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2018年06月28日

知られざる保育士の職場「乳児院」って何?残業は多いの?夜勤は?宿直は?

現在私は保育園に勤めてますが、過去に少しだけ「乳児院」というところに勤務していたことがあります。ここは、保育園ではありませんが、保育士資格を持つ人が活躍できる現場になります。

楽な職場ではなく、非常に過酷ですが、誰でもできない仕事ですので、やりがいを見いだせれば、ものすごく世の中に貢献できる仕事になります。

乳児院って何?

乳児院(にゅうじいん)というのは、何らかの事情で親や保護者、肉親が育てられない「乳児」(0歳〜1歳)の赤ちゃんや子どもを育てるための施設です。

「児童養護施設」の年齢をさらに下げた施設、とイメージするとわかりやすいと思います。児童養護施設は、18歳までの子どもが共同生活をするところですが、0歳や1歳赤ちゃんは、自分では何もできないので、24時間、それこそ親と同じように付きっ切りでお世話をしないといけません。

ミルクだけから、離乳食、ハイハイからある程度自力で歩行できるところまで育てる施設になります。ただし1歳まで限定というわけではなく、事情があれば小学校入学以前の幼児も養育することができる。

厚生労働省の調査によると、2014年10月1日の段階で、全国で132の乳児院があり、3,100人以上の乳児が入所しています。

「総括表」|統計資料|厚生労働省


設備や人員配置について「児童福祉施設最低基準(昭和23年厚生省令第63号)」に定められています。児童養護施設と同様、嘱託医や看護師、保育士、児童指導員、栄養士、調理員などが職員として採用されていて(嘱託医は非常勤)いますが、本当に赤ちゃんを育てるわけですから、その負担はかなり大きなものになっています。

もともとの乳児院は、戦後まもなく、「戦災孤児」や戦後の混乱で「捨て子」になった子どもを引き取って育てるためのものでしたが、現在は家庭の事情などで子どもを育てられないケースに対応しています。

「赤ちゃんポスト」に入れられた赤ちゃんも、この乳児院で育てられることになります。
乳児院への入所理由ですが

・児童虐待や家庭問題による養育者の不在
・児童自身の病気や障害
・母の病気
・未婚の母あるいは婚外出産(自分で育てられない)


などがあり、最近では両親、ないしどちらの親が外国人のケースも増えてきています。


乳児院に入っている子どもは、その後は、実の両親や親族が育てられる場合は、引き取られますが、そうでない場合は児童養護施設に行くことになります。

また、子どもがいない夫婦へ「特別養子縁組」等で子どもとして育てられるケースもあります。物心ついてから里親に育てられると、アイデンティティの確立に影響が出ますが(拒否反応が出ることもあり)、物心つく前であれば、実の親と思って子どもは成長していくので、グレずにまっすぐに育つそうです。

いつか、本当のことを知るわけですが、児童養護施設で育つのと、養子になり里親の元で育てるのではどちらが幸せなのでしょうね。


乳児院で働く保育士の仕事

乳児院で働く保育士は、保育園での「先生」としての仕事とは違い、本当に「親代わり」としての働きをしなくてはなりません。子どもが熱を出せば一晩中起きてお世話をしますし、日常の介助、食事の援助、ミルク、おむつ替え、入浴のお世話等全て行います。

行政とのやり取りも、保育士の仕事ですし、予防接種なども担当職員としてすべて手続きを行い、当日は注射に連れて行かないといけません。子どもが熱を出せば当然、病院へ連れていきます。

乳児院の職員は「保育士」「幼稚園教諭」、(小学校や中学校の)「教諭」、「社会教育主事」、「看護師」など何らかの教育や医療系の資格を持っていることが必要ですが、職員としての仕事は基本的に同じです。

ある人は「保育士」免許を持っていて、ある人は「幼稚園教諭」の免許で、乳児院で働いていますが、やる仕事は基本的に子ども(乳児)に関わること「すべて」になると思ってください。

子どもたちの心身の成長をより身近で支えられます。保育士としてだけでなく、保護者、親としての役割も持ちます。看護師や栄養士、保健師などの専門職職員と相談しながら、子どもたちの成長に直接寄与していきます。


乳児院勤務の実際

ある日の勤務内容を以下に書きます。

一日のスケジュール例としては、以下のようになります。

<乳児院保育士のある一日>

7:00 子どもが起床する  夜勤からの引き継ぎを行う
8:00 ミルクやおむつ替え
9:00 遊び 子どもと遊びます
11:00 ミルク(お昼ご飯)
12:00 お昼寝
16:00 午後の遊び、入浴のお世話
18:00 ミルク(夕食)
19:00 就寝

19時以降、これでようやく、自分の事務仕事ができます。

これは「日勤」の日のスケジュールであり、「夜勤」の日は時計が逆になります。

私がいたときは、夜勤の場合

16時出勤、翌朝9時退勤でした。17時間連続勤務というヤバい環境で、半年持たずに辞めてしまいました。

夜勤の場合

A日 16時出勤
B日 9時退勤
C日 休日

その後「日勤」の日があります。昼夜逆転になり、生活リズムがすごく乱れてしまいました。体調もすぐれず、肉体的にかなり大変でした。

週間の勤務スケジュール

乳児院勤務シフト.jpg


残業はかなりあったと思います。子どもが起きている時はほかのことはできません。別シフトの人に引き継いで、それから自分の事務作業をする、ということですので、毎月70時間とか80時間とかありました。


