上に張り付いて居るように見えるのが、五線譜のト音記号に相当する記号でC音記号、その記号が挟んでいる線がドになる事を示しています。ですからこのネウマ譜を五線譜に解釈すれば、ファ、ソになる訳です。
右側の様な形式は、Clivis(クリビス)と呼びます。先程と同じ階調なので、五線譜に解釈すれば、ラ、ソになる訳です。
その下の三連の音符(三音ネウマ)の名称と種類は;
左上から下へ簡単に説明します。
左上が、Porrectus(ポーレクツス)で、ド、ラ、シを表現しています。
その次が、Scandicus(スカンディクス)で、ミ、ファ、ラを表現しています。
左の一番下が、Salicus(サリクス)で、同じく、ミ、ファ、ラを表現しています。
右上に付いての説明;
右上が、Torculus(トルクルス)で、ソ、ラ、ソになる訳です。
右下は、Climacus(クリマクス)で、ラ、ソ、ファになります。
次に、四連の音符(四音ネウマ)ですが、ここまでで大体の事が理解して頂けたと思います。
左上から、Porrectus flexus(ポーレクツス フレクス)
左下が、Pes subbi-punctis(ペス スッビ プンクティス)
右上が、Torculus resupinus(トルクルス レスピヌス)
以上が、このページの簡単な説明になります。
この様に、ネウマ譜は五線譜に変換は出来るのですが、ニュアンスが正確に表現出来ず、やはりモノフォニー音楽を歌う時などは、ネウマ譜の方が歌う易いと思います。