宿直と夜勤の違い

よく間違われるのに「宿直」があります。乳児院の働き方は「夜勤」です。同じようなものではないか?と思われるかもしれませんが、まったく違います。

夜勤:基本的に真夜中もずっと起きている。寝ることは許されない。

宿直:大きなトラブルがなければ仮眠室等で「仮眠」できる。何かあれば起きて対応する。

同じ深夜に働くといっても、身体への負担が全く違います。乳児院の場合、夜勤になるので、夜泣きした赤ちゃんへの対応など、とてもきついんです。


児童養護施設との違い

乳児院と、(乳児院を出た子どもが通う)児童養護施設は似たようなものではないか?と思われるかもしれません。業務内容を詳細に述べているときりがないので、働き方の違いについて二点、書きたいと思います。

@乳児院は「夜勤」、児童養護施設は「宿直」

対応する子どもの年齢が違うからなのですが、児童養護施設の場合、夜中に子どもが寝ていれば、職員も仮眠を取ることができます。朝は5時くらいに起床して、朝ご飯やお弁当作りをしなければなりませんが、寝ていられるのはありがたく、体力的には助かります。

一方、乳児院の場合は「夜勤」になるので、子どもが寝ついても起きていなければなりません。尤も、一人で複数の子どもの面倒を見ますから、夜泣きなどで起きてしまう子供も多く、仮に「宿直」であったとしても、仮眠時間は取れないと思います。

A児童養護施設の場合、日中比較的余裕があるが乳児院は余裕がない

児童養護施設の場合、日中子どもたちは幼稚園や小学校、中学校、高校に行っていますから、その間子どもはいません。勤務時間中ではありますが、比較的余裕があり、テレビを観たり、昼寝をしたり、本当はいけないんですけど、他の職員も大目に見てくれました。

しかし、乳児院の場合は、幼稚園などに行く年齢ではありませんから、24時間職員が付きっきりでお世話をしないといえません。日中もテレビを観る余裕などありません。

求められる仕事は

乳児院:親+保育士
児童養護施設:親


であり、乳児院の負担の方がめちゃくちゃ重いということがわかります。

もらえる給料は?

でも見返りはあまりありませんでした。

私が勤務していた乳児院は、基本給が155,000円くらいで、それに残業代や各種手当がつきます。しかし、「夜勤手当」も1回当たり6,000円で全然高くありませんでした。

看護師の夜勤手当(2交代制の夜勤手当)が1回あたり約11,000円ですからその半額。ちなみに、乳児院に併設していた児童養護施設の「宿直手当」は1回3,000円でした。やはり割に合わないと思います。

ほぼ、法定の(労働基準法で定められた)「深夜割増分」+αくらいしか乳児院の場合は、夜勤手当が出ないことになり、稼ぐために乳児院に勤務するのはかなり大変だということがわかります。

実際の手取りは20万円ちょっとで、これなら今の保育園の方が高いくらいです。ボーナスはそこそこありましたが、身を削ってこれだと、何か報われないと思います。

しかし、事情で親や保護者に育てられない子どもの、人生のスタートをしっかりとお世話をするという仕事は、とても崇高で素晴らしいです。

玉石混合、どこにでもある保育園で保育士として働くよりも、自分の生き方として、子どもの人生に大きくかかわり、世の中のためになる、とやる気がある人はぜひ、その選択肢の一つとして乳児院で働くことを考えてみてはいかがでしょうか?

仕事的には「保育士」に加えて「親」の部分がかなり大きくなることを、あらかじめ知っておいてください。私はギブアップでしたが、みなさんならできるはずです!

乳児院への就職、転職

乳児院の求人ですが、全国各地の乳児院は限られていますから、

「全国乳児福祉協議会」のHPから直接、お近くの乳児院を当たって、求人を探していただいても問題ないです(連絡を取って採用を希望する)。

ただ、乳児院の中には、保育士専門の転職エージェントに求人を出しているところもあります。


転職エージェントに求人を出す=採用にお金がかけられる=採用後の待遇もいい傾向にある

この法則がありますから、ブラックな求人ではない可能性があります。やりがい搾取されて潰されてしまっては何にもなりません。もし、乳児院でがんばってみたいという方がいらっしゃいましたら、直接応募する前に、一度、保育士専門の転職エージェントに登録していただき、どういう待遇なのか実際のところをエージェントに聞いてみてはいかがでしょうか?

それを聞いて、覚悟ができたら応募すればいいです。乳児院の子どもはみなさんの助けが必要です。保育園の職はいくらでもありますが、乳児院は限られています。やる気と能力があるみなさんの力が必要です。





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35歳、既婚の現役女性保育士です。これまで3カ所の保育園を経験しています。主観も交じりますが、保育士として感じたことなど、率直にお話したいと思います。
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